<紀要論文>
OECD諸国における公的債務が経済成長に与える影響について

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概要 1990年代以降,先進国では社会保障費の拡大で公共部門の役割が増大する中,歳出拡大に応じた歳入の確保を図るため,安定した経済成長および適切な公共財政管理の重要性がさらに高まってきている。
しかしながら,日本のGDP比債務残高は依然として高水準であり,他の先進国においても,政府の支出拡大は顕著なトレンドとなっている。
この背景には,成長に向けて政府は景気刺激策として負債により歳出の拡大を図るというケイジ...アン的成長戦略の理論に依拠した一連の政策対応が挙げられる。
本稿では,GDP比債務残高の拡大の要因として債務自体が成長を阻害させるという仮説のもと,債務と経済成長の関係性の検証をOECD諸国の1981年から2019年のパネル・データをもとに行った。
分析手法としては,これまで先行研究のマクロ経済分析で行われてきた債務残高,GDP比債務残高が成長に与える影響を検証する分析に加え,新たに,各国の時系列データを動態観測して得られたインプリケーションをもとに,毎年のGDP比債務残高増加率の変化により経済成長率がどのように変化するか,また,GDP債務残高の変化による成長率の変化にも注目した分析を行った。
その結果,公的債務が経済成長に与える影響の計量分析の推定値は,債務残高を変数に用いたケースではGDP成長及び一人当たりのGDP成長にプラスの効果を示し,GDP比債務残高を用いたケースでも同様の結果が見られた。一方,本稿で新たに試みたGDP比債務残高増加率と経済成長率の回帰では,GDP比債務残高増加率の1ポイント増加に対して,経済成長率が約-0.07%抑制され,さらにGDP比債務残高と経済成長率の回帰でも,GDP比債務残高1ポイント増加に対して,経済成長率が約-0.022%抑制されることが確認できた。
以上の結果から,日本の近年の低成長の原因として,GDP債務残高の増大による成長率の低下に加え,毎年のGDP比債務残高増加率がプラスになり,経済成長率が抑制されていることが影響しており,成長率の低下を補うために債務を使った成長戦略を行うことが逆に低成長をもたらすという悪循環になっている点が示される。すなわち,安定した成長を図るため,平均的に前年度比の債務残高増加率を経済成長率以下に抑え,GDP比債務残高を現状以下に減らすための公共部門の負債管理の枠組みの構築の重要性が示唆される。
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目次 1 はじめに
2 先行研究
3 マクロ経済の乗数理論
4 財政の持続性の先行研究Domar(1944)の第1条件と本稿の視点
5 実証分析
6 分析結果
7 結論
8 今後の課題

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登録日 2021.04.14
更新日 2021.04.14

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