<博士論文>
出産後の母親意識の変化とこれに関与する家族の援助に関する研究

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論文調査委員
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概要  母親の育児不安や負担感,乳幼児への虐待などが顕在化している現在,女性はその心理・社会的側面からみて,必ずしも健やかな「母親への発達」を遂げているとはいえない。  第Ⅰ部序論では,「母性」の研究に関する文献レビューと,母性観の歴史的変遷を踏まえて,本研究では「母親への発達」という視点から,出産後の「母親意識」の変化とこれに関与する家族の援助に関して検討することを課題とした。  第Ⅱ部では,...出産後10か月の母親と父親に対する質問紙調査を行い,425組について母親意識とそれに関連する要因を明らかにした。その結果,母親意識が高いことに関連していたのは,母親自身の非抑鬱が高いこと,自己価値観が高いこと,夫婦関係の親密度が高いこと,性別役割分業観が伝統的であること,夫の父親意識が高いことなどであった。  第Ⅲ部では,出産後1か月,10か月および18か月の縦断的調査による母親と父親の323組について,母親意識がどのように変化するのか,その変化に母親自身および父親側の要因がどのように影響するのかについて検討した。その結果,母親意識は初産婦では出産直後の育児不安,経産婦では育児の負担や疲労などにより違いが認められ,その母親意識の合計得点は,出産後1か月では経産婦が高いが,出産後10か月と18か月にあっては,逆に初産婦が有意に高かった。出産後の3期において,夫婦関係,父親意識,父親の育児,家事および妻への精神的支援には変動が認められたが,非抑鬱,性別役割分業観,自己価値観には変動は認められなかった。また,母親意識が高いことには,3期において,非抑鬱が高いこと,自己価値観が高いこと,夫婦関係の親密度が高いこと,夫の父親意識が高いこと,父親の子育てや支援行動,などと強い関連が認められた。  第Ⅳ部では,出産後4日目の母親270人について,母性意識と抑鬱傾向との関連性を分析した。その結果,抑鬱群と否定的な母性意識や否定的な出産体験との関連が認められたことから,マタニティブルーは母親となる発達課題を達成することに困難を生じている発達危機の状況とみなしてよいと考えた。  第Ⅴ部では,祖母の子育て参加が「母親への発達」に与える影響について528人の祖母の実態と,祖母と母親97組について検討した。その結果,祖母の子育て参加は,母親が出産後「母親への発達」の過程において,それを促す支援者として評価できると考えた。  第Ⅵ部では,育児不安のある40事例について出産後36か月までを追跡し分析した。その結果,育児不安や育児負担感は,出産後1か月に生じ,10か月では増強し,18か月では「かっとなり叩く」などの衝動的な行動が生じ虐待のグレーゾーンに至っていた。こうした「母親への発達」が健やかでない状況において発見することにより「乳幼児への虐待」を未然に予防できるのではないかと考える。  第Ⅶ部では,第Ⅰ部から第Ⅵ部までを通して,「母親への発達」を促す支援について,具体的な実践課題を考えた。すなわち,母親と父親との協力による子育てを推進すること,ハイリスク新生児の母親への子育て支援,乳幼児への虐待予防,などが重要であり,これらの支援活動の間における連携を含め,地域に根ざした育児支援のネットワークシステム化が重要と考えた。  第Ⅷ部では,本研究の全体を総括し,今後の課題について述べた。続きを見る
目次 目次 第1部 序論 第1章 はじめに 第2章 母性概念の探求-母性に関する研究と母性観の歴史的変遷- 第3章 「母親への発達」を視点とした本研究の課題 第4章 本論文の構成 第Ⅱ部 母親意識とそれに関連する要因 第1章 研究目的 第2章 対象と調査方法 第3章 結果 第4章 考察 第Ⅲ部 出産後の母親意識の変化とそれに影響する父親側の要因 第1章 研究目的 第2章 対象と調査方法 第3章 結果 第4章 考察 第Ⅳ部 周産期における母親の発達危機 第1章 研究目的 第2章 対象と調査方法 第3章 結果 第4章 考察 第Ⅴ部 祖母の子育て参加が母親に与える影響 第1章 研究目的 第2章 対象と調査方法 第3章 結果 第4章 考察 第Ⅵ部 育児不安のある母親の出産後36か月までの変化 第1章 研究目的 第2章 対象と調査方法 第3章 結果 第4章 考察 第Ⅶ部 母親への支援に関する具体的実践課題 第1章 「母親への発達」を促す支援に関して 第Ⅷ部 本研究の総括と今後の課題 第1章 本研究の要約 第2章 今後の課題 謝辞 資料

本文ファイル

pdf o018-01 pdf 148 KB 507 目次
pdf o018-02 pdf 58.8 KB 318 第1部第1章
pdf o018-03 pdf 781 KB 316 第1部第2章
pdf o018-04 pdf 101 KB 229 第1部第3章
pdf o018-05 pdf 427 KB 231 第1部第4章
pdf o018-06 pdf 53.2 KB 202 第2部第1章
pdf o018-07 pdf 475 KB 210 第2部第2章
pdf o018-08 pdf 1.93 MB 255 第2部第3章
pdf o018-09 pdf 344 KB 199 第2部第4章
pdf o018-10 pdf 50.4 KB 223 第3部第1章
pdf o018-11 pdf 212 KB 200 第3部第2章
pdf o018-12 pdf 2.44 MB 229 第3部第3章
pdf o018-13 pdf 394 KB 168 第3部第4章
pdf o018-14 pdf 121 KB 190 第4部第1章
pdf o018-15 pdf 297 KB 214 第4部第2章
pdf o018-16 pdf 500 KB 264 第4部第3章
pdf o018-17 pdf 264 KB 215 第4部第4章
pdf o018-18 pdf 63.3 KB 174 第5部第1章
pdf o018-19 pdf 248 KB 164 第5部第2章
pdf o018-20 pdf 379 KB 177 第5部第3章
pdf o018-21 pdf 203 KB 258 第5部第4章
pdf o018-22 pdf 52.1 KB 147 第6部第1章
pdf o018-23 pdf 97.9 KB 158 第6部第2章
pdf o018-24 pdf 377 KB 160 第6部第3章
pdf o018-25 pdf 246 KB 165 第6部第4章
pdf o018-26 pdf 437 KB 182 第7部第1章
pdf o018-27 pdf 204 KB 203 第8部第1章
pdf o018-28 pdf 85.5 KB 186 第8部第2章
pdf o018-29 pdf 61.5 KB 181 謝辞
pdf o018-30 pdf 778 KB 186 資料

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.11

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