<博士論文>
現代日本建築のデザインに関する研究 : 暫時的空間と断片的都市性
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概要 | 今日の日本においては、建築デザインが非常に多様性を帯びている。そして、何故これほどまでに多様性が生じたのか判断が困難であるし、その要因を考えること自身が混乱にさえつながっている。これら拡散化し、一つの価値基準でくくることのできない今日の日本の建築概念において、全てに共通した要因が存在するのか、存在すれば何が該当するか知ること、そして断片化が特徴といえる都市の内部にあって、あるいはこれを背景として、...日本の建築家がどのように自身の建築概念を統合化しているか知ることが重要であり、この主題が本研究の目的とするところである。 この問題点をとらえる最初の領域として、西欧の批評家が現代日本建築の発展過程をどのように評価したか捉える研究テーマが存在する。本研究の成果により明らかになった点は以下のとおりである。すなわち、3つの代表的な西欧の建築雑誌を資料とした結果からは、現代の日本の建築作品は全て、西欧の都市とは基本的に異なった、固有の性格と背景から形成される日本の都市形成の過程と同様に、建築にもいくつかの共通したテーマが存在している。これらは、断片性、共存性(特に反対の立場にある者との)、暫時性、そして、迷宮性であって、西欧の基準とは道を異にし、整合性のとれないものといえる。しかし、論理的には妥当といえない条件(環境)、あるいは洗練されていないという意味での粗野性は、逆に新しいアイデアを吸収し、これを伝播するダイナミックな文化を創出する力をもっている。西欧の古典的な考え方に立脚すれば、一時性と混沌は回避されるべきものであるが、逆に現代日本建築の特性を明らかにした結果からは、完全性は創造性よって、安定性は変化によって置き換えられ得るものと判断できる。 現代日本建築をとらえる第二の要素としては、都市の発展とその特性を解明することにあって、それとの関連性の中から建築特性を導くことが該当する。本研究で得られた知見を示せば以下のとおりである。すなわち、日本の都市は、伝統的に変化を伴いながら発展してきた。この変化は度重なる地震や風水害からの復興とも深く関係し、恒久性をテーゼとする他の西欧諸国のものと全く異質な経験則から生じ、結果として庶民文化の開化した江戸時代には都市核を持たない独自な形態が発生した。これら日本の都市の特性は、経常的な変化、他所からの行き来の自由性(流入性)、雑然さを容認する混沌性の存在、拠点の多核化から生ずる人々の移動的行動、その他の存在性を提示する施設(プロセニアム性)等から構成されていた。そして、この背景には、既存の価値観と固定された規範から自由である前提が存在していた。歴史的に確立された自由は継承され、現代建築デザインにみられる多元的で自由な精神の基礎となった。また、日本の古代からの哲学に根付く自然の解釈は、暫時性との関わりが強く、都市と建築の両方においてこの解釈が隠喩的な方法で繰り返されてきた。伝統的な住宅から現代建築までに及ぶ建築の構築とデザインの根底には、ルーツとして伝統的儀式から始まる一時性が存在し、これが一時的な枠組み(都市)と建築的表現(材料)の両者に影響を与えたといえる。 第三の要素は、日本の伝統的儀式・祭礼のプロセスを研究対象として得られる領域に存在し、以下の知見が本研究の成果から得られた。すなわち、境界を暗示するだけの一時的な伝統的祭儀空間の構築方法をはじめとして、各所で行なわれている祭は限定された期問に行なわれ、そこでは建設、儀式、活動そして最後の取り壊しがサイクル(年中行事)として扱われている。従って、直接的あるいは間接的参加者には、無から有が生じ、そして無に帰すサイクルが潜在的に意識(記憶となる意味で)され、この点からも日本人の心に深く根差している一時性の概念が明確に導き出せる。これら全ては、日本の空間がその時々により意味が異なり、物的な存在よりも人々の心の中に集積されたものであることを証明している。 以上の知見をまとめると以下のような結論が導き出せる。現代の日本建築を断片的、多元的にしている要因は、日本の文化の根源に存在している。都市の特性からは、多くの概念の存在を認める文化的特性が存在し、これが現実そして虚構に対する日本人の考え方と深く関係している。建築とこれを生み出した都市環境の中で、過去、現在、未来は連携して捉えられ、常に自然を解釈する姿勢と、一時性を容認する意識が、現代日本建築の特性を生み出している。続きを見る |
目次 | TABLE OF CONTENTS ACKNOWLEDGEMENTS PREFACE CHAPTER 1.INTRODUCTION CHAPTER 2.CONTEMPORARY JAPANESE ARCHITECTURE:A WESTERN ANALYSIS CHAPTER 3.JAPANESE URBAN ENVIRONMENT: THE HIDDN ORDER CHAPTER 4.RITUALS: THE ACT OF BUILDING CHAPTER 5.CONCLUSION APPENDIX A APPENDIX B APPENDIX C続きを見る |
本文ファイル
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117 KB | 373 | TABLE OF CONTENTS | |
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54.9 KB | 317 | ACKNOWLEDGEMENTS | |
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61.6 KB | 326 | PREFACE | |
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422 KB | 308 | CHAPTER 1 | |
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3.69 MB | 335 | CHAPTER 2 | |
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5.14 MB | 446 | CHAPTER 3 | |
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3.27 MB | 400 | CHAPTER 4 | |
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533 KB | 331 | CHAPTER 5 | |
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346 KB | 378 | APPENDIX A | |
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54.7 KB | 293 | APPENDIX B | |
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97.0 KB | 251 | APPENDIX C |
詳細
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授与日(学位/助成/特許) | |
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部局 | |
所蔵場所 | |
所在記号 | |
登録日 | 2014.01.24 |
更新日 | 2020.10.06 |