<博士論文>
高速移動音源に対する防音壁の遮音性能に関する研究

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論文調査委員
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概要  道路沿道や鉄道沿線住民の生活環境保全を目的とする騒音対策手法の一つとして,防音壁が用いられている。特に新幹線鉄道などの高速鉄道では,環境基準を達成する必要性から,住宅地に近隣した区間においては,防音壁の設置が必要不可欠な状況にある。交通機関の騒音予測では,実際には移動している音源を静止したものと仮定して,受音点での騒音を求める手法が用いられる。しかし本来,音源が移動する場合はドップラー効果による...周波数変調などにより音源の特性が変化することが知られている。近年では,高速鉄道の速度向上がめざましく,走行速度が速くなり,超伝導磁気浮上式鉄道では0.5Machにも近づこうとしており,移動速度が亜音速の領域でもマッハ数が無視できないほど速い場合には,その変化による影響が無視できるのか,できないのか,その判断に対する知見が必要と考えられる。このような背景から,本論文では,音源が超高速で移動する場合の防音壁の遮音量について,静止した条件との違いについて,明らかにすることを目的とした。  まず,Duhamelが提案した2次元円筒波音場におけるあらゆる周波数の解をFourier変換することで3次元球面波音場での特定周波数の解を求められるという積分変換理論を応用し,音源の移動による周波数の変調など音源の特性が変化する場合に拡張することを検討した。これに対応した積分変換式を導き,本手法を用いて音源が移動する際の防音壁の挿入損失について検討を行った。  Duhamelの手法を用いた数値計算結果から,音源が高速で移動する場合には,進行方向へ強い指向性を持つ影響により,受音点における音圧レベルが最大となる点は,音源の移動方向に対して受音点の正面より負の位置である手前側に移動する。また,防音壁がある場合には,最大値はさらに手前側に移動し,その移動量は,速度に応じて大きくなる。防音壁の挿入損失の最大値は,速度が速くなるに従い大きくなる傾向があり,音源が受音点の正面で静止している場合と比べて最大となる点は手前側に移動することが分かった。  次に,音源が移動する場合の挿入損失について,交通騒音に対する騒音予測手法の中で一般的に用いられている前川の実験式を用いた簡易予測手法を考えた。  前川の実験式のフレネル数を求める際に,各音源の位置に対応した音源の変調周波数の波長を代入することで,音源の周波数を考慮した回折減衰量を算出し,さらに,音源が移動する際に進行方向に強くなる指向性の変化を考慮した場合の音圧レベルを用いて計算を試みた。この計算結果から,周波数の変調と指向性を考慮した場合の音圧レベルの変動の傾向は,防音壁の有無にかかわらず,Duhamelの手法を用いて数値計算により求めた結果と0.5dB以内の精度で一致している。また,音源の周波数変調に伴う挿入損失の違いと音源の指向性の変化を考慮に入れて受音点での音圧レベルの変化を算出した結果は,いずれの受音点においても,速度が速くなるに従い音圧レベルの最大値は大きくなり,最大となる位置は中心より手前に移る傾向がある。  音源が高速で移動する時の防音壁の挿入損失について,実験により検討するために,高加速及び高減速度に耐える音源を製作し,その音源を高速で移動させ受音点の音圧レベルの変化を測定し,防音壁の挿入損失について検討した。  各速度で音源を移動した場合に,各受音点で観測された音圧レベルの変化から見ると,どの受音点においても音圧レベルが最大となる位置は,速度が速くなるに従い,手前側に移動する傾向がある。防音壁がある場合は,防音壁がない場合に比べて,音圧レベルが最大となる位置は,さらに手前側に移動している。また,各受音点における防音壁の挿入損失として,防音壁設置前後の音圧レベル差を求めた。その挿入損失の最大となる位置は,音源の速度が速くなるに従い手前側になる傾向があり,挿入損失の最大値は速度が上昇するに従い,速度とともにわずかながら大きくなる傾向があることが分かった。  各受音点における防音壁の挿入損失について,実験により求めた防音壁の挿入損失と,計算により求めた挿入損失とを比較した結果,実験値と計算値とはほぼ一致し,挿入損失が最大となる位置は,手前側に移動しており,最大値は,速度が速くなるに従い挿入損失の最大値は大きくなる傾向にある。  これまでの騒音予測手法では,移動している音源に対する騒音を予測する際にも音源は静止しているものと仮定して計算を行っており,防音壁がある場合には受音点の正面に音源が来た時に挿入損失が最大となるとしている。しかし,本論文における検討結果から,音源が高速で移動する場合には,挿入損失が最大となる位置は,手前側に移動し,音源の速度に伴い挿入損失が大きくなるなど,音源が静止している条件とは異なることが明らかになった。  本論文により,音源が高速で移動する場合の受音点における騒音を予測するには,音源の速度に応じた挿入損失を用いると共に速度により変化する音源の指向特性を考慮して算出する必要があることを明らかに出来た。続きを見る
目次 目次 序論 第1章 音源が高速で移動する場合の問題点 第2章 防音壁の挿入損失の数値計算 第3章 移動音源に対する防音壁の挿入損失の簡易な算出手法の提案 第4章 高速移動音源に対する防音壁の遮音性能に関する実験 第5章 実験結果と計算結果の比較検討 第6章 総括 謝辞 参考文献

本文ファイル

pdf k090-01 pdf 78.8 KB 306 目次
pdf k090-02 pdf 141 KB 148 序論
pdf k090-03 pdf 1.09 MB 272 第1章
pdf k090-04 pdf 2.86 MB 250 第2章
pdf k090-05 pdf 1.77 MB 185 第3章
pdf k090-06 pdf 4.90 MB 159 第4章
pdf k090-07 pdf 866 KB 206 第5章
pdf k090-08 pdf 344 KB 172 第6章
pdf k090-09 pdf 94.0 KB 131 謝辞
pdf k090-10 pdf 118 KB 143 参考文献

詳細

レコードID
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
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部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.11

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