<博士論文>
紫外線対策としてのサングラス装着が色彩弁別に及ぼす影響

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要 近年、オゾン層が破壊され地上に届く紫外線の量が増え、紫外線による健康被害が懸念されてい る。紫外線のうち、UV-BはビタミンDを精製するなどの好影響もみられるが、一方で、日焼けの原因 や皮膚ガン、眼疾患などの悪影響を及ぼす。今後、紫外線対策として、帽子、衣服のみならず、紫外線防止用サングラスの装着も視野に入れることが必要である。特に、高齢者の場合、加齢による水晶体の変化、色彩誤認が危惧されるため、...紫外線対策として効果的で、さらに色彩弁別にマイナスの影響を及ぼさないサングラスが望まれる。そこで、本研究では、まず、紫外線に関する意識や紫外線対策としてのサングラス装着の実態について明らかにし、さらに、人々が安全で快適な視環境をつくるという視点から、サングラス装着時における若齢者および高齢者の色彩弁別能力の実態を分析し、サングラスの色による色の見えの違いを明らかにすることを目的とした。まず、第1 章では、本研究の背景と目的について述べた。第2 章では、10~20 歳代の若齢男女、60~90 歳代の高齢男女計1000 名を対象に、紫外線に対する意識や対策の実態、紫外線対策としてのサングラス装着の問題点について、質問紙調査を実施した。紫外線に対する意識では男性より女性の方が紫外線は皮膚や目に良くないと思い、対策の重要性を認識していた。紫外線対策について、化粧品や日傘の使用は女性に、帽子の着用は高齢者に、サングラスの使用は男性に多くみられた。サングラスの装着率は、若齢者より高齢者が高く、有意差がみられた。装着理由は、「まぶしいため」が多く、世代別では、高齢者は「目の保護のため」、「紫外線防止のため」、若齢者は「おしゃれのた め」が多かった。サングラスを装着しない理由として、高齢者は、「周りの色が正しく見えにくい」など、装着に伴う安全性を問題視していた。安全で快適な視環境が望まれるため、今後、視覚特性に配慮したサングラスの提案が必要であると考察した。第3 章では、19~22 歳の女子学生20 名を対象に、100 hue test によるサングラス装着時における色彩弁別能力の実態を調査した。調査はD65 蛍光ランプを設置した装置内で行い、作業面照度を約5000lx とした。調査に用いたUV カット機能付きサングラスレンズの色はスモーク・ブルー・ブラウンで、Luminous transmittance は約40%である。100 hue test の総偏差点について、サングラス無しおよびサングラス3 種(スモーク、ブルー、ブラウン)の比較では、4群間で有意差はみられなかった。若齢者の場合、本調査で用いたレンズはサングラスとして色の弁別能力に問題はないといえる。2 群間の100 色相別偏差点の比較の結果からブラウンのサングラス装着時の若齢者の視環境は、高齢者の見えと似た傾向にあることが推察された。第4 章では、第3 章と同様の条件で65~75 歳の高齢者18 名を対象に色彩弁別能力の実態を調査した。その結果、100 hue test の総偏差点の比較では、サングラス無し群とブラウン群との間で有意差が認められた。高齢者はブラウンのサングラスを装着することによって色彩弁別能力が低下した。サングラス無しとサングラス3 種の2 群間の100 色相別偏差点の比較から、スモークのサングラスは高齢者の色彩弁別能力を低下させないが、ブルーのサングラスを装着すると同系色である青、青紫領域が識別しにくいこと、ブラウンのサングラスを装着すると高齢者が本来識別しにくい色領域がさらに識別しにくくなった。第5 章では、第3 章と第4 章の結果から、サングラス装着時における若齢者と高齢者の色彩弁別能力を比較した。100 hue test の総偏差点の比較では、スモーク、ブルー、ブラウンのサングラス装着時で若齢者と高齢者間で有意差が認められ、いずれも高齢者の総偏差点が高く、若齢者より高齢者の色彩弁別能力が劣っていることが明らかになった。次に、若齢者、高齢者の2 群間で100 色相別偏差点の平均値を比較したところ、サングラス無しでは紫~赤紫領域で、スモークでは黄緑と緑の中間、青緑~青領域で、ブルーでは青領域、紫~赤紫で、ブラウンでは青紫~紫を除く広範囲で有意差がみられ、高齢者群の偏差点が高く、これらの色相は高齢者が識別しにくいことが明らかになった。以上より、Luminous transmittance が約40%のサングラスでは、若齢者に比べて高齢者では見えにくい色領域が多く、特にブラウンで加齢による変化が著しかった。本研究では、高齢者がサングラスを装着した場合の色彩弁別能力はサングラス無しの場合より劣り、さらに、Luminous transmittance40%のサングラスでは、レンズの色により色彩弁別能力が低くなることが明らかになった。そこで、今後、Luminous transmittance の条件を変化させた場合、さらに、レンズの色を変化させた場合の見えについても検討する必要がある。
Wearing UV-protective sunglasses should be included in the measures against UV. In this study, firstly, the current state of consciousness regarding UV and wearing sunglasses as a countermeasure was clarified, and color discrimination while wearing sunglasses was analyzed in young and elderly subjects to identify lens color-associated differences in color perception, aiming at establishing safe and comfortable visual conditions. In Chapter 1, the background and objective of this study were described. In Chapter 2, the current state of consciousness regarding and ountermeasures against UV as well as problems with wearing sunglasses as a measure against UV were surveyed using a questionnaire. Regarding consciousness about UV, more female subjects considered that UV is harmful for the skin and eyes, recognizing the importance of countermeasures, compared to male subjects. The rate of wearing sunglasses was higher in the elderly than in young subjects, showing a significant difference. In Chapter 3, color discrimination while wearing sunglasses was