<博士論文>
薄肉タンク構造の流体構造連成振動の特性とその予測法に関する研究

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概要 船舶の機関室周辺タンクや、衛星などに搭載される燃料タンクなどは過酷な振動環境下に置かれており、共振を回避するための設計が不可避である。船舶の機関室周辺タンクは、運転中常時主機やプロペラに起因する振動環境下にあり、一旦共振すると非常に多くの繰り返し数で高応力が発生することとなり、疲労亀裂が発生して大きな問題となる。また、衛星に搭載される燃料などのタンクは、寸法に比して薄肉構造になっているが、打ち上げ...時に発生する激しい振動に耐えうる構造となっていなければならない。機関室周辺タンクは主に角型、衛星タンクは球形をしていることが多いが、これらのタンクが満液に近い状態での最低次の振動モードはいずれもタンク全体が膨張、収縮を繰り返すような「呼吸モード」であり、振動数が低くなるため問題となってきた。本論文は、まず現状のタンク振動問題を概説した上で、タンクの流体構造連成振動挙動を解明し、これを予測するために実施した研究についてまとめたものである。本論文は以下の8章から構成されている。第1章では本論文の背景と目的、および本論文の構成と概要を示した。第2章では、本論文で主に取り扱うタンク形式と、既存のタンク形式に関する振動挙動の違いを述べた。矩形タンクは主に船舶で用いられており、呼吸モードに起因するトラブルが依然発生しているため、これを防止するための研究が必要である。球形タンクは主にスロッシング挙動に関する研究が行われている他、殻との連成を考慮した振動挙動の研究も一部実施されているが、液位が振動挙動に与える影響や、振動メカニズムの考察が十分されているとは言えない。各種タンクの振動挙動に加え、次章以降のタンクの振動解析に用いる解析手法の概要を説明した。第3章では、薄肉の球形タンクの振動挙動を確認するために、試験とFEM計算により検討を行った。タンク上部が大気に開放されている場合は、液位の上昇に伴い固有振動数が急激に減少することが試験で確認され、計算でも再現できた。液面が満液に近い時のタンク最低次の振動モードは、タンク全体が膨張・収縮を繰り返すモードであり、固有振動数が低くなっている。また、自由液面上方の空気層が大気と遮断されている場合には、空気の圧縮性に起因して液面が大気に開放されているときと異なる挙動をすることを明らかにした。第4章では仮想質量法を利用した汎用FEM解析ソフトウェアによる実船タンク構造の呼吸モード振動解析について述べた。実船を想定したFEM解析の結果から、タンク内の流体液位が50%以上の場合、タンク壁全体が内側及び外側に同位相で振動する「呼吸モード」の現象が最低次固有振動数で発生することが確認できた。対象としたタンクは防撓形式、アスペクト比、大きさなど様々なものであるが、FEMによる検討により「呼吸モード」はほとんどのタイプのタンクで発生しうることを明らかにした。第5章では、タンクの共振回避のために有効であると考えられる、水平有孔仕切り板を有するタンクの挙動を試験と計算で調べた。仕切り板の無いタンクでは、液位の変化に対して固有振動数が滑らかに変化するが、有孔仕切り板を持つ多段タンクでは、液位を連続的に変化させたときに、液面が仕切り板を通過する前後において1次固有振動数が不連続に変化する。また、開口サイズが小さい方が、付加質量効果が大きくなり固有振動数が低くなる。これらの振動特性を利用したタンクの共振回避設計のフローを提案した。第6章では、密閉されたタンクでの空気の圧縮性が振動挙動に与える影響について述べた。タンク内の空気が大気に開放されている場合には、タンク液面の圧力を零と考えて解析を行って問題ないが、タンクが密閉されている場合には空気の圧縮性により、タンクが大気に開放されている時とは異なった挙動をする。この挙動を解明するため、密閉された空気量を調整できるようにしたタンクの振動試験と、空気を模擬したFEM解析を実施した。その結果、最低次の固有振動モードは密閉時と大気開放時でほぼ等しいが、密閉時の方が固有振動数が高くなっている。密閉時は空気の圧縮性により液面の圧力変化が生じ、空気が付加的なばねとして作用し、振動数が高くなっていることを明らかにした。第7章では、高減衰接水タンク構造の減衰予測手法について述べた。従来実施されている固有振動数回避による設計では、合理的な設計が難しい場合が多く、振動応答設計が望まれる。また、簡単な構造で効果的に減衰を付加する構造が採用できれば、共振時でも応答を抑えることができる。本研究では流体による減衰が期待できる水平仕切り板を有するタンク構造を対象として減衰比を試験的に取得した。試験により、水平有孔仕切り板がタンクの減衰を大きくする上で効果があることや、減衰比が開口率や振幅への依存性があることを確認した。また、CFDや簡易式による減衰の簡易推定法を提案し、上記の傾向を再現できていることが確認できた。第8章では各章のまとめと結論を述べた。続きを見る
目次 第1章 緒言 第2章 各種タンク構造の振動挙動および解析方法 第3章 薄肉球形タンクの振動挙動 第4章 仮想質量法を利用した汎用FEM解析ソフトウェアによる実船タンク構造の呼吸モード振動解析について 第5章 水平有孔仕切り板を有する角型タンクの振動 第6章 密閉されたタンクでの空気の圧縮性が振動挙動に与える影響 第7章 高減衰接水タンク構造及びその減衰予測手法 第8章 結論

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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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