<博士論文>
高齢者が居住する住宅の浴室・脱衣室環境とトイレ環境の実態と問題点

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論文調査委員
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概要  第1章では、本研究の目的と背景について述べ、本論文の構成について示した。わが国は、急速な高齢化と少子化の進行により、高齢者夫婦のみ世帯と単独世帯の割合が年々増加している。高齢者の家庭内における不慮の事故の割合も増加し、その中でも住宅に関わる事故として、浴槽内での溺死や同一平面上や段差でのつまずき、転倒が増加している。将来、高齢者が最期まで安心して生活するためには、安全で快適な生活ができる住まいが...重要になってくる。これまで、高齢者に配慮した住宅の開発・普及がなされてきた。旧建設省より、住宅の新築にあたっての設計の指針として、1995年に長寿社会対応住宅指針(推奨基準)が通達されて10年目をむかえるが、高齢者が居住する住宅の住環境の現状について調査されたものは多いとは言えない。そこで、高齢者にとって安全で快適な浴室・脱衣室環境や安心して排泄できるトイレ環境について実態を調査し問題点を明らかにすることを目的とし、福岡市、北九州市に在住する高齢者住宅の浴室・脱衣室環境、トイレ環境について質問紙調査と実測調査を行なった。  第2章では、高齢者が居住する住宅の浴室・脱衣室環境について安全性や快適性から実態と問題点を明らかにした。本調査対象者195名については、年齢別では後期高齢者が半数以上を占め、世帯構造別では、単独世帯と夫婦のみ世帯が56.5%を占めており、高齢者のみ世帯が多い現状である。  1)浴室・脱衣室環境と世帯構造の関係については、高齢者単独世帯ほど、推奨基準を満たしていないものが多く、設備面においても空調機器、非常設備などの設置率も低く問題点が明らかとなった。また、単独世帯と夫婦のみ世帯には、浴槽の形態は和式浴槽が多く、和式は、浴槽縁が高いため、湯をくみ出すことによる循環動態への影響や浴槽への出入り時に支障をきたすなどの問題点が考えられた。2)脱衣室がある住宅は92.8%で、ない住宅は7.2%であった。単独世帯の住宅の21.4%に脱衣室がないため浴室や台所などを代用していることが明らかになった。3)身長と浴室サイズとの関連については、身長が平均群より高い群は、推奨基準を下回っている場合において、不満がやや多くみられた。また、推奨基準の範囲にあっても不満がみられた。4)年齢別では、子供世帯と同居の後期高齢者世帯の住宅の方が、浴室・脱衣室のサイズ面、設備面で安全対策がなされていた。5)建築年数と改築との関連では、建築年数が古いほど改築率は高くなるが、単独世帯と夫婦のみ世帯は低い。改築率が低い理由として、現状に満足している反面、経済面が影響していることが示唆された。  第3章では、高齢者が居住する住宅のトイレ環境について安全性や快適性から実態と問題点を明らかにした。1)対象者の健康状態については、既往歴があり、現在も通院中、内服薬を服用中、体調不良があるものがほとんどを占めていた。トイレの使用回数には個人差がみられ、最も少ない4回から最も多い24回と大きな幅がみられた。就寝中のトイレの使用回数が後期高齢者ほど増加していた。寝室からトイレまでの距離が、約20mと距離が長いものが多数みられた。2)トイレの設備は、すべての世帯構造において空調機器、非常時の通報装置、手すりなどは低い設置率であった。3)世帯構造別にトイレサイズに顕著な差異はみられなかったが、推奨基準を下回るものは、トイレの間口、扉の有効幅、トイレの奥行であった。単独世帯は推奨基準より短く、狭いものが多かったため不満が多くみられたと推察された。排泄行為に伴う動作に必要なスペースが不満に影響することが示唆されたが、推奨基準内においても不満はみられた。4)年齢別では、前期高齢者のほうがトイレの奥行、洋式便座先端から前方の長さ、扉の有効幅が広く、長い傾向がみられた。手すりの設置率は24.9%と低いため、便器からの立ち上がり、移動行為の安全を補完するのに十分とはいえなかった。手すりの設置位置が推奨基準内に設置されているものは、不満がみられなかった。  以上のように、浴室・脱衣室環境およびトイレ環境については、サイズにおいて推奨基準を満たしていないものが多く、設備面においても空調機器、非常設備や手すりなどの設置率は低く問題点が多くみられた。浴室・脱衣室では、暖房機器の設置率が低いため、入浴前後に浴室や脱衣室に移動する時に寒冷に曝されることになる。また、排尿回数が多い高齢者は、夜間も数回寝室からトイレへの往復を繰り返すため、トイレまでの移動環境も含めて安全や快適性を検討する必要がある。事故を防ぐためには、すべての世帯において、高齢者の身体機能や生理機能に配慮した浴室・脱衣室・トイレのサイズや設備の改善が求められるが、高齢者単独世帯ほど改善が急がれる。また、推奨基準の範囲にあっても不満がみられたことから、高齢者の身体的問題だけでなく家族介護の有無、経済面などからの検討が必要である。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 高齢者が居住する住宅の浴室・脱衣室環境の実態と問題点 第3章 高齢者が居住するトイレ環境の実態と問題点 第4章 総括 引用文献 謝辞 巻末資料 浴室・脱衣室・トイレに関する調査票

本文ファイル

pdf k021-01 pdf 94.3 KB 445 表紙
pdf k021-02 pdf 751 KB 386 第1章
pdf k021-03 pdf 2.50 MB 438 第2章
pdf k021-04 pdf 1.98 MB 378 第3章
pdf k021-05 pdf 312 KB 359 第4章
pdf k021-06 pdf 572 KB 348 引用文献
pdf k021-07 pdf 86.3 KB 255 謝辞
pdf k021-08 pdf 488 KB 315 巻末資料

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.11

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