<博士論文>
声門波の生成過程に関する構成的表現

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概要  本論文では、人間の音声の基本的な音源波である、声門波の物理的な生成モデルを提案する。声門波は、声帯振動によって声門流が変調された結果として生じる。したがって、その物理的な生成過程をモデル化するには、声帯の振動機構と、声門流の流体力学的な挙動を表現する必要がある。特に、声門流の表現に際しては、流れの非線形性や声帯振動による境界の移動といった困難な問題を取り扱わなければならない。そこで本論文では、流...れの境界層近似を導入し、声門流を複数の構成要素を用いて表現することで、問題の解決を図る。この方法は物理的な意味が明確であり、多様な発声条件の下で生成される声門波を柔軟かつ安定に表現することが期待される。本論文では、境界層近似に基づいた声門波の生成モデルを提案し、その妥当性と意義について論じる。  第1章では、諸論として、声門波の生成過程を物理的な実体に即した形でモデル化することの意義について論じる。現在の音声情報処理においては、音声の音源を単純なパルス列や雑音源と仮定することが多い。しかしながら、実際の音源は、それらが組み合わされたより複雑な形態を持ち、また、様々な情報を有することが知られている。特に音源波は、その周期や振幅、スペクトル構造を様々に変化させることによって、歌声や感情を表現し、また、声質の変化をもたらす。このような音源の持つ情報の生成機構を理解することを目的として、本論文では声門波の生成モデルの構築を試みる。  第2章では、代表的な声門波の生成モデルである、声帯の2質量モデルの説明を行う。ここではまず、声帯の実効的に振動する部位のモデルとして、2自由度の機械モデルを呈示する。次に、声門流の支配方程式を明示した後に、2質量モデルにおける流れのモデル化の過程を明記する。本章は、声門波の生成モデルを構築する際の基本的な考え方と、本論文の生成モデルの特徴を明かにする目的がある。  第3章では、境界層近似に基づいた声門流の構成的表現についての導出を行う。ここではまず、声門流の無次元特徴量の考察を行う。これにより、声門流を主流・境界層・渦流の3つの領域によってモデル化する根拠が示される。次に、個々の流れの領域の具体的な定式化を行う。境界層に関しては、声門流の支配方程式を変形して、声帯表面に沿う境界層の運動量方程式を算出する。自由な声門形状において境界層の運動量方程式を解くには、境界層の外縁の主流速を知る必要がある。そこで本論文では、等角写像の手法を用いることで、自由な声門形状における主流の表現を、トポロジー的に等価な帯領域における流れを取り扱うことで導出する。渦流の領域に関しては、離散渦法を用いて、離散的な渦糸を境界層の剥離位置より時々刻々と放出・対流させることで表現する。その際、渦糸の運動は、渦度方程式に従って運動させる。また、自由な声門形状における渦糸の数学的な表現に関しては、同様に等角写像の手法を用いることで導出する。  第4章では、先行研究の模型実験で用いられた声門形状における流れの様子を、本モデルに基づいてシミュレーションした結果について述べる。ここではまず、声門形状に依存した境界層の挙動の変化について検討する。次に、シミュレーションによって得られた声帯表面での圧力分布を先行研究の模型実験による実測値と比較をすることで、本手法の精度を検証する。また、与えられた声門形状と実験条件の下で声門を流れる流量を推定し、同様に模型実験の結果と比較することで、本手法の妥当性を検証する。  第5章では、声門波の生成モデルを構築し、声門波の生成シミュレーションを行う。ここではまず、声帯の2質量モデルを参考に声帯の機械モデルを作成し、第3章で導出した声門流モデルと連立させることで、声門波の生成モデルを構築する。次に、具体的に声門波の生成シミュレーションを行い、発声時における境界層の挙動や、渦流の時空間パタンの時間発展についての検討を行う。また、境界層の剥離位置を固定した声門波の生成モデルを構築し、これと本法によるシミュレーション結果との比較検討を行う。  最後に、第6章では、本論文全体の総括として、本研究で得られた成果を要約する。続きを見る
目次 目次 第1章 緒論 第2章 声帯の2質量モデル 第3章 境界層近似に基づく声門流の構成的表現 第4章 境界層のシミュレーション 第5章 声門波の生成シミュレーション 第6章 結論 付録A 声門流からの音波の発生機構 付録B 帯領域での渦糸とわき出しを表す解析関数の導出 謝辞 参考文献

本文ファイル

pdf k056-01 pdf 317 KB 230 表紙
pdf k056-02 pdf 700 KB 243 第1章
pdf k056-03 pdf 570 KB 267 第2章
pdf k056-04 pdf 1.67 MB 187 第3章
pdf k056-05 pdf 867 KB 234 第4章
pdf k056-06 pdf 733 KB 205 第5章
pdf k056-07 pdf 134 KB 224 第6章
pdf k056-08 pdf 542 KB 246 付録A
pdf k056-09 pdf 113 KB 189 付録B
pdf k056-10 pdf 94.8 KB 126 謝辞
pdf k056-11 pdf 251 KB 167 参考文献

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.10.06

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