<博士論文>
自動車内の各種サイン音にとって望ましい音響特性

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論文調査委員
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概要  本論文では,実際に自動車内で使われている各種のサイン音を対象とし,それらの機能イメージに相応しい音であるための音響特性を明らかにすると共に,理解しやすく快適と感じられるようなサイン音デザインの基礎的な知見を示すことを目的とした。  序章では,国土交通省,自動車メーカー,通信業界などで自動車の安全性や利便性に関連した様々な研究,我々の生活環境の中で使われている多種多様なサイン音についての関連研究...,また,日本工業規格(JIS)で標準化されているサイン音の実例についても具体的に紹介している。特に,自動車内の各種サイン音については,警報系の音に関する研究が主流であるが,その他の機能を持つものも多く,それぞれの機能イメージにより相応しい音であるための研究の必要性について論じた。  第2章では,自動車内の各種サイン音に関する基礎的な研究調査として,ほとんどの自動車に搭載されている「キー抜き忘れ報知音」「ライト消し忘れ報知音」「リバース報知音」「ウインカー報知音」を対象とし,各機能イメージに相応しい音響特性を検討するために印象評定実験を行った。一般的な傾向としては,4kHz以上の高域成分が含まれていない音において,好ましく,快適で,サイン音として相応しいことが示された。また,現在の自動車内に使われている各種サイン音には不快で,各機能イメージにも相応しくない音が含まれていることが示唆された。さらに,各機能別に音響特性を検討した結果,リバース報知音は,基本周波数が2kHz程度で4kHz以上の高域成分が多く含まれている音,休止時間が短い断続パターンは相応しくないと判断された。ウインカー報知音には,パルス状の「カチカチ」といった2音の繰り返しパターンが用いられるが,繰り返しパターンの長いものが相応しいと判断された。周波数スペクトルとしては,8kHz以上の高周波数成分が多く含まれている音に対して,相応しさは低下する傾向が示された。しかし,第2章では,市販車で使われているサイン音を刺激音としており,様々な物理的特性が交錯した状況のものであったため,第2章の実験結果に基づき,刺激音を合成し,徹底的にそれらによる影響を検討した。  第3章では,実際に自動車内で使われているリバース報知音をモデル化し,「断続パターン」「基本周波数」「スペクトル構造」を系統的に変化させた刺激音を用いて印象評定実験を行い,各要因とリバース報知音としての相応しさや音質との対応関係を明らかにした。断続パターンとしては,吹鳴時間と休止時間の長さが等しく,それぞれ500ms~700msの長さを持つ断続パターンが相応しい印象を持たれていることが分かった。第2章では吹鳴時間が330ms~400ms,休止時間が620ms~750msの断続パターンが相応しいと判断されたのに比べ,この実験では吹鳴時間がもう少し長い音が相応しいと判断された。実際の自動車には,このような範囲の吹鳴時間のリバース報知音はほとんどない。本実験の結果で,吹鳴時間の改善の余地が求められることが示唆された。また,周波数スペクトルとしては,スペクトル重心が3kHzを超えない音が相応しいと判断された。  第4章では,自動車に必ずなくてはいけない機能の一つであり,最も頻繁に使われているサイン音であるウインカー報知音を対象とし,「断続パターン」「スペクトル構造」がウインカー報知音の機能イメージや音質に及ぼす影響を検討した。その結果,400ms~700msの断続パターンがウインカー報知音として相応しく,好ましいことが分かった。この範囲は,第3章リバース報知音の「断続パターンの影響」の実験とほぼ一致した結果であった。700msよりも吹鳴時間が長くなると,相応しさは低下するという結果とも一致している。また,周波数スペクトルでは,特定のスペクトル重心の範囲によって相応しさが強調されることが分かった。その範囲は,およそ3kHz~8kHzである。第2章で相応しいと判断された5つのウインカー報知音のスペクトル重心を求めた値を比べて見ると,およそ4kHz~8kHzとほぼ一致した結果を示していた。スペクトル重心の値がおよそ8kHzを超えた場合は,ウインカー報知音として相応しくないという結果が示された。  第5章では,各章で得られた結果を総括し,自動車内の各種サイン音にとって望ましい音響特性の統合的な知見を示した。断続パターンに関しては,19世紀以降の多くのドイツの科学者たちが,短すぎも長すぎもしない時間間隔についての研究にも似ているような傾向を報告している。心拍や歩行,自発的テンポ,好みのテンポなどのリズムが,時間間隔にして500ms~700msと本研究の結果とほぼ同様な傾向が観察された。つまり,これらの断続パターンの範囲は,人間が最も落ち着いた状態で得られる時間間隔のものであり,自動車内のウインカー報知音にとっても利用できるような有益な結果であることが示唆された。最後には,今後の展望について論じた。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 自動車内の各種サイン音に関する現況調査 第3章 リバース報知音にとって望ましい音響特性 第4章 ウインカー報知音にとって望ましい音響特性 第5章 総括 謝辞 参考論文

本文ファイル

pdf k006-01 pdf 53.0 KB 429 目次
pdf k006-02 pdf 353 KB 582 第1章
pdf k006-03 pdf 728 KB 727 第2章
pdf k006-04 pdf 835 KB 544 第3章
pdf k006-05 pdf 419 KB 307 第4章
pdf k006-06 pdf 213 KB 310 第5章
pdf k006-07 pdf 21.4 KB 283 謝辞
pdf k006-08 pdf 81.2 KB 304 参考文献

詳細

レコードID
査読有無
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
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部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.10.06

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