<紀要論文>
利益概念と情報価値

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概要 国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、以下、IASBという) が公表する国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下、IFRSという) を巡る国際的な動向は、目まぐるしく変化している。例えば、欧州連合(以下、EUという) では、2005年1月からEU域内の上場企業の連結...財務諸表についてIASBが作成したIFRS^<1)>に従って作成・公表することを要求している。また、米国も従来の米国基準を堅持するという米国基準アプローチから、これをコンバージェンス・アプローチへ変更し、2015年以降においてIFRSを強制適用するか否かの決定を2011年に行う予定であったが^<2)> (SEC[2010]、岩崎[2010c])、その決定を延期している。そして、2011年5月には、米国証券取引委員会(以下、SECという) から「米国の発行企業の財務報告制度への国際財務報告基準の組込みに関する検討のための作業計画-考えられる組込方法の探究」というスタッフ・ペーパーが公表され、ここでは新たにコンドースメント・アプローチが提案されている(SEC[2011]、川西[2011]、岩崎[2012])。これに対応する形で、我が国もIFRSを2010年3月期から早期に任意適用することを許容し、その後2015年頃から強制適用を行うか否かについて2012年に決定を行うという「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」(BADC[2009])を2009年6月に公表している。このような状況にあるIFRSには様々な特徴があるが、その中の主要な特徴として貸借対照表のストックを重視する資産負債中心観と公正価値会計(fair value accounting : 以下、FVAともいう) がある。資産負債中心観は、資産と負債の増減変化から利益を定義するものであり、そこでは、利益は1期間における富の増加分として定義される。この利益観は、貸借対照表上の資産負債を鍵概念にして、ストックを重視する考え方である。また、公正価値会計は1980年代後半からのデリバティブ等の新金融商品の急速な開発・普及等を背景として、金融商品会計を中心として世界的な普及を見せている。この公正価値会計に関連して、国際会計基準委員会(IASC) は1999年3月に国際会計基準(以下、IASという) 第39号「金融商品:認識及び測定」(IASC[1999]) を公表した。また、2009年11月にはこの改訂版であるIFRS第9号「金融商品」(IASB[2009]) を、翌10年10月には負債に関連する部分を修正した改訂版(IASB[2010a]) を、さらに2011年5月には第13号「公正価値測定」を公表している。他方、我が国においても、公正価値会計は会計ビッグ・バンに伴って1999年1月に公表されたいわゆる金融商品会計基準により、金融商品を中心として導入され、徐々にその適用領域が拡大されてきている。このようなことを背景として、従来企業価値を評価するのに、収益費用中心観に基づく実現利益である純利益がその基礎的な財務情報として提供されてきたのに対して、近年においては、純利益を廃止して包括利益のみを表示することを主張したり(斎藤[2003] 37頁)、企業価値を貸借対照表上のストックの評価から直接導き出そうという考え方も見られるようになってきた。これに関連して、今日、IASBが公表するIFRSにおいて、資産負債中心観の観点から導かれる包括利益を強調する余り、リサイクリングを行わない項目が出てきており、従来の純利益の意味が変容して来ている。このことは、単なる純利益概念が変容するばかりでなく、従来純利益が果たしてきた機能を果たさなくなる危険性があろう。そこで本稿では、文献研究に基づき投資家等が意思決定を行うのに先立って企業価値評価等を行う際の利益情報と情報価値の問題について検討し、その検討結果を受けてIFRSがその他包括利益(other comprehensive income : 以下、OCIともいう) をリサイクリングしないことについての問題点について明確にすることを目的としている。このための構成として、第2章第1節では、利益概念と情報価値を検討する前提として、利益概念と関連諸概念について明確にし、第2節では、利益概念と情報価値との関係を様々な観点から検討し、第3節では、前節までの検討結果を基礎として、IFRSがOCIのリサイクリングを行わない場合の問題点について明確にしている。続きを見る

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登録日 2012.10.16
更新日 2022.02.10

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