<博士論文>
通信会議における遠方音声収音のための残響抑圧方式の研究

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論文調査委員
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概要  21世紀に入り,電話・インターネットなどに代表される情報通信は,メディアのディジタル化,ネットワークのブロードバンド化により急激な進歩を遂げ,現在も大きく発展し続けている.すでに各家庭には100Mbpsの大容量光ネットワークを引くことが可能となり,より魅力的で豊かなサービスを受けることが誰にでもできるようになってきている.このようなブロードバンド時代における双方向通信サービスの夢の一つとして,遠...く離れた相手とその場で自然に会話しているような臨場感のある通信の実現がある,臨場感のある通信を実現するためには,五感で得られるすべての情報を相手側に送り再現する必要があるが,その中でも音(音声)は意思や感情をなどを伝えるためには最も重要かつ不可欠な情報である.  従来から通信に用いられている音声入出力装置として,電話機のハンドセットやヘッドセットがある.これらは単に話の内容のみ伝えるには十分であるが,片手が塞がる制約や装着の煩わしさがあり,自然な会話とは程遠く,臨場感ある通信の実現を妨げる.これらの不便さを解消したものがハンズフリー拡声通話である.会話の自然性や臨場感,通信サービスの品質向上のために,より高品質なハンズフリー拡声通話の実現が強く望まれている.しかし,ハンズフリー拡声通話ではマイクロホンから話者までの距離が離れているため,部屋の残響により収音された音声が劣化して聞き取りづらい.収音された音から残響を抑圧する代表的な従来技術として,MINT法があるが,この方法では部屋の残響特性を事前に測定していなければならず,日常の家庭や会議など事前に残響特性が測定できない場合への適用が難しい問題点があった.  本論文では,ハンズフリー拡声通話の利用形態に起因して生じる残響の問題を解決するため,マイクロホンから話者までの距離が離れている場合でも,部屋の残響を十分に抑圧して音声を収音し,快適なハンズフリー拡声通話を提供できる残響抑圧技術の実現を目的とする.さらに,家庭など世の中に広く普及させるためには安価なパソコンやDSPなどに残響抑圧の処理プログラムを載せる必要があるが,そのためにはアルゴリズムの高速化と演算精度の検討が不可欠である.まとめると,快適なハンズフリー拡声通話を提供できる残響抑圧技術の実現を目的として,その実現に必要な (i)残響特性の事前測定が不要な残響抑圧手法の確立 (ii)一般的なパソコンでリアルタイム残響抑圧処理可能な高速化アルゴリズムの確立 (iii)パソコンやDSPなど様々なハードウエアに搭載したときの演算誤差の推定手法の確立 を本研究の目標とする.  第1章では,研究の背景,従来技術と課題を述べ,本研究の研究方針について述べる.  第2章では,本論文で用いられている手法に関する基礎的な予備知識および代表的な従来の残響技術について概説する。  第3章及び第4章において,残響抑圧手法の確立のため残響特性を事前に測定しなければならなかった従来技術の問題点を解決するため,事前に測定しなくてもよい方法について検討を行う.  第3章では,残響抑圧の本来の目的である音源の波形回復に立ち返り,残響特性の事前測定の代わりに観測可能な複数マイクロホンで収音した入力相関行列と音源の波形が回復ができたときに最小となる評価関数を用いることにより残響を抑圧する二入力残響抑圧法を提案する.この方法では,まず入力相関行列の最小固有ベクトルをいろいろなモデル化次数に対して計算し,原音声が回復できたときに最小となる評価関数を用いて次数を決定する.次にその次数で推定された伝達関数の逆フィルタを計算し波形回復をおこなう.この手法は,短いインパルス応答に対してほぼ完全に波形回復が可能であることをシミュレーション実験により確認する.  第4章では,二入力残響抑圧法においては室内インパルス応答の長さが数千次におよぶと計算誤差,雑音などにより性能が劣化する問題点を解決するため,二入力残響抑圧法と同様に複数マイクロホンで収音した入力相関行列の性質に着目するが,二入力残響抑圧法のように入力相関行列の最小固有ベクトルを用いインパルス応答を推定し逆フィルタを計算するのではなく,直接,入力相関行列から方程式を立て,MINT法の多チャンネル逆フィルタを計算するSemi-blind残響抑圧法を提案する.Semi-blind残響抑圧法では計算誤差,雑音に対してロバストであり,実際の室内インパルス応答に対しても効果があることを実験により確認する.  第5章において,高速化アルゴリズムの確立のため,行列演算における入力相関行列の性質に着目しFFT(高速フーリエ変換)を用いることによって,飛躍的な高速化を試みる.第4章のSemi-blind残響抑圧法における逆フィルタ計算の高速化手法を提案する.高速化のため,相関関数行列の性質である畳み込み行列との類似性に着目し,共役勾配法にFFTによる畳み込み高速演算を利用する.さらに,提案手法を組み込み,パソコン上でのリアルタイム残響抑圧システムを構築し,室内で実験を行い,高速化しても残響抑圧効果が劣化しないことを確認する.  第6章では,演算誤差の推定手法の確立のため,音響信号などの実数データのFFT計算に対して実用上利用される高速ハートレー変換(FHT)および実数FFTの場合の計算誤差の白色雑音モデルを用いて演算誤差を解析し,どの程度の演算精度があれば残響抑圧が実現可能か推定する.  第7章では,本論文の結論として,研究の成果のまとめと今後の課題を述べる.続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 残響に関する予備知識と従来の残響抑圧技術 第3章 入力相関行列の最小固有ベクトルを用いた二入力残響抑圧 第4章 入力相関行列と音声の白色化フィルタを用いたSemi-Blind残響抑圧 第5章 リアルタイム残響抑圧処理のための入力相関関数行列の性質に基づく共役勾配法の高速化 第6章 実数データに対するDFTの計算精度における有限レジスタ長の影響 第7章 結論 付録A 謝辞 参考文献

本文ファイル

pdf o005-01 pdf 152 KB 152 表紙
pdf o005-02 pdf 1.29 MB 165 第1章
pdf o005-03 pdf 1.27 MB 191 第2章
pdf o005-04 pdf 1.10 MB 224 第3章
pdf o005-05 pdf 1.60 MB 174 第4章
pdf o005-06 pdf 1.92 MB 138 第5章
pdf o005-07 pdf 1.74 MB 256 第6章
pdf o005-08 pdf 432 KB 107 第7章
pdf o005-09 pdf 168 KB 139 付録A
pdf o005-10 pdf 215 KB 86 謝辞
pdf o005-11 pdf 1.62 MB 95 参考文献

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.11

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