<博士論文>
特殊エッジ形状を持つ防音壁の遮音性能に関する研究

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要  本論文は,上端部に騒音低減装置を取り付けた防音壁の遮音性能について研究を行ったものである。  騒音対策の一般的な手段として,その伝搬経路への防音壁の設置があげられる。その防音壁の上端部に何らかの音響的な工夫を施すことで騒音低減効果を向上させる研究は,これまで多く行われてきた。その一例としては,エッジ部分の形状を変更したものや,吸音性や音響的にソフトな表面を持つ装置をエッジに取り付けたものがあげ...られる。本論文では,様々な特殊なエッジ構造を持つ防音壁について,それらの効果の関係やそのアイディアを組み合わせた場合の効果を調べる。  複雑な形状を持つ防音壁の遮音性能の予測は,境界要素法による数値解析によって行う。この際,一般的に用いられる吸音性境界表面で局所作用を仮定した解析手法に加え,多孔性吸音材の内部を損失のある音場として扱い外部音場と結合して解析する手法を用いる。論文中では,この解析手法について理論的背景と数値解を求めるまでの定式化を示す。解析の妥当性については,模型実験を行い確認した。また,境界要素を用いた音場解析には,特定の周波数で著しい解析誤差を生じる問題が知られている。この問題について,これまで提案されていた改善方法とは異なる,より導入が容易でかつ効果的な方法を提案する。結果的には音場内の散乱体内部に新たに境界を設けることでこの問題を回避できることが分かった。また,この手法を防音壁遮音性能の解析に適用し有効性を確かめた。  まず,防音壁遮音性能を向上させるために用いられる吸音体について,その内部構造が騒音低減効果に与える影響を調べる。現在音響的な役割りを持たない内部の中空な空間を有効利用し,吸音体の騒音低減効果を向上させることを目標として検討を進める。利用方法の一つとして,吸音体内部をグラスウールで充填することの効果を調べる。ここでは,中低音域における吸音体の吸音性能が向上し,防音壁の騒音低減効果を向上させることが分かった。また,吸音体に音響管を組み込み,吸音性表面とソフトな境界を合わせ持つ吸音体の効果を調べる。この際,防音壁背後における挿入損失の解析に加え,吸音体周辺における音響インテンシティ流を解析することで,音響管組み込みによるエネルギーの流れの変化も調べる。管長が1/4波長となる周波数では音響管の効果は大きいが,逆に効果が負となる周波数が存在することが確認された。これに対しては検討の結果,音響管周囲の吸音材を厚くすることで吸音体全体の効果が上り,負の効果を低減できることが分かった。また,音響管を音源側に傾けて組み込むことでも,吸音体を回り込むエネルギーを伝搬過程で吸収し負の効果を抑えることができた。道路交通騒音に対するオーバーオールでの効果をみると,グラスウールを充填することによる効果が最大1dB,音響管を組み込むことによる効果が0.6dBであった。これらを組み合わせた音響管を組み込み,その周囲の吸音材を厚くした吸音体では1.4dBの効果の向上が得られた。  次に,統一した環境において様々なエッジ形状,境界条件を持つ防音壁の遮音性能を評価,定量化しその比較を行う。この際,評価値△lLを基に遮音性能比較の図表を作成して比較検討に用いる。まず,理想的な境界条件を持つ様々な形状の防音壁の比較を行う。ここでは,境界条件の影響が形状の影響より顕著であることが明らかにされた。完全吸音性あるいはソフトな境界により効果が大きく向上するが,この場合には形状の影響は僅かであった。比較を行った中では,ソフトなT型防音壁が最も効果が大きく,高さ3mのT型防音壁が高さ10mの直壁と同等の効果を示した。また,既に実用化されているものを含めて実用型の特殊エッジを持つ防音壁の遮音性能についても評価値を求めその比較を行う。この中では,音響管を用いたソフトなT型エッジが高い効果を持つことが示された。また,異なる周波数特性を持つ騒音に対する評価値を比較し,騒音源の特性に合わせた特殊エッジの設計が重要であることを示した。  最後に,特殊エッジ形状を持つ防音壁の効果の簡易予測を試みる。防音壁の高さ,音源位置を変えて防音壁背後の広い領域で効果を算出し,その結果を基に効果の簡易予測式を導出する。吸音性エッジ及びソフトなエッジを持つ防音壁共に,伝搬経路差をパラメータとすることで,音源が見通せる領域および経路差の小さい領域では誤差1dB程度,防音壁による影の領域ではほぼ9割で安全側の予測が行える予測式を導くことができた。数値解析結果との比較により導出した予測式の妥当性を検討した結果,予測誤差1.0dB以内では約60%,1.5dB以内では約75%の予測精度であった。続きを見る
目次 目次  第1章 序論  第2章 境界要素法による音場の数値解析  第3章 吸音エッジ内部構造が防音壁遮音性能に与える影響  第4章 特殊エッジ形状を持つ防音壁の遮音性能比較  第5章 特殊エッジ形状を持つ防音壁遮音性能の簡易予測  第6章 総括  謝辞  付録A  参考文献

本文ファイル

pdf k089-01 pdf 71.0 KB 372 目次
pdf k089-02 pdf 228 KB 310 第1章
pdf k089-03 pdf 1.96 MB 383 第2章
pdf k089-04 pdf 1.83 MB 246 第3章
pdf k089-05 pdf 0.99 MB 317 第4章
pdf k089-06 pdf 562 KB 166 第5章
pdf k089-07 pdf 180 KB 154 第6章
pdf k089-08 pdf 40.3 KB 160 謝辞
pdf k089-09 pdf 221 KB 114 付録A
pdf k089-10 pdf 152 KB 141 参考文献

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2009.08.13
更新日 2020.11.11

この資料を見た人はこんな資料も見ています