<博士論文>
色覚異常者と健常者が共感できるWebサイトの配色に関する提案

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概要 要旨
 本研究は,色覚異常者のWeb利用上の問題点に着目し,色覚異常者も含めて多くの人々が適切にWebサイトの色彩情報を取得できるように,Webサイトの配色を提案し,その活用を促すためのWeb用ユニバーサルデザイン配色支援ツールの開発を行ったものである.
1.研究の背景及び目的
 インターネットは,近年さまざまな分野において活用され,現代生活に欠かせない媒体となってきて,幅広い分野での情報収集に利用され...ている.しかしながら,日本国内で約324万人いると推定される色覚異常者にとっての環境は,決して満足のいくものではない.このような背景において,色覚異常者がWebサイトを利用するためにされた研究は多数ある.しかし,これらの研究は,下記のような問題を抱いている.
①背景色である「地」と文字などの「図」とのコントラストの調節,及び色相差と明度差の調節によって,重要な情報を目立たせたり,誘導したりするという方法で,色覚異常を持つ人が確実に情報を得ることができるようにするものであり,感情面を含めたイメージの伝達に関する研究は行われていない.
②色覚異常者のための先行研究は,色覚異常者のみを対象とし,色の識別性を高め,情報を確実に伝達することを目指した研究がほとんどであり,健常者も含めたユニバーサルな視点から,すべての人々に有効はWebサイトの配色の研究が欠如している.
③現在既存しているソフトウェアは,出来上がった成果物の確認ツールであり,Webサイトの制作段階において色彩計画に利用できるようなWeb用ユニバーサルデザイン配色支援ツールはない.
 そこで,本研究は,色覚異常者と健常者の間でWebサイトの配色から生じているイメージの差を把握することと,両者がイメージを共感できる配色を提案し,視認性及びイメージの確認を容易に行えるWeb用ユニバーサルデザイン配色支援ツールを開発することを目的とする.
2.研究方法
 まず,Webサイトの配色の問題点を明確にした.それから,色覚異常者と健常者を対象としてWebサイトの配色に対するイメージ調査を行い,色覚異常者の色覚特性を確認し,健常者とのイメージの比較を行った.
 公開中のWebサイトの1ページを取り上げ,配色を変化させたサンプルページを評価対象とした.具体的には,色覚異常者と健常者の見え方が大きく異なる赤色と緑色を基準にし,色相やトーンを変化させることで,配色の組み合わせを作った.これを第1次Webイトのイメージ調査とした.次いで結果を検証する意味で,異なるサンプルページを作成し,第2次イメージ調査を行った.そして,2回の調査結果をそれぞれ因子分析し,サンプルページごとに因子の比較を行い,色覚異常者と健常者の受けるイメージを確認した.
 異常の研究結果をまとめ,Webサイトを作成する際,色覚異常者と健常者がイメージを共感できる配色方法の提案を行った.さらに,この成果を活用し,Web用ユニバーサルデザインのための配色支援ツールとなるソフトウェアを開発した.
3.研究の結果と考察
3.1 色覚異常者とってのWebサイトにおける配色の問題点の抽出
 現在のWebサイトの配色状況を把握し,色覚異常者にとっての問題点を抽出した.現状の大半のWebサイトでは,識別できない色が使用されているため,以下のような調査結果が得られた.
①背景色に対して文字色が識別できない.
②色を使って情報を分類及び誘導する工夫が足りない.
③Webサイトのイメージを把握できない.
 これまでの先行研究では,色覚異常者が発信された情報が読めないという問題点の解決に力が注がれている.一方で,イメージを伝達するという色の役割に主眼を置いて問題点を抽出及び解決策の提案を行っている研究には至っていない.
3.2 Webサイトの色彩イメージ調査及び分析
 同じWebサイトの配色から,色覚異常者と健常者がそれぞれ受け取るイメージの比較調査を行った.調査サンプルには色覚異常者と健常者の見え方が大きく異なる赤色と緑色を中心に配色したページを用いた.2回のWebサイトのイメージ調査の結果により,各サンプルページのイメージを確認し,イメージと色相・トーンの関係を明確にした.さらに調査結果を因子分析し,サンプルページごとに因子を抽出した結果をもとに,色覚異常者と健常者の受けるイメージを比較し,イメージと色相・トーンとの関係を重点的に考察した.
3.3 Web用ユニバーサルデザイン配色支援ツールの開発
 色覚異常者と健常者がイメージを共感できる配色方法の提案の応用として,Webサイトを制作する際に,活用可能なWebデザインのための配色支援ツールに開発した.このツールは2つの機能がある.
①色覚異常者の視認性の確認:背景色を選ぶと,識別しやすい文字色が提示される.
②色覚異常者と健常者が共感できるイメージの確認:イメージ言語を選択することにより,色覚異常者と健常者が共感しやすい配色サンプルが提示される.
4.今後の展望
 今後,数多くの配色サンプル,対象者で調査を行い,研究の精度を高めて行きたい.本研究の成果である配色デザインのツールの実用化をめざす.また,さらに加齢による色覚異常についても研究の視野に入れ,より様々な種類の色覚異常者に対応できるWebサイトの配色を考えていきたい.
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詳細

レコードID
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
部局
登録日 2009.08.13
更新日 2020.10.06

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