注記 |
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接着手法を用いて構成した耐力部材では,しばしば,その接着層の耐衝撃性能が設計上の問題となり,金属材料などの分野では,従来からこの面について数余の実験的検討が行われているが(石井・山口,1975),接着層を含む木質部材の研究については作野(1977)の報告が見られるだけで比較的乏しい.この一連の研究では,これまでに木材および木質材料を対象として単一衝撃による破壊および繰返し衝撃による疲労破壊について系統的実験を遂行してきた(宮川・森,1976,1977a,1977b,1978).第3報(宮川・森,1977b)では,タイワンヒノキとバルサの気乾材および比較試材としてのアルミニウムを用いて,whirling arm machineによる単一衝撃引張破断試験を行い,衝撃速度を0.5~20.Om/secの範囲に変化せしめ,これが材料の強度的性能におよぼす影響について検討した.その結果,衝撃引張強度は,両樹種とも衝撃速度に対してmax. curveを描き,その最大値は静的引張強度の約2倍に達すること,また,タイワンヒノキでは,単一衝撃による破断エネルギーは衝撃速度の増加と共に減少し,その値は第1報(宮川・森,1976)で測定した繰返し衝撃による疲労破断エネルギーよりかなり大きいことを確かめた.さらに第4報(宮川・森,1978)では,7樹種木材の気乾材によるいす型せん断試験片を供試し,同じくwhirling arm machineを用いて,単一衝撃破壊試験を行つて衝撃速度の影響について検討した.この結果,木材のせん断衝撃強度および衝撃破壊エネルギーの衝撃速度による変化には樹種特性があらわれ,衝撃速度の増加に伴い漸減する,ほぼ一定値を示してのち減少する,あるいは若干増加してのち減少するなど,樹種によつて異なつた傾向を示すこと.しかし一方,全供試樹種を通じてその比重と各衝撃速度における破壊強度の関係を見ると,両者の間に正の直線相関のあることが明らかとなつた。本報では,以上の実験に引き続き,タイワンヒノキの気乾材を供試材とし,木工分野で常用されている,あるいはその性能が注目されている3種類の接着剤を用い,いす型せん断接着試験片(まさ目面接着)およびbutt end joint引張試験片(木口面接着)を製作し,衝撃速度を変化させてその破壊強度を測定すると共に,この結果を素材のそれと比較することにより,各接着剤の耐衝撃性能について検討した.
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