investigated employing the 100 hue test in 20 female students. The lens colors of the UV-cut sunglasses tested were smoke, blue, and brown, and their light transmittance was about 40%. On comparison of the total deviation scores of the 100 hue test, no significant difference was noted among the 4 groups. In Chapter 4, color discrimination was investigated in elderly subjects under the same conditions as those in Chapter 3. On comparison of the total deviation score of the 100 hue test, a significant difference was noted between the groups without sunglasses and with brown sunglasses, showing that brown sunglasses reduced the color discriminating ability of the elderly subjects. On comparison of the deviation scores of 100 hues between the group without sunglasses and groups with the 3 color types, the blue lens reduced the ability to distinguish similar colors, and the brown lens further reduced the capacity to distinguish colors for which the ability had already declined in the elderly. In Chapter 5, color discriminating ability while wearing sunglasses was compared between the young and elderly subjects. On comparison of the total deviation score of the 100 hue test, the score was significantly higher in the elderly than in the young subjects while wearing smoke, blue, and brown sunglasses, showing that the discriminating ability of the elderly subjects was inferior. Based on these findings, the elderly subjects could not readily distinguish many color regions while wearing sunglasses with a light transmittance of about 40%, compared to the young subjects, and age-related changes were marked while wearing brown sunglasses. It is necessary to investigate color perception with changes in light transmittance and the lens color.
続きを見る
目次 第1章 序論 1.1.研究の目的 1.2.研究の背景 1.3.本論文の構成 第2章 紫外線に対する意識とサングラス装着の実態 2.1.はじめに 2.2.調査方法 2.2.1.調査対象者、場所、時期 2.2.2.調査内容 2.2.3.分析方法 2.3.結果 2.3.1.対象者の眼の状況について 2.3.2.紫外線に対する意識と対策の実態について 2.3.3.サングラス装着に対する実態について 2.3.4.紫外線に対する意識とサングラス装着の実態との関連について 2.3.5.眼疾患およびメガネ使用の有無とサングラス装着との関連について 2.4.考察 第3章 サングラス装着時における若齢女性の色彩弁別能力 3.1.はじめに 3.2.調査方法 3.2.1.調査対象者、場所、時期 3.2.2.調査条件 3.2.3.使用機器 3.2.4.調査内容 3.2.5.分析方法 3.3.結果 3.3.1.対象者の眼の状況について 3.3.2.100huetestによる総偏差点 3.3.3.サングラス無しおよびサングラス装着時の100色相別偏差点 3.3.4.サングラス無しとサングラスの色の違いによる100色相別偏差点の比較 3.4.考察 第4章 サングラス装着時における高齢女性の色彩弁別能力 4.1.はじめに 4.2.調査方法 4.2.1.調査対象者、場所、時期 4.2.2.調査条件 4.2.3.使用機器 4.2.4.調査内容4.2.5.分析方法 4.3.結果 4.3.1.対象者の眼の状況について 4.3.2.100huetestによる総偏差点 4.3.3.サングラス無しおよびサングラス装着時の100色相別偏差点 4.3 .4.サングラス無しとサングラスの色の違いによる100色相別偏差点の比較 4.4.考察 第5章 サングラス装着時における色彩弁別能力の世代間比較 5.1.はじめに 5.2.調査方法 5.3.結果 5.3.1.対象者の眼の状況について 5.3.2.100huetestによる総偏差点の比較 5.3.3.若齢者と高齢者の100色相別平均偏差点の比較 5.4.考察 第6章 総括 引用文献 謝辞 巻末資料

本文ファイル

pdf 12_appendix pdf 186 KB 354 巻末資料
pdf 11_reference pdf 175 KB 699 引用文献
pdf 10_acknowledgement pdf 95.8 KB 370 謝辞
pdf 09_chapter6(総括) pdf 134 KB 317 第6章 総括
pdf 08_chapter5 pdf 222 KB 335 第5章
pdf 07_chapter4 pdf 271 KB 437 第4章
pdf 06_chapter3 pdf 344 KB 593 第3章
pdf 05_chapter2 pdf 222 KB 942 第2章
pdf 04_chapter1(序論) pdf 211 KB 548 第1章 序論
pdf 03_intoroduction pdf 112 KB 361 論文要旨
pdf 02_contents pdf 79.9 KB 242 目次
pdf 01_cover pdf 38.4 KB 252 表紙

詳細

レコードID
査読有無
キーワード
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
登録日 2013.07.10
更新日 2023.07.31

この資料を見た人はこんな資料も見ています