<博士論文>
Shape Memory Alloy Motion Displayによる生物をモチーフにした実体ディスプレイの表現

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要 本研究は、光の集合である映像ディスプレイには不可能な、実体のモノの動きの集合によって表現を行う装置を扱うものである。この実体のモノである構成要素を持ち、情報提示や表現を行う装置は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションの研究分野では実体ディスプレイと呼ばれており、近年注目を集めている。実体ディスプレイは素材や機能も様々なものがあるが、共通する特徴として、映像ディスプレイのように解像度の高い情報...表示を目指すのではなく、構成要素である素材の特徴を生かした装置になっていることが挙げられる。そして、この構成要素が持つ実体の動きと存在感、さらにはそこから生まれる表現を生かすことが重要だと考える。このことは、本研究の実体ディスプレイを考える上で重要な視点であり、本研究ではこの表現に焦点を当てて議論を行った。本研究で提案するShape Memory Alloy Motion Display(以降SMD)は、構成要素に形状記憶合金アクチュエータを採用した実体ディスプレイのコンセプトであり、草木が風に揺れる様子やイソギンチャクの触手が波間に揺れる様子にインスピレーションを受けて発想したものである。このような現実世界の表現を取り入れ、実体の存在感を生かした「葉群のざわめき」や「触手の蠢き」の表現を実現することで、鑑賞者に対してインパクトのあるディスプレイ装置が可能になると考えた。本研究では、このSMD を応用した3 つのインタラクティブアート作品を制作した。そして、その制作過程においてSMD の技術開発を行い、作品展示による鑑賞者からの評価を通して、その表現の可能性について考察を行った。1 つ目の作品、植物型ロボット「Himawari」では、このSMD をロボットの表情を生み出すために利用した。花部分に、SMD の形状記憶合金アクチュエータによって駆動する68 個の触手と12枚の花びらを取り付け、触手の蠢きと花びらの揺らめきの表現を実現した。形状記憶合金アクチュエータの駆動源には、独自に開発した形状記憶合金線材を用いている。2つ目の作品「plant」では、Himawari と同じ形状記憶合金線材を用いて、葉をデザインした形状記憶合金アクチュエータを開発した。169 個の葉の動きに加えて、音響効果を用いることで幻想的な空間を演出し、鑑賞者に対してインタラクティブに反応する葉群のざわめきの表現を実現した。3つ目の作品「Tentacles」では、Himawari とplant で用いた形状記憶合金線材とは異なるバイオメタルファイバーを用いて形状記憶合金アクチュエータを開発した。このアクチュエータの動きと先端の光、音を連動させて、インタラクティブに反応するイソギンチャクの触手の蠢きの表現を実現した。以上のSMD を応用した作品制作と展示による鑑賞者の評価をもとに、表現とその可能性について考察した。それぞれの作品展示による鑑賞者の評価から、作品表現やアクチュエータの動きには高い興味と驚きを示す感想が得られた。また、全ての作品に対して「生命感を感じる」との感想を得た。これらの感想から、SMD の構造を用いて、作品表現として創作した「花びらの揺らめき」「触手の蠢き」「葉群のざわめき」という表現が、鑑賞者の持つ生物や自然の情景を喚起させ、そこに生物の存在感を生み出したと言うことができる。そして、これらの作品制作の過程でSMD の技術開発を行ってきた。SMD の構成要素である形状記憶合金アクチュエータに関して、Himawari とplant での課題であったアクチュエータの駆動速度の遅さは、Tentacles の制作において、駆動源の形状記憶合金線材にバイオメタルファイバーを選択することで改善することができた。さらに、「葉群のざわめき」や「触手の蠢き」のように、アクチュエータの外装のデザインを変更することで、SMD によって異なる表現が可能であることも示された。また、3 つの作品に用いた画像解析プログラムと電圧制御回路を含む制御システムは、その基本原理は同じものである。この制御システムは、理論上制御できるアクチュエータの数に制限はなく、多数のアクチュエータを利用した解像度の高い表現も可能である。以上の作品制作を通した形状記憶合金アクチュエータと制御システムの開発により、SMD を実現するための基盤技術を確立することができた。今回の研究では、SMD の実体ディスプレイとしての機能の一つである情報提示については取り扱わなかった。アクチュエータの数を増やすことによってSMD で情報提示を行うことが可能になると考える。この情報提示も含めたSMD の応用には、実体の表現を生かしたデジタルパブリックアート、情報提示機能を利用したデジタルサイネージ、環境に溶け込んだ情報提示を行うAmbientDisplay 、アクチュエータに触知覚センサーを付加することで可能になるTangible User Interface、ロボットの表層デザイン、テーマパークの動くパペットが考えられ、表現と情報提示の融合した新しい情報環境デザインやメディア表現の可能性が広がっていくことが予想される。続きを見る
目次 第1章 序論 第2章 Shape Memory Alloy Motion Display(SMD) 第3章 Himawari : 向日葵をモチーフにした植物型ロボット 第4章 plant : 葉群がざわめくインタラクティブアート作品 第5章 Tentacles : 触手が蠢くインタラクティブアート作品 第6章 考察 第7章 結論

本文ファイル

pdf design146 pdf 22.9 MB 2,315 本文
pdf design146_abstract_ja pdf 105 KB 392 要旨(日本語版)
pdf design146_abstract_en pdf 51.1 KB 287 要旨(英語版)

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
注記
登録日 2013.06.28
更新日 2023.11.21

この資料を見た人はこんな資料も見ています