<博士論文>
パナマ分水流域におけるメディアコミュニケーションについての調査研究

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概要  本論文は,11年前にパナマでスタートした政府の環境戦略である環境教育企画に貢献するためにメディアコミュニケーションを通じて環境破壊問題や環境保全に関する情報を農村地区へ効果的に提供できるような方法を検討し,提案することを目的とする。
 パナマ政府の環境戦略は認識や知識を基に住民の環境問題へのアプローチが変わっていくことを期待し,パナマ運河分水流域の住民に土壌や森林や水資源といった様々な環境問題に関...する知識を増やすため計画されたが,環境戦略の基本的な目的は,パナマ人にとって一番貴重な資源であるパナマ運河分水流域を保全することである。そのためには,パナマ運河分水流域内の農村地区の住民に理解と協力を求める必要がある。
 他の発展途上国と違い,メディアコミュニケーションについての研究や調査はパナマでは全く行なわれたことがない。本研究ではパナマで7ヶ月間に渡って,研究背景を得るために予備調査を,またより明確な情報を得るためにフィールド調査を行なった。
 予備調査では何のメディアが住民たちの間でよく使用されているか,またそのメディアのコンテンツは環境問題を取り扱っているのかという点について調査を行った。その結果1)住民が手にする環境に関する情報の殆どは農業企画や環境保全活動に関わっている環境団体を通じて届けられる。2)企画の計画に当たって,コミュニティーの組織が重要な役割を果たす。分水流域内で一番多くの情報を提供する環境保護団体はコミュニティーの組織化を必要条件として考えている。3)社会的や経済的な状況は教育資料の選択や媒体に影響を及ぼす。4)住民の数多くは一日少なくとも一時間ラジオを聞いているが,環境についての定期番組を放送するラジオ局はないことから住民のスケジュールは無視されがちであることがわかる。5)環境教育プロジェクトに基づいて行なわれる農業生産改善企画によって住民の分水流域問題への意識が強まり,プロジェクトへの参加希望が強くなる。その結果,パーソナルプリントメディアへのアクセスはしやすくなる。といったことが明らかになった。
 フィールド調査では1)コミュニティーの経済力に合ったコミュニケーションシステムの可能性を探る2)コミュニティーの間で普及しているマスメディアを調べ,そのコンテンツを把握する3)プロジェクトメンバーが持っているメディアコミュニケーションや教育資料についての知識レベルを確認する4)プロジェクトの終了後,保全活動が持続的に行なわれるために参考資料が必要とされるかどうかを確認するの4点についてアンケート調査を行った。その結果,1)郵便制度のないコミュニティーではミーティングや健康診断やその他の出来事を住民に知らせるには掲示板が必要である。2)一番人気のあるRPCテレビ,RPCラジオ,ラクリティカ新聞は運河分水流域での環境教育においては全く役に立たない。3)住民はパーソナルプリントメディアについてある程度の知識を持っている。しかし,それぞれの情報媒体の違いがわからない。4)住民自らがエコサステイナブルなプロジェクトを持続的に行なうために参考資料が必要とされる。といったことが人数や頻度といったデータから得られた。
 また,この数量的なデータを裏付けるために政府機関や非政府団体や国際財団に属する環境団体のメンバー6人を対象に,取材訪問を行なった。その結果1)地域の貧困を超え,環境教育宣言が住民に伝わるようにコミュニティーの組織化が欠かせない。2)コミュニケーションにおける全ての問題は使用されている資料の視覚的内容とそのアプローチから生じる。3)団体を繋ぐ効果的でダイナミックなコミュニケーションシステムが必要である。4)農村コミュニティーへ提供される参考資料は住民が自ら環境保全活動に携わることを促すためより,問題認識や知識を増やすために制作されている。ということが明らかになった。
 最後に今後の研究提案を行い,それらから予想される影響について考察を行った。特に,環境デジタルライブラリーの研究提案は,デジタルライブラリーを通じて環境団体と環境保全活動に興味を持つ個人が繋がり,今後の活動がよりスムーズに行なわれるように貢献できると考えられる。各団体がデジタルライブラリーへアクセスし,ある課題についてのコンセプトや資料のレイアウトのデータを使用することによって時間や手間の掛からない資料作成が可能になる。このように団体メンバーはそれぞれのコミュニティーの状況やニーズに合わせることだけに集中し,より効果的な資料を提供できる。そして,コミュニティーにより積極的に資料の内容について考えてもらうことも欠かせないため,このシステムを通じて,コミュニティーの意見を参考に制作することも可能となる。ということが考えられた。
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詳細

レコードID
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
部局
登録日 2009.08.13
更新日 2020.10.06

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