<博士論文>
視覚と音を融合させた空間の表現に関する開発研究
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概要 | 人は空間の中で生活している以上,常に空間を知覚しながら生活している。そしてその空間は視聴覚情報で溢れている。このような日常生活を形成している要素を一度分解して再構築することで,新しい空間表現を構築する仕組みを開発研究することが本研究の目的である。その手段として,視聴覚情報を融合することによる空間表現の開発を試みた。 第1章では,イメージ音の特性を調査することから始め,地図という視覚情報とイメージ...音という聴覚情報を融合させることで,イメージによって空間を形成する仕組みの開発を行った。 聴覚情報であるイメージ音には具体的な空間をイメージさせる特性があり,それはある程度の規模に共通性があるということをアンケート調査により明らかにした。そしてそのイメージ音を地図という視覚情報と融合することによって,平面的な関係を表している地図に空間を形成する効果があることを,実際に仕組みの開発・実験を行うことで実証した。音地図を用いることでイメージによって空間を形成するために重要となる要素は,地図上の位置に触れるという働きかけに対してインタラクティブにイメージ音を返すということである。この音地図を使用してアンケート調査を行った結果,被験者は様々な具体的な空間をイメージしており,その規模や雰囲気などはある程度共通していることがわかった。 このイメージ音地図をサイン音の観点からとらえ,触知情報や音声案内なども追加して音声触知図案内板の開発を行ったのが第2章である。 第2章では,感覚的な情報であるイメージ音に正確な説明の音声案内を加え,地図を触知図にすることで視覚障害者に対しても空間を把握させることができるかについて,開発・実験を行った。具体的には昭和記念公園を対象にして音声触知図案内板を制作した。その際にイメージ音や音声案内文言の最適な長さの調査も行った。試作開発した案内板は,視覚障害者を対象に使用してもらった上で聞き取り調査を行って効果を検証した。その結果,視覚障害者の方から非常に良い評価を得られた。この実験により,開発した音声触知図案内板によって視聴覚情報を融合することで視覚障害者にも晴眼者にも空間を把握させることが可能であるということを実証できた。 また,視聴覚情報の融合による空間表現において重要な要素であるインタラクティブ性について,2つのモデルを提唱した。1つはシステム側から人に対して情報を提供することでインタラクティブな関係が始まり,主体がシステム側にある「モデルA(システム型)」,もう1つは人側から始めに働きかけを起こすことでインタラクティブな関係が始まり,人側に主体のある「モデルB(人型)」である。 第3章ではこの2つのインタラクティブ関係モデルの適用方法を考えながら,インタラクティブに視聴覚情報を融合することで人の行動空間を拡大させるシステムの開発・実験を行った。 始めに,身体の動きから視聴覚情報をフィードバックする先行事例を分析したところほぼすべてがインタラクティブ関係モデルAに当てはまり,主体がシステム側にあるものばかりであった。そこで,モデルBのインタラクティブ性を実現した視聴覚情報融合システムを開発することで,主体が人側にある新しい空間表現の実現を試みた。 そのためにまず実験として,手の動きから絵と音が作られるシステムの開発を行い,子供たちに体験してもらってその効果を確認した。そして手の動きによる視聴覚情報の融合が可能であったことから,さらに全身の動きから映像と音楽を作り出すシステムの開発を行った。具体的には,カメラを使って全身の動きを取り込み,それを元に画像処理による映像データと音楽理論を適用して生成したMIDIデータを出力するシステムである。できあがったシステムについて保育園の園児に対して調査実験を行ったところ,園児が飛び跳ねたり走り出したりするなど,予想以上に大きく行動空間を拡大することができた。 第4章では,まとめとして,提唱した2つのインタラクティブ関係モデルに基づいてこれまで本研究で開発してきたことについて考察を行った。システム側に主体のあるモデルAの仕組みが当てはまる音地図や案内板は,地図の上にイメージによって空間を形成し,人側に主体のあるモデルBの仕組みをもった全身の動きから映像と音楽を作り出すシステムは,動いている人の行動空間が拡大される。つまり,インタラクティブ関係モデルにおいて主体となっている側に空間表現が確立されるということである。それによって,視聴覚情報を融合するときのインタラクティブ性の実現方法を選ぶことで,目的に応じた空間表現を開発することが可能となった。続きを見る |
詳細
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授与日(学位/助成/特許) | |
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登録日 | 2009.08.13 |
更新日 | 2020.11.16 |