概要 |
経済社会における構成メンバーのグループ化や状態の変化の時間進行の事例として, 居住地域における住民の移動(都市化の広がり) や, インターネットコミュニティにおけるメンバー数の増減によるサイトの活発化と衰退の現象の分析が行われている[1]-[5]. また, 人口密度の濃淡や雇用失業の地理的な配置も均等ではないこと, あるいは状態が移動することが論じられている[6]-[11]. またCNN(Cell...ular Neural Network) における進行波の分析は, 人工的なシステムばかりではなく現実への応用の可能性も有している[12]-[14]. これらのモデルにおいては, エージェントの選好に基づく活動は本来, 広域的に行える環境があるにもかかわらず, 現実には局所的な雇用や交易が主流となっている事実の重要性が指摘されている. しかしながら, これまでの研究では簡単なエージェント行動のモデル化にもとづいて行われている問題があり[1][4][7], 更にわれわれの行った研究においてもエージェントの状態変化が時間とともに進行する条件についての分析は行われていない[15]-[17]. 本論文では, 平面上に配置された局所的交流をするエージェントに対する外部入力による状態変化進行の特性分析について述べる[18].本論文では, まず, 平面上の格子点にエージェントが配置されると仮定し, エージェント行動について2つのモデルを導入する. なお基本となるモデルは, 経済における生産と消費の活動を行うエージェントのモデルであるが, 話を分かりやすくするために, インターネット・コミュニティなどに参加する利益を最大化する基準により, エージェント行動をモデル化する. 第1番目のモデルはエージェントは周辺(局所) の情報を用いて最適と考える移動先を決めるモデルであり, エージェントが移動する場合に, コストをともなう仮定を用いる. 第2番目のモデルにおいては, エージェントが局所的交流に基づいて活動度(状態) を変化させる. これらの2つのモデルにおいては, 特に外力を加えない場合には, 時間の経過とともにエージェントの状態は定常状態にいたる性質をもつことを整理する. 次に平面の1点からエージェントの状態を変化させる外部入力を加えた場合には, エージェントの状態の変化がこの1点からはじまる現象について述べる. しかしながらエージェント配置の条件によって状態変化の進行の特性が異なるために, 人工的なデータに基づくシミュレーションによる考察をもとにして, このようなエージェント状態の変化が進行する条件を推定する. 応用例として, エージェント配置を平面上ではなくスケールフリーネットワーク上に配置した場合における分析を述べると同時に, 現実のデータを用いて,エージェント状態の時間変動を発生させるエージェント行動決定(地域的変動) を推定する事例の考察を行う[19]-[23].以下,2.および3.では平面上に配置された局所的交流をするエージェント行動の基本モデルについて述べる. 4.では人工的なデータを用いたシミュレーションにより, エージェント状態の変化が進行する条件をもとめる. 5.応用例においては, エージェント配置をスケールフリーネットワーク上に拡張した場合の特性と, 現実の観測データを用いたエージェント行動決定の推定について考察する.続きを見る
|