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概要 |
「情報映像」とは,主に情報の伝達を目的としている映像ジャンルを意味する。これは限定された時間に情報を的確に伝えるための効率的な画面設計が要求されるし,情報の受信者の反応を敏感に反映しながら常に新しい表現を追求していく分野である。情報映像における「画像設計」とは,時間軸との関連性を考慮しつつ画面上に理想的な2次元領域を計画的に構成することを意味する。情報映像の代表的な分野であるテレビCMは,メッセ...ージの明確な伝達のために,主な要素情報についてはフレーム単位の時間軸の設定と画面上の提示位置の設定まで,計画的な設計が必要な分野である。しかし画面上での要素情報の提示位置の設定と伝達効率との相関関係に関してはまだ多くの部分が明らかになっていない。従って,本研究は映像メディアによる情報伝達の方法論として,画面のアスペクト比(4:3および16:9),要素情報の提示位置,提示情報の属性(文字・図形),静的および動的視知覚などの複数条件の設定による情報伝達の効率を検証するための研究である。これは映像メディアによるコミュニケーションの効率性に関するアプローチであり,情報映像の媒体的役割の重要性およびその表現の特性をもとに,映像情報の「感知・認知・短期記憶」といった一連の伝達過程において,より効率的な伝達方法を探るための実験的研究である。 第1章では情報の映像化という社会的・文化的傾向と情報映像の代表的な分野の現状および進化的概念(内的進化と外的進化),さらに情報映像設計の必要性等を情報映像の概念として論じた。 第2章では情報映像の代表的分野であるTVCMを対象にして情報映像の固有の表現的特性に関する実例調査を行ない,その基本的な映像構造の一面を把握した(実例調査1~実例調査4)。 視聴者の視知覚を通して感知された刺激が「視覚情報」として習得される過程は,次の3つのレベルに分けられる。最初は,情報の提示状態が把握可能な「感知レベル」。次は,感知した情報の属性が把握可能な「認知レベル」。最後は,認知した情報の属性を短時間の間に記憶可能な「短期記憶レベル」である。このような情報の感知,認知,記憶という一連の流れに基づいて,次の実験を行なった(実験1~実験8)。 第3章では,情報の習得過程の第1段階として,映像刺激の瞬間的提示による視知覚の「感知レベル」を把握した。実験1では,視線が固視している状態で左右側に刺激を提示し,左右周辺視野の視知覚で感知可能な画角の測定とその閾値を求めた。実験2では,眼球運動状態でランダム提示された2箇所の刺激(文字刺激および図形刺激)に対して,被験者の瞬間的な「視線移動特性」を測定した。 第4章では,情報の習得過程の第2段階として,視聴者の視点と刺激の提示ポジションとの相関関係に基づいて「認知レベル」を測定した。実験3では,被験者の「固定視点と文字刺激」の相互位置的関係における各提示ポジションごとの閾値と認知率を測定した。実験4では,被験者の「移動視点と文字刺激」の相互位置的関係における各提示ポジションごとの閾値と文字認知率を測定した。実験5では,被験者の「移動視点と図形刺激」の相互位置的関係における各提示ポジションごとの閾値と図形認知率を測定した。 第5章では,情報の習得過程の第3段階として,視聴者の視点と刺激の提示ポジションとの相関関係に基づいて「短期記憶レベル」を測定した。実験6では,実験3の結果に基づいて,被験者の「固定視点と文字刺激」の同時提示パタンとの相互位置的関係における各提示ポジションごとの短期記憶率を測定した。実験7では,実験4の結果に基づいて,被験者の「移動視点と文字刺激」の同時提示パタンとの相互位置的関係における各提示ポジションごとの短期記憶率を測定した。実験8では,実験5の結果に基づいて,被験者の「移動視点と図形刺激」の同時提示パタンとの相互位置的関係における各提示ポジションごとの短期記憶率を測定した。最後の第6章では本論文の主な考察を総括した。 本研究により,視聴者の視線移動と情報の提示ポジションとの位置的関係における感知特性・認知特性・短期記憶特性が把握でき,視聴者の「視線位置」を基準にした最も伝達効率の良い「刺激の提示ポジション」が明らかになった。実験結果を通して把握した視知覚特性を考慮すると,テレビCMでよく見かける情報の提示ポジションの分散は,視聴者の注意力の分散を誘発し,またそれによる情報の認知力・記憶力の低下現象を招く可能性がある。このことは伝達の効果を低下させることを意味する。 結局,映像情報の提示ポジションの効果的な応用は,より効率的な伝達を支援する要素であることを把握した。伝達情報の「同時提示」といった必要不可欠な条件が頻繁に使われているテレビCMにおいて目的情報のポジション選定に関しては,視聴者の視線移動経路の観察や意図的な視線誘導の上で視知覚の特性を応用する必要がある。つまり,映像情報の効果的な伝達のためには,まず「アスペクト比の特性と画面上の提示ポジション別の視知覚特性」をよく理解し,次に「視聴者の視線移動の予測と意図的誘導」のための画面設計を行ない,最後はこれらの応用による情報の提示ポジションごとの伝達効率の調節が可能となる「一連の計画的な画面設計」が,今後さらに求められると考える。 続きを見る
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目次 |
目次
序 本研究の背景と目的
第1章 情報映像の概念
第2章 情報映像の構造的特徴に関する実例調査および分析
第3章 瞬間視知覚の測定に基づく映像情報の感知特性
第4章 瞬間視知覚の測定に基づく映像情報の認知特性
第5章 瞬間視知覚の測定に基づく映像情報の短期記憶特性
第6章 結論-情報映像の画面設計における応用要素の検討
謝辞
引用文献
参考文献
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