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本研究は荒廃オーチャードグラス草地に,条播機を利用し追播したオーチャードグラスの定着に関する基礎的資料をうることを目的とした.オーチャードグラスを移植した木箱における追播オーチャードグラスの定着個体数,茎の越冬率,翌春の分げつ増加率及び春の茎数に及ぼす播種時期(8月1日,9月1日,10月1日,以下1日を省略),窒素施肥(速効性窒素5kg/10a,緩効性窒素5kg/10a及び同10kg/10a,以下/10aを省略)及び播種後の刈払い回数(0回,1回,2回)の影響並びにこれらの要因間の相互関係について検討した.1)播種時期の影響:播種後2カ月間の群落内相対照度は,播種時期の遅れに伴い有意に高くなることが認められた.10月播種における良好な光環境は,その定着個体数が8月及び9月播種の5.3倍以上と有意に高い値を示した一因と考えられる.また,10月播種の茎の越冬率は低くなる傾向を示したが,透過光量の増加により翌春の分げつ増加率は8月播種より高い値となった.その結果,春の茎数は8月播種の3.71倍と有意に高い値となることが認められた.2)施肥の影響:施肥が定着個体数,茎の越冬率及び翌春の茎数に及ぼす影響について,播種時期との間に有意な交互作用(p<0.05)のあることが認められた.8月及び9月播種の場合,緩効性窒素の施用は速効性窒素施肥に比べ春の分げつ増加率を高める効果をもつことが示唆された.さらに9月播種では,緩効性窒素の施用により,越冬率も向上することが認められ,特に10kg施用では冬季における分げつ増加もみられ,その結果,春の茎数は速効性窒素5kg施用の4.4倍以上と高い値を示した.また,10月播種では,緩効性窒素5kg施肥により,定着個体数及び茎の越冬率が有意に高い値を示し,その結果,春の茎数は緩効性窒素10kg施肥の5.3倍と顕著に高い値となることが認められた.3)刈払いの影響:播種後の刈払い回数の増加に伴い群落内の播種後2カ月間及び翌春の相対照度が高くなり,追播幼植物の光環境が改善され,春の分げつ増加率が有意に高まることが認められた.8月播種の場合には2回の刈払いが9月及び10月播種では1回以上の刈払いが春の分げつ増加率を高める方策として有効なことが示された.以上の結果,オーチャードグラス草地における追播同草種の春の茎数増加に有効な最適管理条件は,定着個体数が顕著に多く得られた10月の播種,定着個体数及び茎の越冬率に顕著に高い値が示された緩効性窒素5kgの施肥,さらに,翌春の分げつ増加率を高めるための播種後2回の刈払い管理であることが認められた.また,他の播種期については8月播種では2回の刈払い,9月播種では緩効性窒素10kg/10a施用と1回の刈払いが春の茎数増加に有効であることが認められた.なお,刈払いの困難な場合には,10月遅播きを行うことにより春の茎数は他の播種時期のいずれの刈払い処理区より高い値となる傾向が認められた.
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