<博士論文>
過剰歯幹細胞の再生医療学的応用に関する研究

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概要 近年、自己複製能と多分化能を有する骨髄間葉系幹細胞(bone marrow mesenchymal stem cells;BMMSC)がT細胞の増殖を抑制することが見いだされた。以来、BMMSCを用いた組織工学的組織置換療法のみならず免疫学的細胞治療に関する基礎的・臨床的研究が集学的に行われてきた。現在、BMMSCを応用した再生医療は実現へ大いに期待が寄せられている。一方、細胞源としてのBMMSC...はドナーの年齢や細胞活性、採取時の障害など必ずしも優れた細胞源とは考えられてはいない。本研究では、臨床的に破棄されるヒト正中過剰歯を細胞源として注目し、ヒト正中過剰歯の歯髄組織より単離したヒト過剰歯幹細胞(stem cells from supernumerary teeth;SupSC)の生物学的および免疫学的特性をin vitro/in vivo実験系で解析し、再生医療への有用性を検討した。in vitro実験系にてSupSCは付着性コロニーを形成した。さらに象牙芽細胞/骨芽細胞や脂肪細胞、神経細胞や内皮細胞などの中胚葉、外胚葉、内胚葉系の細胞に分化する多分化能を備えていた。異種皮下移植実験法でSupSCは象牙質/歯髄複合体のみならず骨/骨髄コンポーネントを再生した。また連続的移植実験法においても象牙質/歯髄複合体を形成したことから、SupSCが自己複製能を有していることが明らかとなった。末梢血単核細胞との共培養実験より、SupSCはT細胞の増殖抑制効果を示した。さらに調節性T細胞の分化誘導を促進し、IL-17分泌型ヘルパーT細胞(Th17)の分化誘導を抑制した。従って、SupSCはMSCに類似した幹細胞ポピュレーションであると同定された。次に、SupSCを応用した細胞療法学的治療効果について検討した。病態MRL/lprマウスを使用し、MRL/lprマウスにSupSCを経静脈的に全身投与した。MRL/lpr マウスは、ヒト全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)に類似した症状(寿命の短縮や血中自己抗体濃度の上昇、糸球体腎炎による腎機能障害、Th17細胞の増加による免疫破綻)を呈していた。SupSC投与によりこれらのSLE様症状は改善し、マウスの寿命の延長も認められた。また、MRL/lprマウスでは骨粗鬆様骨障害も伴っていたが、SupSC移植MRL/lprマウスでは、骨組織において骨芽細胞による骨形成を活性化し、また破骨細胞による骨吸収に抑制的に働くことで、減少していた骨塩量および骨梁が著しく改善されていた。正常マウス骨髄由来のBMMSCと比較して、MRL/lprマウスの骨髄より単離したBMMSCでは、間葉系幹細胞学的特性(細胞増殖能、in vitro骨形成能、免疫調節能など)が障害されていることが知られている。MRL/lprマウスのBMMSCと比較して、SupSC移植レシピエントMRL/lprマウスのBMMSCの間葉系幹細胞学的特性を検討したところ、高い細胞増殖能やin vitroでの骨形成が亢進していた。また免疫不全マウスでの皮下移植実験では、SupSC移植レシピエントBMMSCの移植体内部では骨形成ならびにニッチ形成が増加していた。また、MRL/lprマウスBMMSCと比べて、SupSC移植レシピエントBMMSCではin vitro造血誘導作用およびin vitro免疫調節能も促進されており、レシピエントBMMSCにおける組織構築機能の増強が認められた。次に、この移植レシピエント由来BMMSCをMRL/lprマウスに全身投与したところ、非移植群レシピエントBMMSCと比較して生存期間の延長ならびに血中自己抗体濃度の減少や腎機能に改善が認められた。また、MRL/lprマウスより単離したT細胞を養子細胞移植した免疫不全マウスでは、非移植レシピエントBMMSCを投与した養子移植マウスと比べて、SupSC移植MRL/lprレシピエントBMMSCを投与した養子移植マウスの生存期間が延長していた。したがって、SupSC移植の治療効果は、少なくとも、レシピエント側のBMMSCのニッチ再構築機能を活性化することで免疫状態を調節している可能性が示唆された。これらの研究成果より、SupSCは間葉系幹細胞に類似した幹細胞ポピュレーションであり、SLEのような免疫疾患に対する細胞治療に有用な細胞源であることが示唆された。続きを見る
目次 1. 要旨 2. 緒言 3. 研究Ⅰ : ヒト正中過剰歯歯髄からの幹細胞の単離とその特性解析 4. 研究Ⅱ : 過剰歯幹細胞移植による免疫療法の解析 5. 考察 6. 総括 7. 謝辞 8. 引用文献

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登録日 2013.07.10
更新日 2023.11.21

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