<博士論文>
抗Dkk1抗体は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路を介してアルカリフォスファターゼの発現を促進する

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概要 Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路は、骨芽細胞の分化に重要なシグナルである。Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の阻害分子の1つに、Dickkopf1(Dkk1)がある。Dkk1の発現が減少すると、骨量が増加することが報告されている。Dkk1の中和抗体である抗Dkk1抗体が、骨芽細胞の数を増加させると同時に、破骨細胞の数を減少させることで多発性骨髄腫などの溶骨性の骨病変の治療に効果的であると前臨...床試験において示されている。しかしながら、抗Dkk1抗体が骨芽細胞の分化や遺伝子の発現に及ぼす影響については明らかとなっていない。そこで、本研究では、骨芽細胞様細胞株であるMC3T3-E1細胞およびSaOS-2細胞を用いて、抗Dkk1抗体が骨芽細胞の分化および骨形成に及ぼす影響について、骨芽細胞分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ(ALP)の発現への影響について、さらにラット脛骨に作製した骨欠損部においての抗Dkk1抗体の効果について検討した。抗Dkk1抗体は、骨芽細胞の増殖には影響しなかったが、ALPの活性、ALPのmRNA・タンパク質の発現を増加させた。ALPと同じく骨芽細胞の分化マーカーであるオステオカルシン(OCN)、runt-related transcription factor 2(Runx2)も、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の標的遺伝子に含まれているが、抗Dkk1抗体は、OCN、Runx2の発現も増加させた。さらに、抗Dkk1抗体は骨芽細胞の石灰化を促進させた。また、抗Dkk1抗体は、β-カテニンの発現、T-cell-specific transcriptional factor 7-like 2(TCF7L2)の発現、TCF転写活性を増加させた。このことから、抗Dkk1抗体の添加により、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路が促進されることが示唆された。さらに、抗Dkk1抗体はT-cell factor(TCF)結合部位を介してALPプロモーター活性を増加させ、ALPの発現を増加させることが明らかとなった。次に、Dkk1 siRNAを導入してDkk1の発現を抑制した。Dkk1 siRNAは、抗Dkk1抗体と同様、コントロール群のALPプロモーター活性を増加させた。Dkk1 siRNAとともに抗Dkk1抗体を作用させても、さらなるALPプロモーター活性の増加は認められなかった。以上の結果から、骨芽細胞分化において、Dkk1の阻害は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路を促進し、ALPの発現を増加させること、また、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路を介したALPの発現は、Dkk1によって抑制され、骨量の恒常性が維持されていることが明らかとなった。 さらに、ラット脛骨に作製した骨欠損部において、局所投与した抗Dkk1抗体が、新生骨の形成を促進させたことから、抗Dkk1抗体の骨形成への効果が確認された。したがって、抗Dkk1抗体は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達経路の活性化薬、すなわち骨再生薬としての可能性が示唆された。続きを見る
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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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