| 概要 |
ミズナラ天然生林をミズナラ構造材保続生産林へ誘導する技術的実践方法を明らかにすることを主目的として,1971年10月に九州大学北海道演習林の8林班および9林班に試験林を設定した.この報告は,その試験林の概況とその誘導の基本計画を明らかにしたものであって,その概要はつぎのとおりである.(1)本試験林は,総面積203.08haで,ミズナラが大部分を占める広葉樹天然生林である.全林の総蓄積は約19,05...0m^3,ha当り平均蓄積は約94m^3,ha当り連年生長量は約1.3m^3と推定される,(2)本試験林の誘導目標とする保続生産組織は,基本的には,全林が輪伐期150年の一作業級となり,150個の年伐区に区画されて,それらの年伐区には1年生から150年生までのすべての令階のミズナラ構造材生産林分が成立する.このような全林に対して,毎年かつ永続的に,そのうちの18個ずつの年伐区に下種地拵から最終(第11)回間伐までの適切な育林技術がそれぞれ施行される.それにともなって,1個の年伐区の主伐材積および11個の年伐区の間伐材積が,毎年かつ永続的に収穫されるものである.(3)本試験林を目標林へ誘導するための基本計画を,各構成要素ごとに明らかにすると以下のとおりである.1)林道網は,トラック・クレーン集材を前提とし,各山腹斜面に2段の等高線林道(路線間隔は100m以内の斜距離)と,それらを適切に連絡する上下連絡林道とによって構成する.その全林道網を1972年10月までに開設する.2)森林区画は,林道網の開設進度に並行して,遂次年伐区(150個)を分画し,その分画結果にもとづいて,不完全伐採列区(12個)および流域斜面(6個)を設定する.その全森林区画を1972年12月までに設定する.3)誘導期間は,1972年度から2121年度までの150年間を原則とする.その全誘導期間を,10ヵ年を一期とする15の誘導計画期に区分する.4)誘導技術は,下種地拵・補播・種子覆土・更新伐・枝条整理・補植・稚樹刈出・除伐・枝打・間伐とし,誘導開始第1年度から除伐(2年伐区)・枝打(2年伐区)・間伐(6年伐区)も適用する.なお,伐採一更新の進行順序は,年伐区単位で皆伐面を分散させるように配慮して決定する.5)収穫予定法は,輪伐期150年,一経理期(誘導計画期)10年,一令級10年とする令級法を基本とし,年伐量の査定にあたっては,保護樹帯の単木分散伐採によって弾力性をもたせる.(4)この誘導試験を通じて,ミズナラ以タトの広葉樹の保続・育成に関連する基礎的資料を提供する結果になるとともに,組織的な細胞式森林構成の展示林を造成する結果となる.続きを見る
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