<博士論文>
デザイン思考過程に関する研究

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概要 デザインを行うということは、それまでに作りだされたもの、存在していたものをより良くするために行う場合、またこれから人間の生活に起こるであろう様々な事象を想定して、その事象が人間生活により良く機能するようにそのものの機能、構造、生産方式などを考慮して形態を総合的に計画し提案するという意味をもっている。その中でデザイン思考過程とは、デザインの問題からそれに対する最終解決案を提示するまでのデザイナーが営...むデザイン行為における一連の思考のプロセスを意味する。  製品をデザインしていく際、デザイナーが問題からどうやって解決案に対するイメージをつかみ、それを形づくっていくのか、またその中ではどのような操作を行っているのか、そのメカニズムを直接観察することはできない。しかし、経験的にいえばデザイン過程が創造的であるといって全くまとまりがなく、やみくもに行う非論理的なプロセスでもなければ、論理的であるといって決まり切った手順を踏んでいけば必ずよい答えが出るようなプロセスでもないことは明らかである。すなわち、デザイナーは創造的思考と論理的思考を常にコントロールしながら問題の解決を試みているのではないかと思われる。このように推論するとデザイン思考過程の中には問題解決のための何らかの一般性が存在していると考えられる。  本論文は、工業デザインにおけるデザイナーの思考過程をデザイン実験によって観察・分析し、その一般的な特徴を究明するとともに、実験の分析結果に基づいたデザイン思考過程のモデルの構築を試みたものであり、6章から構成されている。  第1章では、デザイナーの思考過程に関する既往の研究例を概説し、本研究の背景と目的について述べた。  第2章では、本研究の全体的構成とデザイン実験の方法について述べた。  第3章では、デザイン実験から得られたデザイナーの思考過程に関するデータを整理してその結果を示した。デザイン実験はデザイン専攻の学生を対象として携帯電話、自転車のロック装置、ホチキス、CDホルダーの設計という4つのテーマについて発話思考法を用いて行った。また、デザイン実験から得られた発話データに対してデザイン思考過程をより客観的、体系的に分析するために思考の単位化、思考単位の分類などを行った。その結果、対象、観点、デザイン要素、操作の4種類の思考の属性と全部で21種類の分類カテゴリーを抽出し、それらを用いることによって逆に思考単位の特性が記述できることを確かめた。  第4章では、デザイン実験の結果に対して各分類カテゴリー別思考単位の累積出現頻度グラフの分析、思考単位間の推移パターンの分析、創造的アイデアの生成過程の分析を行い、その結果明らかになったデザイン思考過程の一般的特徴について述べた。  デザイナーは新しい製品に対するアイデアの展開において既存の製品に関する情報や知識から多くのヒントを得ている。また、デザイン過程における観点の変化から見ると、デザイナーは一般的に「市場性→製造性→使用性」という思考の流れでデザインが行われていることが明らかになった。  一方、デザイン要素から見ると、「ニーズの発見→製品のデザインの発想→使用のパターンの予測」という基本的な思考の流れが見られる。従って、デザイナーの思考過程が与条性(与えられた設計仕様)からその一次的機能だけを満たすものを形作る過程だけでなく、生活者の潜在的なニーズを見つけて製品に対する要求条件を明らかにしたり、製品の使用のパターンを様々な角度から予測することで製品の使い心地、造形的審美性など二次的機能まで検討するという、より幅広い内容によって構成されていることが明らかになった。  さらに、操作の側面から見ると、デザイナーは「関連製品の情報や知識を探索し、それを問題化して問題点とニーズを明らかにする。また、その解決案としてアイデアを提案し、それがデザイン・テーマに適合するかを評価する。さらに、解決案や評価結果に対して再び問題化を行い、アイデアの展開を活性化していく」という基本的な思考過程によってデザインを行っていることが明らかとなった。  第5章では、デザイン思考過程に対する分析結果を総合してそれを体系的に表せるデザイン思考過程のモデルの構築を試み、デザイン要素の側面からのモデルと知識の操作の側面からのモデルを提案した。  第6章では、本研究のまとめとしてデザイン思考過程のモデルについて現実のデザイン行為及び既往の研究結果との比較検討を通じ、その妥当性と有効性を示した。  続きを見る
目次 目次 第1章 研究目的 第2章 研究方法 第3章 デザイン実験の結果 第4章 デザイン思考過程の分析 第5章 デザイン思考過程のモデル化 第6章 考察 謝辞 引用文献 参考文献

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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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