<博士論文>
シイ・カシ萌芽林とヒノキ人工林の空中写真画像を用いた樹冠幅解析による林分特性の抽出に関する研究

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概要  本研究は、シイ・カシ萌芽林とヒノキ人工林の林分特性について、空中写真画像より抽出した樹冠情報による推定法を検討したものである。本研究の各章について以下に概要を述べる。
 序論では、森林管理の現状と課題にっいて述べ、調査対象地である福岡市近郊の植生概況について整理し、これらの研究背景、本研究に関連する既往研究をまとめ、研究の構成について述べた。
 第2章では、調査地の選定を行い、ZM法を用いシイ・カシ...萌芽林の植物社会学的特性について検討した。その結果、シキミ‐タブノキ亜群集とタイミンタチバナ‐スダジイ亜群集に分類され、この違いはシイ・カシ萌芽林の垂直分布の差異だけでなく、土壌と人為的影響によると考察した。
 また、樹冠幅データを用いた樹冠の発達過程を検討するために、次の2つの解析を行った。1つは、空中写真から判読した樹冠幅データを用い、管理・生長履歴の推定・分類を行った。2つ目は、樹冠幅の毎木データを用い、相対優占度の解析と遷移系列の推定可能性を検討した。その結果、両者とも有効であることを把握した。
 第3章では、樹冠幅データを用いた林分特性の抽出方法について検討するために、次の3つの解析を行った。
 1つ目は、シイ・カシ萌芽林とヒノキ人工林について、主成分分析手法を用い樹冠情報と林分条件要素の関係性を整理した。その結果、樹冠面積平均と胸高断面積平均の間に特に高い相関関係のあることを示した。また、樹冠面積平均、立木密度、高木層植被率の3つの樹冠情報は異なるベクトルを示し、林分条件要素間の関係性を説明し得ることを示した。
 2つ目は、樹冠幅を大型、中型、小型に径級区分し、このような樹冠サイズの構成区分による解析法について検討した。その結果、径級比を用いた主成分分析の散布図により、樹冠サイズの構成に基づく林型区分方法を示した。
 3つ目は、樹冠幅の基本統計量について、林分特性の抽出に適した数量を探索した。ここで、樹冠直径と胸高直径の基本統計量間の相関分析を行ったところ、第3四分位点、最大値、平均値、そして、標準偏差に高い相関が得られ、これらの統計量を用いた林型区分方法を示した。
 第4章では、空中写真の画像解析を用いた樹冠幅抽出手法の開発を検討した。まず、樹冠幅の差異と関係があると推定した画像特性値である標準偏差と樹冠境界累積度数を用い、その関係性を整理した。その結果、標準偏差は樹冠境界累積度数と負の関係を持ち、平均樹冠面積、下層植生発達度、樹冠下相対照度と正の関係を示した。これらの結果から、標準偏差は樹冠幅と樹冠間の隙間に関係する総合的な数量であることを明らかにした。
 次いで、既存の同質領域判定手法について追試を行った。地上解像度45cm、RGB256階調の画像を用いて実施した結果、広葉樹林の判定基準値はh:40階調付近で、また、スギ・ヒノキ人工林はh:20階調付近で最適な樹冠抽出が行われることを明らかにした。常緑広葉樹林の結果については、小村らの落葉広葉樹林における結果と一致した。
 さらに、同質領域判定手法の改良を行うに当り、冗長情報除去手法の追加と、樹冠サイズ変化に応じたパラメータの自動設定手法の開発を検討した。冗長情報の除去には抽出樹冠の重なり円と影域を消去する手法を取り入れた。また、誤差率0%の判定基準値hは、平均樹冠直径、および画素値の標準偏差と正の相関関係があることを明らかにした。この関係から判定基準値と影域に相当する樹冠境界輝度値を推定する関係式を求め、処理の自動化を図った。この結果、平均樹冠直径は-26~16%、樹冠数は-75~-42%の誤差率で樹冠の抽出が可能であることを示した。
 第5章では、改良した同質領域判定手法を用い抽出精度の検証を行った。その結果、適正に抽出できる樹冠の最小半径rは、シイ・カシ萌芽林で実生木と萌芽木がr=1.5m、ヒノキ林ではr=1.0mであった。ただし、萌芽木は株全体の樹冠を構成する個々の樹冠半径がr<1.5mの場合、株全体が抽出されることを明らかにした。シイ・カシ萌芽林の抽出精度を樹冠半径r<±1.0m、ヒノキ人工林をr<±0.5mとした場合、適正抽出率は前者が34.4%、後者は41.4%であった。また、本手法で抽出した樹冠データを用い、3章で示した基本統計量と樹冠サイズ構成を用いた林型区分を行った。その結果、適正に抽出できる最小半径r以上のデータによる林型区分は有効であることを示した。
 第6章では、第2章から第5章の結果を総括し、得られた成果と今後の課題について述べた。以上の一連の研究結果より、空中写真画像からの同質領域判定手法による樹冠の抽出精度を明らかにし、これらの樹冠情報は林分特性を把握する上で有効であると判断した。加えて、より精度の高い樹冠幅の抽出方法を探るためには、空中写真の地上解像度を45cmから25~30cmに高め、夏季の写真を用いる手法が望ましいことを提案した。
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レコードID
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
部局
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.16

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