<博士論文>
リズム知覚の基礎としての時間間隔の知覚に音の時間構造が及ぼす影響

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指導教員等
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概要 本研究は,音声や音楽のリズムの基礎となる0.5秒以下の短い時間間隔の知覚に,音の時間構造がどのような影響を与えるかを調べたものである。従来のリズム知覚研究において,知覚されるリズムは,次々に鳴らされる音の始まり(もしくは音の知覚的な始まり)の間の時間間隔の長さによって決まるとされてきた(例えば,Handel, 1993)。一方,リズム知覚と密接に関係する時間知覚研究の分野においては,音の持続時間が...知覚される時間間隔の長さに影響することが示されていた(例えば,Woodrow, 1928)。つまり,リズム知覚においても,音の始まりだけでなく,音の持続時間が影響する可能性があった。ただし,従来の時間知覚研究で用いられた刺激パターンや,時間間隔の定義は,リズム知覚研究で対象とされるものと異なっていたため,音の持続時間の影響を直接リズム知覚と結び付けることができなかった。本研究では,従来の時間知覚研究とリズム知覚研究の間を埋めるような刺激パターンを用いた知覚実験によって,リズムに用いられるような時間間隔の知覚においても,音の持続時間の影響がみられることを示した。また,時間間隔を示すひとつひとつの音の時間構造を体系的に操作することによって,どの音の時間構造が時間間隔の知覚にどのように影響するかを明らかにした。第2章では,まずリズムを示すパターンとして最も単純なパターン,すなわち継時的に鳴らされた二つの音の始まりによって示された120-360msの単独の時間間隔を用いて実験を行った。音の始まりの位置は固定したまま,時間間隔を示す二つの音の持続時間をそれぞれ20-100msの範囲で変化させたところ,時間間隔の終わりを示す音の持続時間が長くなるほど時間間隔の主観的な長さが長くなる傾向がみられた。この傾向は,音の振幅が変わっても同様に現れ,また,音の持続時間を固定したまま振幅包絡を変化させることにより音エネルギーの時間分布を変化させただけでは現れなかったことから,音の持続時間自体が変化することが時間間隔の知覚において重要であることが考えられた。続く第3章では,第2 章で発見された,時間間隔の終わりを示す音の持続時間の影響が,時間間隔が隣接するパターンにおいても生ずるかどうかを確かめた。三つの音の始まりによって示された二つの隣接する時間間隔から成るパターンを用いて,二つの時間間隔の主観的な長さを調べる実験を行ったところ,第2章で単独の時間間隔を用いたときと同様に,時間間隔の終わりを示す音の持続時間が長くなると,その時間間隔の主観的な長さが長くなる傾向がみられた。つまり,二つ目の音が長くなると最初の時間間隔の主観的な長さが長くなり,三つ目の音が長くなると後続する時間間隔の主観的な長さが長くなった。一方,条件によっては,単独の時間間隔を用いたときにはみられなかった時間間隔の始まりを示す音の影響もみられ,この効果は,隣接する二つの時間間隔の対比を促進していると考えられた。第4章では,音の持続時間自体の主観的な長さに着目した。過去の研究において,130ms程度よりも短い音の場合,音の持続時間が変わっても音の知覚的な終わりの位置は変化せず,音の主観的な持続時間も変化しないとされたこともあったものの(Efron, 1970),第4章の結果では音の持続時間が20-360msの範囲で長くなるとその主観的な長さも長くなり,第2章および第3章で用いた20-100msという非常に短い音であっても,実験参加者は持続時間の違いを捉えていたことが示唆された。また,音の持続時間の主観的な長さと,第2章と同様に二つの音の始まりによって示された時間間隔の主観的な長さとを比べた結果,200ms以下の時間間隔においては,物理的に同じ長さであっても,実験参加者によって,音の持続時間のほうが二つの音によって示された時間間隔よりも主観的に長くなる場合と,逆に二つの音によって示された時間間隔のほうが音の持続時間よりも主観的に長くなる場合とがあることがわかった。本研究において,音の始まりの位置を固定していても,音の持続時間が変わると時間間隔の主観的な長さが変化したことは,音の物理的な始まりの位置のみによって知覚されるリズムが決まるわけではないことを示している。また,音の持続時間が変化すると音の知覚的な始まりの位置が変化したと考えるだけでは本研究の実験結果を説明することができず,音の持続時間の影響を説明するためには,音の始まりの知覚以外の時間処理への影響についても考える必要があることが示された。本研究は,主に単純な刺激を用いて行われてきた古典的な時間知覚研究と,より複雑で日常的な音を対象として行われてきたリズム知覚研究とを結び付け,知覚されるリズムは音の始まりや音の知覚的な始まりの位置だけでは説明できないことを明らかにした。
The present study investigated how the temporal characteristics, particularly durations, of sounds affect the perceived duration of very short inter-onset time intervals (≤ 360ms), which is important for rhythm perception in speech and music. In Experiments 1, 2, and 3, subjective duration of single intervals marked by two sounds was measured utilizing the method of adjustment, while the markers’ durations, amplitude difference (which accompanied the duration change), and sound energy distribution in time were varied. Lengthening the duration of the second marker in the range of 20-100 ms increased the subjective duration of the time interval in a stable manner. Lengthening the first marker tended to increase the subjective duration, but rather unstably. Effects of varying the amplitude difference and the sound energy