<博士論文>
複合材料構造の修理法

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概要 航空機構造に炭素長繊維強化エポキシ樹脂系複合材料(CFRP)の適用が拡大されるに従って、修理法に関する研究が多く行われてきた。薄板のCFRP胴体構造が損傷を受けた場合の修理は、ファスナ継手または接着継手でパッチを当てるのが一般的である。このような修理を目的にした試験片レベルの継手の研究は多くなされている。また、構造レベルでは円孔を修理する研究がなされているが、矩形孔を修理する構想は見られるものの、...研究し発表されたものは見られない。更に、修理期間を考慮した一時修理あるいは恒久修理といった概念はあるものの、これらを念頭に置いた修理法の研究は見当たらない。 そこで、本論文では矩形孔をパッチ当て修理する修理法を研究する。まず、修理期間をどれくらい費やせるかにより一時修理と恒久修理があることを述べ、それぞれについて修理法を提案する。静強度設計基準を一時修理は設計制限荷重に耐えること、恒久修理は設計終極荷重に耐えることと定める。修理対象はCFRP積層板で製造された中型旅客機の胴体外板とする。次に、この胴体外板を古典積層理論により設計し、この外板が損傷を受けたと想定して、この損傷を矩形孔により切り取り、パッチを当てて修理する。一時修理としてはチタニウムパッチをファスナ継手で当てる修理(Ti-PP:Titanium Patch Repaired Panel)、アルミニウムパッチをファスナ継手で当てる修理(Al-PP:Aluminum Patch Repaired Panel)および小型CFRPパッチを二次接着継手で当てる修理(CFRP small-PP:CFRP small Patch Repaired Panel)を提案する。恒久修理としては大型CFRPパッチを二次接着継手で当てる修理(CFRP large-PP:CFRP large Patch Repaired Panel)を提案する。 提案したそれぞれの修理法を評価し、以下の結果を得た。 (1) 製作したCFRP積層板から試験片を切り出して引張試験を行った。CFRP積層板の引張強さおよび縦弾性係数が得られ、これらの値はJAXA-ACDBの東レ材とほぼ同等であり、妥当な結果であった。また、自由縁剥離が試験片全幅に達した時に破断が生ずること、および積層板の破壊モードを明らかにした。 (2) 修理供試体と同じ矩形孔のある切欠材(母材)の引張試験を行った。破断は矩形孔のコーナRを含む断面で生ずること、および積層板の破壊モードを明らかにした。 (3) 修理供試体を製作した。それぞれの修理に要する時間から、修理期間は2日程度である。 (4) 修理供試体の引張試験を実施した。その結果Ti-PP、Al-PPおよびCFRP small-PP は設計制限荷重以上の強度を有し、一時修理法として有効である。また、CFRP large-PPは設計終極荷重以上の強度を有し、恒久修理法として有効である。 (5) 引張試験を実施した修理供試体の破断部分の調査、および計測したひずみ値を考察した。これらから各修理供試体の破壊のメカニズムを明らかにした。すなわち、Ti-PPおよびAl-PPはファスナ孔に面圧破損を伴い、ファスナ継手1行目で母材が引張破断している。CFRP small-PPはまず切欠孔上部に接着面剥離を生じ、続いて左右側帯部の接着面剥離および母材側帯部のコーナRを含む断面に破損が生じ、試験供試体全体の破断に至っている。CFRP large-PPは、CFRP small-PPとは異なり、まず切欠孔左右の側帯部に接着面剥離を生じ、続いて切欠孔上部の接着面剥離および母材側帯部のコーナRを含む断面での破損が生じ、試験供試体全体の破断に至っている。 (6) 引張試験を実施したTi-PPおよびAl-PPについて、破損部を拡大鏡により詳細に調査することにより、母材および金属パッチの破損モードを明らかにした。 (7) CFRP small-PPおよびCFRP large-PPについては破断部および破損部を拡大鏡により詳細に調査し、さらに破断していない接着部分を切断し光学顕微鏡により観察した。パッチ接着端または母材切欠孔端にはフィレットが形成されており、パッチと母材の接着層に楔型に入り込む角に接着剤樹脂亀裂を生じている。この亀裂はCFRP small-PPでは切欠孔上部のパッチ接着端が大きく、CFRP large-PPでは切欠孔側帯部のパッチ接着端が大きい。このことから、CFRP small-PPではまず切欠孔上部の接着面剥離が生じ、CFRP large-PPではまず切欠孔側帯部の接着面剥離が生じ、それぞれの剥離を起点として各修理供試体の破断に至ったというメカニズムを示している。ここで明らかとなった破壊のメカニズムは (5)のひずみ値の考察を裏付けている。 以上の成果を総合し、本研究の目的である、Ti-PP、Al-PPおよびCFRP small-PPが一時修理として有効な修理法であることを示した。また、CFRP large-PPも恒久修理として有効な修理法であることを示した。 今後の課題としては、修理期間の判定は修理前後の検査等も加えて行うこと、安全余裕の精度を上げるにはデータのばらつきや高温・吸湿状態での評価が必要なこと、破断荷重の向上には接着端の亀裂発生と負荷荷重の関連を得ることなどである。続きを見る
目次 第1章 序論 第2章 修理構造の設計手法 第3章 CFRP修理供試体の製作プロセスに関する考察 第4章 CFRP積層板および矩形孔を有する母材の引張試験と破壊のメカニズム 第5章 修理供試体の引張試験と破壊のメカニズム

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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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