<Doctoral Thesis>
Study on evaluation of heart rate variability as indices for the assessment of living environment : The interactive responses to extrinsic and intrinsic stimuli of autonomic activities

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Abstract 心拍の一拍毎の揺らぎである心拍変動性(HRV)は,生体内を常にある一定の範囲内に保とうとする「ホメオスタシス」に対して重要な役割を成す自律神経の活動を反映する。HRVから自律神経の活動を評価する場合,副交感(迷走)神経のみに支配されている呼吸性の成分(HF成分)と,交感神経と迷走神経との両方とに支配される非呼吸性の成分(LF成分)とに分けて評価される。我々の生活環境を客観的に評価する指標としてHR...Vを用いることは,ヒトに本来備わっている自律的な調節機能からの評価が行われることであり,ヒトにとってより望ましい生活環境の構築につながると思われる。この自律的な調節機能を司る自律神経系は日常の様々な刺激に対し反応するが,日常の刺激に対する自律神経の応答には,外部から常にさらされている外因性の刺激に対する反応と精神的要因による内部からの内因性の刺激に対する反応とが混在しており,HRVを生活環境評価指標として用いるのであれば,このどちらの刺激に対しても対応した評価方法が求められよう。本研究は,様々な要因から構築される生活環境を総体的に評価する新たなアプローチとして,日常の刺激を外因性と内因性の刺激という観点から捉え,この外因性と内因性の刺激の相互作用の実態を明らかにすることを目的とした。本論文は以下の5章より構成されている。
第1章では,本研究の背景に言及し,自律神経応答からの生活環境の評価方法を検討するために,HRVにおいて測定時の呼吸に関する検討が必要であることを述べ,呼吸統制による精神的要因,及び精神作業時の呼吸統制が困難な場合,呼吸による末梢性の変化がHRVから評価される交感神経と迷走神経活動の相対的寄与に影響を及ぼすことを考慮したHRVの評価方法について検討が必要であることを示した。さらに,我々の精神活動に由来する内因性の刺激によって,外部環境の変化や姿勢などの身体的要因の変化による外因性の刺激に対する自律神経応答に修飾がなされていることに注目し,この外因性と内因性の刺激の相互作用の検討が必要であることを述べた。
第2章では,HRV測定時の呼吸に関する検討を行った。呼吸統制による精神的影響について,一回換気量と呼吸周期をパラメーターにとり,これらを変化させた時のHF成分の変化と,自発性の呼吸パターンにより発生するHF成分,及び自発性の呼吸パターンで呼吸を統制した時のHF成分とを相互に比較した。これにより呼吸統制に伴う負荷に対するHRVの影響は,心拍数の亢進の有無が重要であることが示された。また,呼吸統制が困難な精神課題の遂行時に生じる呼吸の変化に対して,呼吸周期のみの統制によって得られたHRVに対する一回換気量の変化を補正する方法が有効であることが示された。また相互相関関数からのHRVの評価は,本実験で用いたすべての呼吸パターンに対して適用できるとは限らなかったが安定して呼吸性の変動を推定できる一回換気量と呼吸周期の範囲のあることが特定された。これにともない,測定に際し被験者の一回換気量と呼吸周期のパターンの特定が必要であることが示された。
これら呼吸に関する知見を基に,第3章,及び第4章では,外因性と内因性の刺激に対する相互作用を検討した。第3章において,外因性の刺激として室温と光源の色温度と音の3つの環境要因を組合せた複合環境を設定し,その実験室環境下で,弁別反応時間課題により内因性の刺激を負荷した。この結果,環境要因による刺激に対しては自律神経調節の基調を成す副交感神経の活動が主として働き,そのなかで精神的要因に対しては新たに交感神経活動が起動したことが示された。
第4章では,交感神経の働きで調節しなければならないような外因性の刺激が負荷されている状況においても,内因性の刺激としての精神的要因に対して第3章と同じように自律神経の調節がなされるか検討した。ここでは,段階的ヘッドアップティルト試験を用いて,外因性の刺激に対する交感神経の活性が段階的に強まるなかで,内因性の刺激としての精神的要因に対する自律神経の応答を調べた。外因性の刺激として仰臥位から立位までの段階的体位変換によって交感神経優位になったが,身体傾斜の弱い段階において主として迷走神経により調節されている状態では,内因性の刺激に対して交感神経性の心拍数の増大がみとめられたが,外因性の刺激に対する交感神経活動の亢進に伴い,内因性の刺激に対して交感神経性の心拍数の増大が少なくなるかもしくは見られなくなった。一方において,LF成分の応答は,外因性刺激強度の段階的変化に対して交感神経と副交感神経の両方の緊張の程度の違いにより,内因性刺激の付加に対して増大と減少の両方の反応を示すことが明らかとなった。
第5章では,本研究の総括を行い,生活環境評価指標としてのHRVの有用性と意義について述べた。最後に今後の問題点と展望を述べ結論とした。
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Table of Contents 目次
第1章 序論
第2章 生活環境評価指標として心拍変動性に対する測定時の呼吸に関する検討
第3章 物理的環境要因と精神的要因に対する自律神経応答の相互作用の検討
第4章 受動的体位変換時の精神的要因に対する自律神経応答の検討
第5章 総括
謝辞
引用文献

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pdf k039-01 pdf 204 KB 352 目次
pdf k039-02 pdf 2.57 MB 412 第1章
pdf k039-03 pdf 3.41 MB 422 第2章
pdf k039-04 pdf 2.44 MB 344 第3章
pdf k039-05 pdf 2.06 MB 329 第4章
pdf k039-06 pdf 490 KB 301 第5章
pdf k039-07 pdf 148 KB 277 謝辞
pdf k039-08 pdf 1.13 MB 340 引用文献

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Created Date 2014.01.22
Modified Date 2020.10.06

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