<博士論文>
防長市町の空間・建築・機能に関する研究 : 佐々並市・明木市・鹿野市を題材として

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概要 近世の都市は城下町のほかに門前町・港町・宿場町・市町といった在方の都市より構成される。在方の都市は機能別に分けて捉えられているが、市町以外にも市立てを行う町があり、宿場町以外にも宿がある町があり、その機能は多様で複合的である。近年城下町と対比してこれらを一括して在方町として捉え、総合的に空間と社会を捉える視点が提示されている。在方町のうち特異な存在である門前町と港町はこの観点からの研究が進み、その...実態が明らかになりつつあるが、それ以外の宿場町や市町については必ずしも明らかでなく、一般的に市町は商業機能に特化した町、宿場町は宿駅機能に特化した町として捉えられがちである。近年市町に関しては、杉森玲子氏により、路上で交換する「市」における売買、常設店舗たる表店を構える見世売りの集合である「町」における売買、商人を泊める「宿」における売買、という3つの売買の形態が示され、商業機能を考える上で重要な視点が提示された。しかし前述した通り、市町に関する研究は商業機能に着目しており、なかでも市立てが遅くまで残ったとされる東国の題材が多く、市立てが早く衰退したとされる西国の研究は少ない。西国の市町である防長の市町について小林健太郎は、文献史料にみえる「市」が語尾に付く多くの小名(字)の存在から、漫然と定期市が開かれたと解釈され、多くの市町が成立したとされるが、その実態は判然としていない。防長の市町の中には、街道沿いに立地する市町もあることから、宿駅機能に特化した市町や定期市が開かれることから商業機能に特化した市町もあると考えられ、これらの両方が備わった市町もあると考えられる。本研究は、防長の市町における空間と社会の形態について、宿駅機能に特化したと考えられる佐々並市・明木市、商業機能に特化したと考えられる鹿野市を題材として、空間・建築・機能の分析を通して明らかにすることを目的とし、この目的に照らして、空間構成と機能との関係、建築構成と機能との関係、杉森氏が提示した商業機能の3つの形態である「市」「町」「宿」との関係について分析を行った。1章では、市立てのない佐々並市・明木市を取り上げ、宿泊機能・運送機能・商業機能に着目し、その空間構成及び機能配置の分析を行った。その結果、佐々並市では近世を通じて空間構成に変化が見られず、上ノ町が宿泊機能を担い、中ノ町が商業機能を担い、久年が運送機能を担ったと考えられる。商家の増加により段階的拡大を果たしたと考えられる明木市では、往還北側が宿泊機能を主として担い、南側が主として運送機能を担い、商業機能を担った商家は中心部に点在したと考えられ、新設された新町では往還を挟んで宿泊機能と運送機能が逆に配され、やや混在するに至ったことも明らかとなった。2章では、佐々並市における建築構成を通時的に各町ごとに検討し、1章で検討した結果と照らし合わせ、建築構成と機能の分析を行った。その結果、上ノ町・中ノ町の一部は、平入茅葺平屋建で、表側に広間を配した四間取り民家で、中ノ町・久年南半は表側にミセ・奥側に床の間を備えた平面形式を呈し、ミセの存在より商業機能を担ったと考えられ、久年北半は上ノ町と同様の建築構成を呈するが、隣家との間に通路を設けるという大きな特徴に運送機能が現れていると考えられ、前章の考察を照らし合わせると、上ノ町・中ノ町の一部の民家は宿泊機能を担い、中ノ町・久年北半の民家は運送機能を担い、中ノ町・久年南半の民家は商業機能を担ったことが明らかとなった。1・2章併せて計画的に機能を配置した藩主導で上から造られた宿駅機能に特化した市町の事例を考察した。3章では、定期市が開かれる鹿野市の空間構成・建築構成について分析した。市立てを行う市町として住民により造られ、その空間構成は北を上手とし、全ての宅地が住居である平入茅葺本屋と市商人に提供する妻入茅葺長屋との間に1間の空地を挟んだ構成で、上手に本屋・下手に長屋を配する町並み秩序が近世中期まで持続されたが、商業の発展に伴い、家数が倍増したことが明らかなり、商業機能に特化した市町であるといえる。近世後期には、市商人に提供されたと考えられる長屋は独立し、住民の住居である本屋はミセを設け、常設店となり、農家系民家の奥に座敷を増築した妻入商家系民家となり、平入茅葺本屋と妻入茅葺長屋で構成された町並みから、茅葺の中にも瓦葺の民家が並ぶ妻入指向の町並み景観へ変遷したことを明らかにした。以上の成果から、防長の市町には宿駅機能に特化した市町、商業機能に特化した市町があり、宿駅機能に特化した市町は、慶長期に藩主導で上から造られ、宿泊機能・運送機能・商業機能が計画的にまとまって配され、それぞれに適応した建築構成を持つ民家が配されたと考えられる。一方商業機能に特化した市町は、住民により下から造られ、規則性を持つ建築構成は近世中期まで維持されたと考えられるが、商業機能の発展に伴い、当初の規則は崩れた。杉森氏の検討に当てはめると、宿駅機能に特化した市町では「町」における見世売り、「宿」における売買が行われたと推察でき、商業機能に特化した市町は「市」から「町」へ変遷したと言え、「市」は補完的な位置づけとなった。二つの特殊な市町の事例を通して、防長市町の宿駅機能及び商業機能の特徴を把握でき、今後他の防長市町をこの特徴に照らして検討することにより、防長市町の特質を把握することが可能であると考える。続きを見る

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09_acknowledgement pdf 324 KB 232 謝辞
08_achievement pdf 275 KB 143 研究業績一覧
07_chapter4 pdf 420 KB 111 終章
06_chapter3 pdf 1.44 MB 325 第3章
05_chapter2 pdf 3.29 MB 238 第2章
04_chapter1 pdf 2.62 MB 645 第1章
03_preface pdf 330 KB 447 序章
02_contents pdf 287 KB 197 目次
01_cover pdf 360 KB 71 表紙

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レコードID
査読有無
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
登録日 2013.07.10
更新日 2020.10.09

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