<博士論文>
バーチャルヒューマンのWebコンテンツへの適用に関する研究

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概要  近年、ナビゲーターやアドバイザーとしてバーチャルヒューマンをWebコンテンツへ適用する事例が増えてきた。ユーザーへの情報提供の為にWebコンテンツ上にバーチャルヒューマンを再現する際、ユーザーとの対話のプロセスを人対人との対話に基づいて再現することに加えて、声や動作また身体形状による人間らしさの再現性について考慮しながらバーチャルヒューマンの伝達性について検討する必要がある。
 本研究の目的は、情...報内容の伝達補助および人間らしさの再現という2つの観点からWebコンテンツに適用されるバーチャルヒューマンについて考察し、実際の運用を前提としたバーチャルヒューマンの制作および被験者の試用に基づく調査を通して、バーチャルヒューマンのWebコンテンツへの適用効果やユーザー属性毎の適用効果の違いを明らかにし、バーチャルヒューマンの情報伝達要素の役割を把握することである。
 第2章では、始めにバーチャルヒューマンのWebコンテンツへの適用の際のコミュニケーションモデルを提示した。次に、人がコミュニケーションで用いる要素を、扱う情報の種類や特徴などに基づいて音声、動作、表情、外見に分類し、これらを情報伝達要素とした。更に、個々の情報伝達要素は複数の成分によって構成されているものとした上で、バーチャルヒューマンの情報伝達要素の概念モデルを提示した。
 第3章では、バーチャルヒューマンの制作のための予備調査として、Webコンテンツに適用されたバーチャルヒューマンに関する現状調査を行った。この現状調査を通して、既存のバーチャルヒューマンの情報伝達要素の役割や適性について考察を行い、その後、現状に見られる問題点を踏まえた上で次章でのバーチャルヒューマンの制作課題を抽出した。
 第4章では、現状調査での考察に基づく各情報伝達要素の成分の検討を行った上で、円滑且つ確実な情報提供を目的としたバーチャルヒューマンの制作および博物館の情報提供システムへの適用を行った。この一連の制作過程を通して、制作したバーチャルヒューマンのWebコンテンツにおける役割や各情報伝達要素を構成する成分の詳細を明らかにした。
 第5章では、バーチャルヒューマンの有無についての比較調査として、制作したバーチャルヒューマン適用前と適用後の2種類のWebコンテンツの試用に基づく調査を行った。調査の方法は観察調査、質問紙調査、面接調査であった。
 観察調査では、ビデオカメラで被験者の閲覧時の様子を記録し、後に閲覧態度および閲覧時間を抽出した。これらの分析を通して、バーチャルヒューマンによる情報提供によって被験者の閲覧時間のバラツキが抑制され、Webコンテンツへの興味が向上することが確認された。
 質問紙調査では、2種類のWebコンテンツに対して、同一内容の質問(5段階評定尺度法、10項目)を行い、その後、内容の理解度についてのテスト(4択形式)を行った。またバーチャルヒューマンについての質問(5段階評定尺度法、12項目)を行った。Webコンテンツについての質問項目の結果から、被験者はWebコンテンツ上のバーチャルヒューマンを好意的に受け入れていたことが明らかになった。また女性や低年齢の被験者がより好意的に受け入れ、高い年代の被験者ほどバーチャルヒューマンを単なる情報理解のための補助として捉えることが明らかになった。内容の理解度に関するテストでは、バーチャルヒューマンによる情報提供によってWebコンテンツの理解度が向上することが明らかになった。また特に小学生においてその効果が顕著に見られた。最後に、バーチャルヒューマンについての各質問項目の得点を主成分分析し、音声への関心、人間らしさへの関心、動作への興味という被験者の評価軸を抽出した。また、クラスター分析を行い、被験者を「音声重視タイプ」、「ナビゲーター受容タイプ」、「ナビゲーター不要タイプ」に分類した。男性は音声重視タイプ、女性はナビゲーター受容タイプが多いことが明らかになった。また小学生はナビゲーター受容タイプが多く、年齢が上がるにつれて音声重視タイプが多くなることが明らかになった。
 面接調査では、得られた意見からバーチャルヒューマンに対する要求を明らかにし、それらを分類することで、理解補助の考慮、満足度への配慮、適用目的の明確化という設計要素を抽出した。また、得られた要求を情報伝達要素ごとに分類することで、個々の情報伝達要素に対するユーザーからの要求を把握することができた。
 最後に、比較調査の結果を総合的に考察した。先ず、バーチャルヒューマンの適用効果として、閲覧時間のバラツキの抑制、Webコンテンツへの興味の向上、理解度の向上が明らかになった。以上の効果が明らかになったことで、制作したバーチャルヒューマンによって円滑かつ確実な情報提供が実現したと言える。加えて、ユーザー属性による効果の違いが明らかになった。また、ユーザーとの対話のプロセスおよび人間らしさの再現という観点に基づいた各情報伝達要素の役割が明らかになった。以上の考察を通して、情報伝達要素の役割をバーチャルヒューマンの適用効果やユーザー属性の傾向を関連付けて把握することが出来た。
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詳細

レコードID
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
部局
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.16

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