<博士論文>
窓ガラス清掃ロボットに関する研究

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要 高所など危険な場所での清掃作業は,作業者の安全確保や負担軽減,また作業コストの低減などのため,機械による作業の自動化が強く望まれていた.一方,同じ清掃作業でも,床面清掃作業は機械化・ロボット化が比較的容易であったために,すでに家庭用掃除ロボットなどで自動化・実用化がなされている.しかしながら,高所作業を含むビルの窓ガラス清掃作業においては,一部の大型自動清掃装置を除いて,機械化・ロボット化がほとん...どなされていないのが現状である.実用化が進んでない理由として,多様なビル壁面に適用可能な自動清掃装置を開発することが困難なこと,鉛直で汚れた窓ガラス面に清掃装置を位置づけながら確実に清掃することが容易でないことなどが考えられる.これらの問題を克服し,ビル窓ガラス清掃ロボットの実用化が進めば,これまで発生していた作業者の落下による死亡事故などの労働災害を無くすことができ,また,作業コストの低減も期待できる.そこで本論文の第1章では,既に実用化されている大型窓ガラス清掃ロボットと研究開発中の小型窓ガラス清掃ロボットについてそれぞれの問題点を検討し,小型自走式ロボットによる窓ガラスの確実な清掃を本研究の目的とすることを述べた.次にロボットによる窓ガラス清掃作業を実現するために必要な5つの機能について検討した.1つ目は,ロボットを窓ガラスに取り付ける機能であり,一般的なビル壁面のすべての窓ガラスにロボットを自動的に位置づけることは困難なことを示した.そこで,本研究開発では開閉式の窓ガラスを清掃対象とし,人がロボットを取り付けて,窓ガラス一枚を自動清掃する機能に限定することとした.2つ目は,鉛直なガラス面上を落下せずに安定して移動する機能であり,この機能の実現のために従来提案されている機構の比較を行い,磁石吸着方式による吸着機構と二輪独立駆動型による移動機構の組み合わせが,自走式窓ガラス清掃作業に適していることを示した.3つ目は,汚れたガラス面を確実に清掃する機能であり,この機能の実現のために従来提案・比較されている手法を踏まえて,水を含ませたスポンジとスクイジをガラス面に押し付けながら引く清掃機構を採用することとした.4つ目は,鉛直なガラス面全体を確実に移動する機能であり,この機能を実現するために第2章で窓ガラス清掃ロボットを含む壁面移動ロボットの軌道追従制御法を新たに提案した.5つ目はガラス面の汚れを検出する機能であり,この機能を実現するために第3章で窓ガラス汚れ検出センサを新たに提案した.第2章では,小型窓ガラス清掃ロボットが鉛直なガラス面全体を確実に移動する機能を実現するために,第1章での議論を踏まえて,重力とその他の影響を逆動力学計算により補償する二輪独立駆動型壁面移動ロボットの軌道追従制御法の提案をおこなった.まず,重力とその他の動力学の影響を逆動力学計算により補償するために,壁面移動ロボットの動力学式を求めた.次に,その動力学式を用いてロボットの姿勢情報だけでなく位置情報も用いた軌道追従制御法を提案した.また,提案手法による目標軌道への漸近安定性をリアプノフの安定定理を用いて示した.そして,提案した軌道追従制御法を窓ガラス清掃ロボットに適用するために必要な位置・姿勢の情報を,窓枠位置情報を利用して得る方法を提案した.さらに,実際の窓ガラス清掃ロボットを用いた実験により,従来の姿勢制御のみによる手法では困難であった目標軌道での水平方向への直進が,提案手法によって可能となることを示した.また重力とその他の動力学の影響を補償することにより,目標軌道への収束性が向上することも示した.以上により,窓ガラス全面を少ない重複の軌道で移動可能な水平パラレル動作軌道をロボットが追従することが可能となることを示した.清掃機構を備えた自走式ロボットが窓ガラス全面を確実に移動できたとしても,実際に窓ガラスを清掃できているかは確実とは言えない.従って,ロボット自身が窓ガラスの清掃状況を確認しながら清掃動作をおこなうことが望ましい.そこで第3章ではロボットがガラス面の汚れをオンラインで検出する機能を実現するため,ロボットに搭載可能で客観的な汚れ検出方法を用いた,窓ガラス汚れ検出センサの提案を行った.そのために,まず,本論文で検出対象とする窓ガラスの汚れについて検討した.次に,小型窓ガラス清掃ロボットへの搭載を考慮して,それらの汚れを検出するためのオンライン汚れ検出方法を提案した.本手法は発光部と受光部を用いて,汚れの程度によって変化する窓ガラスからの反射光量を測定することにより汚れを検出する.そして,提案した汚れ検出法を用いた窓ガラス汚れ検出センサを提案した.このとき,環境光の影響を除去する方法も示した.さらに,本センサを搭載したロボットが,汚れを落とせなくなるまで移動を繰り返すことによって,落とすことが可能な汚れを確実に清掃するためのロボット動作制御手法を提案した.また,提案する方法によって,ロボットが窓ガラスの清掃状態の評価を確実に行うためのセンサシステムの設計条件を示した.提案する窓ガラス汚れ検出センサを実際に開発して,汚れの定量評価として実績がある拭い取り法との比較を行い,窓ガラスの汚れを検出可能であることを実験により示した.また,本センサを窓ガラス清掃ロボットに搭載して,提案する方法によって,ロボットが落とすことが可能な汚れを確実に清掃できることも実験により示した.第4章では,各章の結論を要約して述べた.また,窓ガラス清掃ロボットに関する残された課題について議論し,実用化のための将来展望を述べた.続きを見る
目次 第1章 はじめに 第2章 壁面移動ロボットの軌道追従制御法 第3章 窓ガラスの汚れ検出 第4章 おわりに

本文ファイル

pdf eng2067 pdf 13.2 MB 4,416 本文
pdf eng2067_abstract pdf 144 KB 598 要旨

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
注記
登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

この資料を見た人はこんな資料も見ています