<博士論文>
リズム知覚の基礎としての時間知覚に関する精神物理学的研究
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概要 | 短音で示された空虚時間の知覚に関する仮説である<つけくわえ仮説>を取り上げ、その妥当性を様々な実験状況において検討し、適用範囲の拡大を試みた。この仮説の内容は、「主観的に空虚である時間間隔の主観的な長さは、その物理的な長さに約80msの定数を加えたものに比例する。」と言うもので、中島(1979)が分割時間の過大評価を説明するために提案したものである。まず、聴覚刺激によって示された2つないし3つの空...虚時間の長さの比率について、線分尺度の分割による評定を被験者に求めた。物理的な比率に比べて、評価された比率は、1:1、あるいは1:1:1に近い方向にずれることが判った。これは、物理的な時間長と、主観的な時間長とが比例しないことを示している。時間長についての物理量と主観量との関数関係、すなわち心理尺度が、このようなデータをどのくらいよく近似するかを、単一の指標で評価する方法を考案し、データを分析したところ、50~600msの範囲で、<つけくわえ仮説>のよく当てはまることが判った。次に、空虚時間の比率を、数字の組み合わせによって評定することを求めた。この場合には、大量のデータを得ることが可能となったので、実験結果にいくつかの数学的関数を当てはめて、その妥当性を検討した。その結果、<つけくわえ仮説>を表すような、正の縦軸(主観量軸)切片を持つ1次関数の当てはまりの良いこと、べき数が1よりも小さいべき関数も、相当良い当てはまりを示すこと、そして、対数関数は全く近似に役立たないことを明らかにした。また、比例定数以外のパラメーターを2つ以上含むような複雑な数式を導入する必要がないことも判った。次に、<つけくわえ仮説>の考えかたを音楽のリズムに適用することを考えた。3つの音からなるごく単純なリズム・パターンをピアノおよびマリンバで、アクセントや表情を付けずに演奏することを演奏家に求めた。音の始まりから始まりまでの時間長の物理的な比率は、楽譜に示された時価の比率よりも極端になることが示された。このような、楽譜に記されたリズムと演奏リズムとの間のくい違いを説明する際に、楽譜上の時価を主観的な時間長であるとみなすことにより<つけくわえ仮説>を適用しうることが判った。このような実験では、演奏者の動作要因が結果に影響する可能性があるので、次に、同様のリズムを被験者が調整作業によって産出する実験を行い、同様の結果が得られることを確かめた。なお、この際、楽譜ではなく数字で時間長の比率を指定するような条件を含め、結果の整合性を確認した。このあと、視点を変えて、短音によって区切られた空虚時間の弁別判断について、過去の3つの実験を、再分析した。40~600msの範囲において、空虚時間の弁別閾は、その物理的な長さに約80msの定数を加えたものに、ほぼ比例することが判った。<つけくわえ仮説>を前提するならば、このことは、相対弁別閾に対応する主観量の相対的変化幅がほぼ一定であることを意味する。これは、BrentanoやEkmanの提唱する精神物理学的法則に関連づけることができる。以前の研究で「分割時間の過大評価」を<つけくわえ仮説>によって説明したことを含めて、この仮説により時間知覚に関わるさまざまな現象を統一的に説明することができた。最後に、新たな仮説として、<処理時間仮説>を提出する。この仮説の内容は、「空虚時間の主観的な長さは、その空虚時間を処理することに要する物理的時間に比例する。」と言うものである。この処理は、第1区切音の検出と同時に始まって、第2区切音が検出されてから約80ms後に終わると考えられる。続きを見る |
目次 | 目次 第1章 本研究の背景 第2章 線分尺度を用いた時間長の比率判断 第3章 数を用いた時間長の比率判断 第4章 楽譜上のリズムとリズム産出 第5章 時間長の弁別判断 第6章 <つけくわえ仮説>から導かれる時間近くのモデル 第7章 結論 引用文献 謝辞 |
詳細
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登録日 | 2014.01.24 |
更新日 | 2020.10.06 |