<博士論文>
日本と中国における住居近代化の要因に関する比較研究 : 都市近郊農村地域を中心に

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概要  日本と中国は国家体制や経済制度,生活文化などの領域において異なる点が多いが,両国は共に戦争終結後に深刻な住宅難に直面し,住宅供給政策を緊急に実施した点,その後,高度な経済成長を経験し,持ち家政策を実施した点,また,住生活の面において経済的な余裕ができてから家電製品に代表される新しい生活機器が普及し,共に欧米などの生活様式の影響を受けた点など,日中両国は住居の近代化において共通の部分が多いことが言...える.また,中国経済の高度成長は日本より約30年を遅れてはいるが,一人っ子政策によって迅速に少子化が進み,これから近い将来に日本と同じ少子高齢化社会に入る可能性が高いため,日本と中国の住居近代化の要因に関する比較研究はこれからの中国おいて住宅の設計,建設,設備の導入,政策の策定,住環境整備などを含める住宅改善に対し,極めて重要であることが考えられる.  高度経済成長により国民の所得規模が拡大するに伴い,テレビを始めとした家電製品や車といった耐久消費財などの生活機器が普及し,伝統的な居住形式は変容を余儀なくされ,新たな生活形態が形成されていく上で,日本と中国の住居は,そのような住要求と社会の変化に対応するため,改善や更新を経て今日に至っていることがこれまでの研究から明らかにされている.しかしながら,これらは一般的な傾向を示すのみで,具体的に生活機器の普及と住宅の改善がどのような関係性を持ちながら住居の近代化がなされてきたかは明らかにされていない.  そこで,本研究では,両国の都市近郊農村地域を対象に,伝統的な住居の近代化がどのようになされてきたかを明らかにする.具体的には,家電製品や衛生設備等の新しい生活機器の普及や生活形態の要求から何かどのように成し遂げられたか,あるいは,台所,便所,浴室などの新たな居住空間が増築,改修された順番,その資金,原因を明らかにし,日中両国の都市近郊農村地域における住居の近代化の変容過程とその要因を抽出すること目的とする.  まず,戦後日本と中国の住宅事情,住宅供給政策,住宅金融政策などの住居に関する社会的な変化についての概要をまとめ,調査地域に当たる福岡県那珂川町と南京市における住宅建設や電気,ガス,上下水道の整備などの住宅の近代化に関係する社会背景について整理した.  日中間の住宅供給政策や住宅金融政策などの住宅に関する政府の取組みには,社会システムや経済構造が異なるため,相違する点が多かったが,農村部でのインフラ整備が都市部と比べ遅かった点や経済成長後に家電製品に代表される新しい生活機器が普及した点など共通点も多いことが指摘できた.  次に,日中両国における都市近郊農村における住居の近代化過程を明らかにするため,これらの生活機器の普及が住宅の改善とどのような関係性を持ちながら住居の近代化がなされてきたか,実施調査を行った.調査対象地域は,日本は,福岡県筑紫郡那珂川町五ヶ山地区,中国は南京市江心洲鎮永定村第二村民小組である.また,家電製品,車や農業機械等の新しい生活機器の普及過程や,台所,便所,浴室,子供部屋などの新しい居住空間の増築・改修された順序,その資金源や要因を明らかにすることによって,これらの農村住居の近代化とその変容過程およびその要因を具体的に抽出した.  その結果,新しい生活設備の導入による農村住居の建築的構成と空間機能の変化をみると,テレビや冷蔵庫などの家電製品や,システムキッチン,水洗便器などの生活設備の普及が新しい住生活の要求を生み出し,その後の住宅改善を左右する大きな影響を与えることがわかった.また,農家の所得の中に占める兼業からの現金収入の割合が大きくなり,勤めが主業で,農業が副業という生計構成となった.収入が増加する一方,住宅建設費用も増加していったので,親戚や隣近所から資金を融通してもらうことも難しくなり,また,収入の積立金だけで,建替えはもちろん大規模な増改築を行うことも困難になっていった.そのため,都市近郊農村住居の改善は,テレビの一斉普及やダイニングの増築,浴室と便所の室内化にも示されているように,生計の変化を受け,限られた資金で,生活の利便性を重視しながら,時代と地域のある範囲における同等な付き合い,生活水準,生活環境,ステータスとある種の見栄等という自己と他者の同一性の影響を強く受けていると指摘できる.  そして,結論として,都市近郊農村住居の近代化は,住まい方の近代化,個室化やプライバシーの確保等の家庭生活の民主化,効率化だけで進展したのでなく,生活を取り巻く,家電製品を始めとする新しい生活用品の普及,社会構造の変容,生計と住宅改善資金の変化,さらには,地域における同等な付き合い,生活水準,生活環境,ステータスとある種の見栄等という自己と他者の同一性の保持と大きな関わりを持って進んできたといえる.続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 戦後の日本と改革開放後の中国における住居の社会的変化 第3章 日本における住居近代化の事例 福岡県筑紫郡那珂川町五ヶ山地区 第4章 中国における住居近代化の事例 南京市江心洲鎮永定村第二村民小組 第5章 日本と中国における住居近代化の比較 謝辞 付録 住生活の近代化の変容過程とその要因に関する調査票

本文ファイル

pdf k043-01 pdf 98.9 KB 499 表紙
pdf k043-02 pdf 1.00 MB 549 第1章
pdf k043-03 pdf 3.01 MB 342 第2章
pdf k043-04 pdf 2.93 MB 286 第3章
pdf k043-05 pdf 3.94 MB 306 第4章
pdf k043-06 pdf 553 KB 371 第5章
pdf k043-07 pdf 87.0 KB 271 謝辞
pdf k043-08 pdf 480 KB 267 付録

詳細

レコードID
査読有無
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
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部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2021.09.02

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