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概要 |
我々は、多くの技術発展の成果を享受し、時にはそれに依存した生活を送っている。その一方で、その副産物である環境破壊にも直面している。音に関する環境破壊は、飛行機、新幹線、乗用車などの騒音問題として表面化しているが、日常生活に用いる機械類の騒音はその利便性の影に隠されている。その反省から、その品質保証項目の1つに騒音の表示を追加することが始められている。 その表示には、音響エネルギーの総量を捕らえ...る方法(音響パワー)と耳の代用として捕らえる方法(音圧)の2通りが存在する。ヨーロッパでは、音響パワーと音圧の両方の評価方法によって法規制している(EU指令)。音響パワーは国内でも事務機器の分野を中心に自主的に利用され始めているが、その本格利用には至っていない。 また、音響パワー評価(単位時間当たりの音響エネルギー評価)は、騒音の影響を事前調査するためにも本質的な量であり、音をエネルギー保存則に従って測定する方法であるため、騒音対策の有効な指針を提供するものである。 一方、近年の音響計測における技術発展の一つとして、2マイクロホン音響インテンシティ法(以下音響インテンシティ法)が利用され始めている。これは、近接する2マイクロホンを用いて音圧勾配から音響インテンシティベクトルの方向成分を測定する技術である。この手法は、原理的に任意の音場で音響パワー計測を実施できることから、その本格的な利用が期待されている。 このような背景から、本研究は、音響インテンシティ法による音響パワー計測手法(以下本手法)が騒音を伴う一般的作業現場における有効な音響パワー評価方法であることを理論・実験の両面から実証し、本手法による音響パワー計測の各種の利用方法について述べる。 第1章の序論では、本研究の背景および動機として、音響パワー評価の重要性および現状における本手法の問題点を整理している。特に、現場用として本手法のスキャン測定が有望であることを強調する。 第2章の音響インテンシティ法音響パワー計測の理論では、本手法の理論的背景および周辺パラメータとの関連を説明している。また、本手法が特殊な環境を必要としないことおよび外部騒音の影響を受け難いことなど、その基本的特徴を通常の作業環境(静かな事務室など)において実験的に検証した。 第3章では、本手法の特徴の1つである外部騒音の影響について詳細に述べている。対象音源の周囲に存在する外部騒音の影響を調べるために、スキャン測定の空間配置・寸法、対象音源と外部騒音の信号の性質やそれらの振幅による影響を調べた。新しい知見として、対象音源および外部騒音が定常または周期的間歇音である場合には、外部騒音を相対的に5dB程度まで増加してもその影響はわずかであることが分かった。これによって、外部騒音の伴う現場における定量的かつ有効な音響パワー計測の適用範囲が一段と拡大された。 第4章では、本手法の重要な適用例として、音響パワーによる吸音効果の評価を述べている。音源の近傍に置かれた吸音材の効果を、新しく提案する評価方法で調べた。その方法は吸音効果を音響パワーの減少(吸音パワー)として評価するものである。これによって、音源と吸音材までの距離に依存した特徴的な音響パワーの減少を観察した。新たに得られた知見は、この評価法が適用条件に依存した吸音材の効果を適切に表すということである。 第5章では、本手法を発展させた応用例を述べている。建築材料や事務機器・家電製品の部材の遮音性能の評価手法である音響透過損失測定に、本手法を有効に利用できることを示した。本手法によるスキャン平均技術を対象の試料面積から透過音響パワーの計測に適用できる。その新規性として、小面積試料の遮音性能を評価するために、小型残響箱と併用することで事務室などの一般的な環境において500Hz以上の周波数において簡便に評価できることを示す。 第6章では、本手法による騒音対策への具体的な適用を述べている。騒音源の部分面積から放射される音響パワー計測による評価方法を示す。特に、本手法によって騒音の発生原因を明確にするためには、対象に近い測定面の利用が有効であることを示す。しかし、非常に近い測定面では、単純な実寸面積による音響パワー計測の精度は低下する。この問題に対して、音響パワーに対する実効面積による補正方法(等価な音響パワ?を得る実効面積の導入)を初めて提案し、その効果を実験的に確認した。 第7章では、本論文の結論を述べている。環境に左右される従来手法に代って、音響インテンシティ法が騒音を伴う一般的な作業環境において各種音響パワーの計測に有効に適用できることを理論・実験の両面から実証し、その限界を追求した。さらに、独自に考案した評価方法(吸音パワー、透過損失の簡易測定、実効面積による音響パワーの補正)は、音響パワー評価を中心とした騒音対策技術の評価に役立つものである。本研究の成果は、簡便かつ有効な現場用音響パワー計測手法の確立に寄与するものと信じる。続きを見る
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目次 |
目次 第1章 序論 第2章 2マイクロホン音響インテンシティ法の特徴 第3章 音響インテンシティ法音響パワー計測における外部騒音の影響 第4章 音響インテンシティ法音響パワー計測による吸音効果の評価 第5章 音響インテンシティ法による透過損失測定 第6章 音響インテンシティ法による音響パワー計測の応用例 第7章 結論 謝辞 参考文献
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