<Doctoral Thesis>
A fundamental study on landscape concerns for residential district planning in urban areas

Creator
Examiner
Language
Academic Year Conferred
Conferring University
Degree
Degree Type
Publication Type
Access Rights
JaLC DOI
Abstract 物の豊かさより心の豊かさといった我々の価値観や生活様式の変化と共に、よりよい生活環境をつくろうとする機運が急速に高まってきている。住宅地は身近な生活環境ということから重要であり、その改善がよりよい生活環境をつくることにつながるといえよう。しかし近年、現実の社会では、生活環境に対する居住者の満足感の低下といった課題が顕在化してきている。その背景の一つとして住宅地計画プロセスにおける骨格、個別、詳細と...いう3つの計画段階で、十分な景観配慮が払われていなかったことがあげられる。
そこで本研究では、住宅地計画の本来の目標は、居住者の視点からの優れた居住性の追求であると考え、この場合に必要となる景観配慮に関する基礎的事項の把握を目的とした。
本研究は5章からなる。各章の概要は、次の通りである。
第1章では、本研究において考究すべき研究課題を明らかにするため、関連文献や既往の研究事例を通して、住宅地計画における景観配慮の必要性、ならびに住宅地計画の変遷と景観に対する取り組み等について検討し、課題を抽出した。
第2章では、第1章で明らかにした研究課題を踏まえ、①景観形成実態の異なる住宅地を対象に、それぞれの居住者の満足度からみた景観配慮事項の検討、②自然環境との共生を志向する住宅地のための居住性からみた景観配慮事項の検討、③景観配慮事項展開のためのプログラムの提案、という3つの具体的な研究目的を設定した。これを遂行する研究方法として、スタディエリアは福岡市の既成市街地の中から地形の取り扱いの違うものに着目し、景観形成実態の異なる住宅地として豊浜、長住、平尾の3地区を設定した。また、景観の捉え方として景観は様々な要素の複合体としての景観場面であるという考え方を提案すると共に、居住者の視点から生活環境に対する満足度に寄与している景観場面、または居住性を支えている景観場面を捉えるため、居住者に対するアンケート調査の項目を検討し、調査を実施した。
第3章では、景観形成実態の異なる3つの住宅地を対象にして、骨格、個別、詳細の各計画段階別に、クロス集計により居住者の満足度に寄与している景観場面を明らかにした。その結果、平尾地区のように地形の変化や緑の量など自然系の景観場面が顕著に存在する住宅地では、自然系の景観場面が骨格計画段階における景観を形成していく上で重要であり、自然系の景観場面があまり存在しない豊浜のような住宅地では、周辺の海や山が与える方向感覚などの周辺系の景観場面が当該計画段階において景観を形成することがわかった。また、このような自然系の景観場面が顕著に存在しない長住地区のような住宅地では、土地利用系や交通系の景観場面で骨格計画段階における景観を形成していかざるを得ないことなどがわかった。さらに、望ましい景観の質の指標についても検討し、例えば、住宅地の静かさといった快適性にかかわる指標の重要性についても示唆を得た。
第4章では、居住環境の変化に対する感じ方、満足度、居住年数、居住意欲を指標として居住性を定量的に検討し、自然地形や既存林を活かした住宅地である平尾地区が優れた居住性を持つことを検証した。さらに平尾地区を対象にして、住居系地域や商業系地域により景観場面の構成が異なることに着目し、用途地域別に景観配慮事項を検討した。その結果、土の広場があり、子供が遊べるといった居住性を支える景観場面や、高層住宅の建設により居住性を阻害している景観場面等を把握し、これからの自然環境との共生を意図した住宅地計画に有用な景観配慮事項を導いた。
第5章では、総括として、これまでの各章での検討結果をまとめると共に、今後の住宅地計画において展開・実施される景観配慮プログラムに求められる内容について考察し、提案した。
本研究で得られた成果として、居住者の視点に立って優れた居住性を実現する際に必要となる景観配慮に関する次のような基礎的事項が把握できた。すなわち①景観形成実態の異なる住宅地を対象とし、居住者の満足度からみた景観配慮事項に関する知見を得たこと、②また、自然環境との共生を志向する住宅地のための居住性からみた景観配慮事項の知見を得たこと、②さらに、これらの景観配慮事項展開のためのプログラムを明確化し、提案したことである。
本研究で得られた成果をさらに発展させるために、今後進めるべき研究課題は、①本研究で得られた知見を一般化するための、より多くのスタディエリアでの調査と多様な分析方法を検討すること、②本研究で整理された望ましい景観の質に関する諸指標は、居住者の価値観や社会情勢の変化を配慮して、長い時間的展望の中で再検討すること、③本研究でプログラム作成の意義・必要性を提案したが、その有用性をどのように保証していくかを検討すること、④本研究で展開された考え方や成果を実際のデザインに応用し、その有用性を検証することなどがあげられる。
show more
Table of Contents 目次

第1章 住宅地計画の目標とその景観配慮の必要性および課題
第2章 住宅地計画における景観配慮の検討のためのアプローチ
第3章 住宅地の景観形成実態の違いからみた景観配慮事項の検討
第4章 環境共生の住宅地のための居住性からみた景観配慮事項の検討
第5章 総括-景観配慮事項展開のためのプログラムの提案-
結び
謝辞
注釈
参考・引用文献
資料
show more

Hide fulltext details.

pdf o011-01 pdf 196 KB 171 目次
pdf o011-02 pdf 538 KB 147
pdf o011-03 pdf 3.52 MB 156 第1章
pdf o011-04 pdf 47.0 MB 314 第2章
pdf o011-05 pdf 18.4 MB 212 第3章
pdf o011-06 pdf 11.7 MB 217 第4章
pdf o011-07 pdf 1.17 MB 187 第5章
pdf o011-08 pdf 356 KB 136 結び
pdf o011-09 pdf 92.4 KB 113 謝辞
pdf o011-10 pdf 151 KB 111 注釈
pdf o011-11 pdf 881 KB 109 参考・引用文献
pdf o011-12 pdf 1.55 MB 126 資料

Details

Record ID
Peer-Reviewed
Number of Diploma
Granted Date
Date Accepted
Faculty
Location
Call Number
Created Date 2014.01.24
Modified Date 2020.10.06

People who viewed this item also viewed