<博士論文>
近代中国における商業地区の形成過程に関する基礎的研究 : 北京王府井地区を対象として

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概要 本研究では伝統的な都市の典型と言われる北京市を中心に,市民生活と深く関係する商業地区を取り上げ,中国の近代化の中で伝統都市空間がどのように商業地国に形成されていったか考察することを目的とする。そしてこの問題を解明するために,歴史的文献調査が本論文の中核をなしている。研究の対象地は北京内城の紫禁城の脇にあって現在では北京の一番の繁華街となった王府井商業地区とした。また研究期間は主にその発端となった1...900年から繁栄の最後にあたる1949年までとした。さらに本研究が明らかにする点は以下のとおりである。
1.中国における近代商業地区の特製をとらえるために,それ以前の商業地区の特徴を明らかにすること。(第2章)
2.近代王府井商業地区の形成を対象に,中国国内の社会変革が近代商業地区の形成にいかなる影響を与えたかを明らかにすること。(第3章)
3.王府井地区の商業核に焦点を置き,1903年の東安市場の成立から1949年までを対象とし,各商業施設と内部空間構成の変遷及び商業機能の変遷を把握し,東安市場がどのような形成・発展的特性を持っていたのかを明らかにすること。(第4章)
研究から得られた以上の3項目に関する具体的な知見は以下のとおりである。
まず,近代以前の商業地区は北京の歴史的都市構造の影響で,幹線道路沿いに置かれたものが多い。また一時的な廟会や定時市などが重要な商業機能を果たしていた。
次に,元,明,清時代の王府井地区は官庁地や高級住宅地の性格を持ち商業集積は行われていなかった。そして,この地区の発展は清末からはじまり,清政府は国力の強化と近代化を目指した。すなわち,外国列強の中国支配にともなう首都北京の外国公使館が強い影響を与え,結果として二つの民族意識高揚につながり,王府井地区の発展と結びついた。その一つは外国勢力を圧制するため,外国人に対して公使管区以外の地区に商業施設と業務施設の設置を禁止を命じ,さらに紫禁城近くの道路整備を行った。これを契機として,王府井地区の商業核かつ民族資本の特徴を持つ東安市場を開設させた。第二に,民国時代に入り,外国の西洋都市に匹敵できるよう北京のインフラ整備を行い,王府井地区=商業地の環境を備えた。さらに外国の侵入により,愛国運動が起こり,国産品の愛用を促し,救国貯金運動が盛り上がり,民族意識が高められた。この民族アイデンティティを維持することを目的に,資本の民族化を果たしたことにより,外国資本を排除した形で高級品を扱う近代的な商業地が形成された。
東安市場は,王府井地区の商業核として北京に初めて設置された官立常設市場である。そして形成と発展過程は,自然的に発生した火事や政府の管理などと深く関係していた。すなわち,第一次火事後,市場に初めての組織が成立し,敷地内にある露店は次第に固定的な建築形態を持つ恒久施設に変化し,社交・娯楽施設が設置され市場の機能は充実した。第二次火災の後,市場の管理,経営,建設側組織の行政の動きによって,防災概念が強められ,建築材料,構造などの規制が行われた結果,東安市場は逐次近代化を果たすべく建て替えられ,洋風化された景観をつくり出した。また東安市場の法的整備が進む中で,市場の管理者は東安市場の商業施設を業種により配置し,市場の機能と整然とした統一性を持つ市場とするため,積極的に近代西洋の市場建設方法及び金融システム,風紀などの規則を主眼とした管理方法を取り入れた。しかし政府が娯楽施設を取締まりの対象とした結果,市場の繁栄は衰えた。すなわち,民衆において,東安市場は買い物の場所だけではなく,娯楽場を含む概念であったことが明らかになった。市場は娯楽施設を取り込むことによって,従来の定期市の特徴を継承し,商業と娯楽が共存する複合施設と位置づけられていた。
本研究における結論として,次のことが確認された。(第5章)
1.都市空間から見た場合,王府井商業地区と東安市場の形成と発展は,元時代に基本的構造の確立された王府井大街と明,清時代の細分化された街路と既存施設の敷地利用が関係していたことが分かる。すなわち既存の都市空間を継承して成立した点が指摘できる。
2.近代的な商業空間は自律的に成立したものではなく,王府井地区及び東安市場の形成は政府の様々な施策により,北京における商業地区の手本として政府の指導で特別扱いを受けたことも明らかになった。
3.王府井商業地区の形成は,外国資本を直接を受け入れたものではなく,外国勢力との対抗する中で外国の資本を拒否しながら,西洋の先進的な思想を取り入れ,中国側自らの手で近代化を果たしたものといえる。
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目次 目次
第一章 序論
第二章 近代以前北京の既存商業地区
第三章 王府井商業地区の形成
第四章 近代商業施設(東安市場)の形成と変容
第五章 終章
参考文献・資料一覧

本文ファイル

pdf k064-01 pdf 70.7 KB 391 目次
pdf k064-02 pdf 957 KB 342 第1章
pdf k064-03 pdf 720 KB 262 第2章
pdf k064-04 pdf 3.96 MB 320 第3章
pdf k064-05 pdf 3.24 MB 261 第4章
pdf k064-06 pdf 439 KB 239 第5章
pdf k064-07 pdf 733 KB 277 参考文献・資料一覧

詳細

レコードID
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学位記番号
授与日(学位/助成/特許)
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部局
所蔵場所
所在記号
登録日 2014.01.24
更新日 2018.01.17

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