<Doctoral Thesis>
SNR stat an index of speech intelligibility for room acoustic design and its application

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Abstract 我々が社会生活を送るにあたり音声による情報伝達手段が重要であることはいうまでもない。そして,特に建築空間はこの音声伝達性能の水準が問題になることが多い。例を挙げれば,講堂や多目的ホール,議場,教室のように音声伝達そのものが目的となる場所から,主目的ではないが,ドーム球場や陸上競技場,駅や空港,工場など,広い範囲で多くの人に確実に情報を伝えなくてはならない場所まで様々である。しかしこのような建築空間...は音声の明瞭性を低下させる要因を常に含んでおり,そのため,建築空間の設計者は音声の明瞭性を確保すべく室内音響設計を行なう必要がある。しかし,現在のところ,室内音響設計に適した形での評価量が確立されていないため,確実性や説得性に欠けた設計が行われている。そこで,本研究において,室内音響設計に使用しやすい明瞭性評価指標であるSNRstatを提案した。  SNRstatは第一波面到達後50msまでに到来する反射音は明瞭性に貢献し,それ以降に到来する反射音は明瞭性を阻害するという定義にしたがい,統計室内音響理論に基づいて理論的に導出されている。そのため建築音響技術者が理解しやすく,設計時に入手できるデータから遮音計算や残響計算と同程度の計算量で算出でき拡張性も高い。  設計時の明瞭性の評価指標としての有効性を確認するために,実際の様々な空間で録音したスピーチを使用した心理実験を実施し,設計数値から算出されたSNRstatと明瞭性評価の間に高い相関があることを確認した。
さらに,建物完成後の明瞭度測定に使用されるSTIやRASTIとSNRstatとの対応関係について検討した。特にRASTIは設計時の予測が困難なものの,専用の計測装置がすでに市販されており,測定が簡易なため急速に普及し始めている。検討の結果,SNRstatとRASTIは高い相関をもつことが示され,設計をSNRstatで行なった場合でも,完成後の測定はRASTIで簡単に行えるようになった。
また,コンサートホールなどの設計に用いられる最適残響時間とSNRstatとの対応についても検討した。最適残響時間を用いた室内音響設計は,明瞭性が要求される建築空間の設計にも適用されるが,学術的な裏付けがはっきりと行われないまま中心的な技術として使用されている。SNRstatの計算式をある限られた条件で変形することにより,最適残響時間曲線に対するSNRstat曲線を導出することに成功した。両者の対応が良いことから,SNRstatが最適残響時間の説明関数に成り得ることと,逆に条件を変えれば最適残響時間に縛られない設計が可能になることが示された。
以上はSNRstatの基本的な検討であり,より実用的な設計技術とするために応用に関する検討を以下のように行った。
比較的大きな容積の建築空間で音声伝達が必要になる空間では,複数のスピーカによる拡声が一般的に行われ,その際のスピーカの選定,配置,吸音設計は非常に重要となる。そこで,基本式に基づいて複数の音源で拡声する場合の計算式を導出し,実音場での検証実験により予測精度の高さを確認した。
建築空間の中には吸音面と反射面が偏って存在する場合も多く,その際には拡散音場の仮定が成り立たず残響時間でさえも設計時に予測した値より長くなり明瞭性が低下することもある。このような現象を回避するために拡散性が向上するような室形にしたり,フラッターエコー等を防止する目的で壁面に凹凸をつける設計も頻繁に行われるが,これらの効果は設計時に定量的に把握することができないため,最適設計がなされないという問題がある。
そこで,このような空間でもSNRstatを予測できるように,エネルギ積分方程式による音場解析を応用したSNRstatの予測手法を開発した。エネルギ積分方程式は音場の境界をいくつかの要素に分け,それぞれに吸音率と拡散反射度を定義して,定常状態における各要素間のエネルギのやり取りを算出する解析手法である。他の一般的な解析手法に比べ計算時間が格段に短いことから非常に実用性の高い手法といえる。いくつかのモデルケースについて検討を行い,室形状や壁面の反射特性による明瞭性の低下が,設計段階において定量的に評価できることを確認した。
エネルギ積分方程式の問題点は壁面の拡散反射度をどのように求めるかということにある。拡散反射度とは反射波のうち壁面の凹凸等によりランダムな方向に反射するエネルギの割合である。測定により求めることは困難であり,ある程度解析的に求める必要がある。そこで,モード整合法および境界要素法により波動的に反射特性を解析し,それから拡散度を算出する手法を開発した。また,凹凸のある壁面に吸音材が一部使用されると,その壁面は吸音材の面積から算出される平均吸音率とは異なる吸音特性を示すことがあるため,拡散度を求める解析手法を吸音材が取り扱える形に改良し,このときの吸音率も同時に予測できるようにした。解析法の予測精度については実験により確認した。
最後に,以上の技術を実際の室内音響設計に用いた例を示し,実用性を確認した。
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Table of Contents 目次
第1章 序論
第2章 明瞭性評価指標SNRstat
第3章 聴感実験による検証
第4章 既存評価指標との対応
第5章 複数音源で拡声する場合のSNRstat
第6章 空間特性を考慮したSNRstatの予測法
第7章 実設計への適用
第8章 総括
謝辞
付録
付記
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pdf k044-01 pdf 230 KB 337 目次
pdf k044-02 pdf 2.12 MB 331 第1章
pdf k044-03 pdf 1.96 MB 351 第2章
pdf k044-04 pdf 975 KB 367 第3章
pdf k044-05 pdf 953 KB 343 第4章
pdf k044-06 pdf 1.10 MB 263 第5章
pdf k044-07 pdf 2.30 MB 315 第6章
pdf k044-08 pdf 1.11 MB 329 第7章
pdf k044-09 pdf 430 KB 269 第8章
pdf k044-10 pdf 99.6 KB 251 謝辞
pdf k044-11 pdf 4.92 MB 354 付録
pdf k044-12 pdf 136 KB 219 付記

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Created Date 2014.01.22
Modified Date 2020.10.06

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