distribution in time of either marker were very small in the present experimental conditions, thus proving the authenticity of the effects of marker durations as above. In Experiments 4 and 5, the influences of sound durations were examined employing simple rhythm patterns comprised of three successive sounds marking two neighboring time intervals, T1 and T2 in this order. Results showed that lengthening the marker which terminated an interval increased the subjective duration of this interval-lengthening the second marker increased the subjective duration of T1, and lengthening the third marker increased the subjective duration of T2. This was consistent with the findings in Experiments 1-3. Lengthening the first marker increased the subjective duration of T1 when T1 > T2. This effect, which could not be observed with single intervals, seemed to enhance the contrast between T1 and T2. In Experiments 6 and 7, the subjective duration of a sound marker itself (20-360 ms) was measured utilizing the method of adjustment. Although it had been previously assumed that the perceptual duration of all sounds below 130 ms may be equal, results of Experiments 6 and 7 showed that the subjective duration of sounds increased as the physical duration increased, even when the sound duration was varied in the range of 20-100 ms, which suggested that the difference in duration of the markers utilized in Experiments 1-5 should have been noticeable to participants. Possible explanations for these results are discussed as well as their association with rhythm perception studies in which more complex sound patterns were utilized.
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目次 第1章 序論 1.1はじめに 1.2本研究の背景 1.2.1時間知覚研究 1.2.3音の時間構造と時間知覚 1.3本研究の目的 1.4本論文の構成 第2章 単独の時間間隔の知覚 2.1はじめに 2.2目的 2.3実験1:持続時間の影響 2.3.1目的 2.3.2実験方法 2.3.3結果と考察 2.4実験2:振幅の影響 2.4.1目的 2.4.2実験方法 2.4.3結果と考察 2.5実験3:音エネルギーの時間分布の影響 2.5.1目的 2.5.2実験方法 2.5.3結果と考察 2.6まとめ 第3章 隣接する時間間隔の知覚 3.1はじめに 3.2目的 3.3実験4:隣り合う時間間隔の長さの比較 3.3.1目的 3.3.2実験方法 3.3.3結果と考察 3.4実験5:隣り合う時間間隔の主観的な長さの測定 3.4.1目的 3.4.2実験方法 3.4.3結果と考察 3.5まとめ 第4章 音の持続時間の知覚 4.1はじめに 4.2目的 4.3実験6:空虚時間と充実時間の主観的な長さの測定1 4.3.1目的 4.3.2実験方法 4.3.3結果と考察 4.4実験7:空虚時間と充実時間の主観的な長さの測定2 4.4.1目的 4.4.2実験方法 4.4.3結果と考察 4.5まとめ 第5章 総合考察 5.1はじめに 5.2区切音の持続時間はどのように時間間隔の知覚の仕組みに影響したのか 5.3本研究の結果と従来のリズム知覚研究の結果との関連付け 5.4今後の展望 5.5まとめ 第6章 結論 文献 謝辞

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12_errata pdf 38.9 KB 118 正誤表
11_reference pdf 38.2 KB 194 文献
10_acknowledgement pdf 16.0 KB 200 謝辞
09_chapter6(結論) pdf 23.0 KB 170 第6章(結論)
08_chapter5 pdf 75.2 KB 156 第5章
07_chapter4 pdf 381 KB 1,001 第4章
06_chapter3 pdf 268 KB 185 第3章
05_chapter2 pdf 212 KB 417 第2章
04_chapter1(序論) pdf 79.4 KB 848 第1章(序論)
03_intoroduction pdf 114 KB 123 論文要旨
02_contents pdf 21.0 KB 226 目次
01_cover pdf 8.79 KB 210 表紙

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レコードID
査読有無
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
登録日 2013.07.10
更新日 2020.10.09

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