<博士論文>
シェーグレン症候群とミクリッツ病の病態形成におけるThサブセットの関与に関する研究

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概要 シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)は、唾液腺や涙腺などの外分泌腺が特異的に障害を受ける臓器特異的自己免疫疾患である。導管周囲へのリンパ球浸潤を特徴とし、さらに病態進展とともに胚中心(germinal center:GC)を形成することもあり、様々な浸潤様式を呈する。SSの発症や病態進展の機序についての詳細は不明な点が多いが、ヘルパーT(Th)細胞の産生するサイトカイン...の関与が報告されている。そこで、本研究では第一に、自己免疫疾患に重要な役割を果たすといわれているThサブセットが産生する特異的なサイトカインおよび転写因子に着目し、SS患者の口唇腺(labial salivary gland:LSG)におけるこれらの分子の発現について検討した。さらに、病態進展のメカニズムを解析するために、Laser Capture Microdissection(LCM)を用いて同一患者の浸潤様式の異なる部位を分離採取し、Thサブセットの発現と局在について検討を行った。一方、ミクリッツ病 (Mikulicz' disease:MD)は、涙腺や唾液腺の腫脹を特徴とし、病理組織学的類似性からSSの一亜型として認識されてきた。しかし近年、MDに高免疫グロブリン(Immunoglobulin:Ig)G4血症や腺組織へのIgG4陽性形質細胞の浸潤が認められることから、MDはSSと全く異なった機序で生じる疾患であることが示唆されている。また、MDのもう一つの特徴として、腫脹した腺組織におけるGCの形成がSSより高頻度に認められることが挙げられる。最近の報告では、一般にGC形成にはTfhが産生するIL-21が必須とされており、さらにIgG4へのクラススイッチにも関与するといわれている。そこで、本研究では第二に、MD患者のLSGにおけるIL-21の発現を検索し、GC形成やIgG4産生との関連について検討を行った。以下に本研究で得られた結果をまとめた。1.SS患者のLSGおけるThサブセットの発現と局在の検討 SS患者54例と健常者16例を対象とした。real-time polymerase chain reaction(PCR)法を用いてTh1、Th2、Th17、regulatory T:Treg、およびfollicular helper T:Tfh特異的なサイトカインおよび転写因子についてmessenger RNA(mRNA)発現を検討したところ、SS患者のLSGでは健常者と比較して、全てのThサブセット関連分子の発現が亢進していた。また、SS患者をリンパ球の浸潤程度で軽度と重度の2群に分け比較したところ、重度ではTh2関連分子(IL-4、GATA binding protein 3:GATA3)およびTfh関連分子(B cell lymphoma-6:Bcl-6)の発現が亢進していた。次に病態進展のメカニズムを解析するために、同一患者での導管周囲の病変局所とGC形成部におけるThサブセットの発現を比較検討した。SS患者54例のうち、LSGの新鮮結切片においてGCの形成が認められた8例を対象とした。新鮮凍結切片において導管周囲に浸潤しているリンパ球をGC(-)とし、GCおよびGC周囲のリンパ球をGC(+)として、それぞれLCMを用いて分離採取した。同一患者でのGC(-)とGC(+)の2群においてreal-time PCR法を用いて、Thサブセット関連分子のmRNA発現を検討した。その結果、Th1関連分子(interferon-γ:IFN-γ、IL-12、T box transcription factor:T-bet)およびTh17関連分子(IL-17、retinoic acid-related orphan receptor C2:RORC2)の発現は、GC(-)で亢進していた。一方、Th2関連分子(IL-4, GATA3)およびTfh関連分子(IL-21、Bcl-6)の発現は、GC(+)で亢進していた。Treg関連分子については、両群間で有意な差は認めなかった。免疫組織化学染色でも同様に、IFN-γおよびIL-17はGC(-)に、IL-4およびBcl-6はGC(+)に強く発現していた。また、forkhead box p3(Foxp3)の発現は、両群間で明らかな差は認められなかった。2.MD患者のLSGにおけるGC形成とIgG4産生に関わる分子の検討 MD患者12症例、SS患者15症例、健常者15症例を対象とした。検討したMDは、全症例LSGのリンパ球浸潤程度が重度であるため、比較対象としたSSは、全て重度の症例を選択した。まずreal-time PCR法を用いて、Tfh関連分子(IL-21、Bcl-6、CXC chemokine receptor:CXCR5)について検討を行った。その結果、すべてのTfh関連分子の発現は、SSおよびMDとも健常者と比べて有意に亢進していた。また、免疫組織化学染色にてそれらの局在をみたところ、SS患者ではすべてのTfh関連分子は、GCのみに強く発現していた。一方MD患者では、Bcl-6およびCXCR5は、SS患者と同様にGCに強く発現していたが、IL-21はLSG全体に強い発現を認めた。つまり、MDにおけるIL-21産生細胞はTfhの他にもある可能性が示唆された。IL-21は主にTfhが産生するといわれているが、その他にもIL-21産生能を有するとの報告があるTh2およびTh17についても、同様の検討を行った。その結果、MDでは、免疫組織化学染色にてTh2関連分子(IL-4、CC chemokine receptor 4:CCR4、c-Maf)は、IL-21と同様にGCだけでなくLSG全体に強い発現を認めた。一方、Th17関連分子(IL-17)は、ほとんど発現を認めなかった。また、MDのIgG4産生とIL-21との相関をみたところ、IL-21のmRNA発現量は、IgG4のmRNA発現量およびIgG4陽性細胞率と正の相関を認めた。研究1.より、SS患者の唾液腺ではThサブセットの局在が認められ、Th1およびTh17が導管周囲に集積することでSSの発症に関与し、Th2およびTfh が集積することで病態の進展、特にGCの形成に関与していることが示された。また研究2.より、MD患者の唾液腺ではTh2を主体とするIL-21の産生により高頻度にGCが形成され、IgG4へのクラススイッチが誘導されることが示唆された。続きを見る
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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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