<博士論文>
年輪生態学的手法を用いた屋久島におけるスギ老齢林の長期森林動態の解明

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概要 屋久島の老齢スギ天然林では,約350年前に大規模伐採が始まり,伐採は約300年続いたといわれている。現在屋久島には,更新木である樹齢200-300年のスギと,伐採を免れた樹齢400年から1000年を超えるスギが混在している。つまり,屋久島のスギ林は,人為活動の影響を含めた長期成長パターンを解明することができる非常に貴重な研究サイトである。そこで本研究では,①屋久島のスギにおける,数百年に及ぶ長期成...長パターンと,過去の伐採が成長に及ぼす影響を年輪生態学的手法を用いて解明すること,②屋久島での継続調査における直径計測結果と年輪解析データを比較・検討し,老齢な天然林での大径木調査の測定誤差を明らかにすることを目的とした。第1章では,屋久島におけるスギの成育概況と,既存の研究について概説した。第2章では,更新木である樹齢200-300年の年輪幅を計測し,年間断面積成長量を算出した。年輪幅より算出した直径成長曲線は,それぞれの供試木で大きなばらつきを示したが,おおむね断面積成長量は,樹齢と共に樹齢階110年と直径階50 cmまでは増加,それ以降は下降する傾向を示し,スギ人工林と比較するとかなり緩慢な成長を示した。これらの結果と継続調査結果を比較して,過去30年間よりも100-150年前の成長量の方が大きいことを明らかにした。第3章では,年輪解析を用いて過去の撹乱時期やその規模を解明した。人為もしくは自然介入による撹乱を抽出するため,年間断面積成長量と年輪幅成長量変化の割合を算出した。その結果,供試木は1600-1900年代にかけての大規模な撹乱が存在し,更にその撹乱後150年間,高い断面積成長量を示した。また,スギ更新木の推定発生時期は,高い断面積成長量を伴う撹乱の後であった。更に,それら更新木は,切り株や伐倒木の上に更新していることからも,この様な撹乱は人為撹乱であると推測した。以上より,1600-1900年代の間に大規模伐採が行われ,それによって樹齢500-600年という老木の成長が促され,スギ更新にも重要な役割を果たしたことを明らかにした。第4章では,屋久島におけるスギの過去30年に及ぶ継続調査における3回の直径計測結果と,年輪解析による年輪幅データを比較した。結果にはばらつきがみられ,特に胸高直径70 cm以上で誤差が大きかった。これは,直径テープ等による計測の際に生じた誤差,大径木を覆う厚い苔の存在,更に林内の大きな切り株や伐倒木による足場の悪さといった,屋久島並びに老齢天然林特有の要因が,正確な計測を困難にしていると考えられた。屋久島におけるスギ天然林の固定試験地においては,10-19年おきに直径計測が行われているが,以上より,特に胸高直径70cm以上の大径な個体に関しては,それ以上の間隔での計測が望ましい事が示唆された。続きを見る
目次 1. General Introduction 2. Estimation of Growth Rates Based on Tree-ring Analysis of Cryptomeria japonica on Yakushima Island, Japan 3. Identifying Dendroecological Growth Releases in Old-growth Cryptomeria japonica Forest on Yakushima Island, Japan 4. Comparing 30-years Diameter Censuses and Tree-ring Chronologies on Old-growth Cryptomeria japonica from Yakushima Island, Japan 5. General Discussion

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登録日 2013.07.01
更新日 2023.12.08

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