注記 |
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福岡市およびその近郊において1955年6月から1960年4月にわたつて捕獲した日本産野棲ハツカネズミの成体の各部について計測を行なつた.そのうち外部計測をなしたものは323頭(雌158,雄165)毛色では1,023頭(雌492,雄531),頭骨では117頭(雌62,雄55),生殖器官では309頭(雌149,雄160)について調査した.その結果はつぎのようである. 1. 成体における体重は雌で平均12.44±0.121g,雄で12.63±0.101g,頭胴長は雌で平均72.25±0.406mm,雄で73.77±0.300mmであつた.尾長は雌で平均60.71±0.369mm,雄で62.24±0.318mm,尾係数は雌雄ともに平均0.84であつた.後足長は雌で平均15.01±0.009mm,雄で15.92±0.009mm,耳長は雌で平均11.62±0.012mm,雄で11.88±0.014mmであつた(第1表). 2. 後足長と耳長の増大は成長の比較的初期にみられ,体重と頭胴長は性的成熟後も成長がみられる. 3. 腹部における毛色はグレイ色,スレイト色,白色,バフ色の4種類がみられた.そのうちグレイ色は雌で6.9%,雄で7.9%,スレイト色は雌で10.4%,雄で9.8%であつた.しかし白腹は一番多く雌で77.2%,雄で75.9%であつた.またバフ色は雌で5.5%,雄で6.4%を示している.季節によつて毛色の出現率は若干変動する(第2表). 4. 頭骨の計測値についてみると第3上臼歯の磨滅段階のStage1~4の間ではその測定値間に著しい差は認められない.すなわち雌62頭,雄55頭による測定値は基底長(X)は雌で平均16.8±0.074mm,雄で16.4±0.77mm,口蓋長(Y)は雌で平均8.8±0.044mm,雄で8.5±0.050mm,基底長から口蓋長を差引いた長さ(X-Y)は雌で平均8.0±0.056mm,雄で7.8±0.052mmであつた.また間隙長は雌で平均4.7±0.034mm,雄で4.6±0.037mm,門歯孔は雌で平均4.3±0.023mm,雄で4.2±0.034mm,臼歯列長は雌で平均3.1±0.019mm,雄で3.0±0.012mm,臼歯列幅は雌で平均3.0±0.015mm,雄で2.9±0.013mm,鼻骨長は雌で平均6.8±0.045mm,雄で6.5±0.039mmであつた.頭骨前半の成長を鼻骨長で示し,頭骨後半の成長を基底長から口蓋長を差引いた長さで示すと本種においては前部の伸びより後部の伸びがきわめて大であつた(第3表). 5. 左側卵巣の大きさは平均2.21±0.014×2.12±0.019mm,両側卵巣の重さは平均4.33±0.06mg,左側子宮角の長さは平均23.83±0.352mm,右側子宮角の長さは平均26.92±0.351mmで,右側の子宮角は左側のそれよりも長い.左側子宮角の最大幅は平均1.44±0.036mm,右側子宮角のそれは平均1.45±0.035mm,両側子宮角の重さは平均35.35±1.252mgであつた(第4表). 6. 右側精巣の大きさは平均6.43±0.041×4.51±0.008mm,両側精巣の重さは平均74.92±1.205mg,左側精巣上体頭の最大幅は平均2.32±0.007mm,左側精巣上体尾の最大幅は平均2.35±0.08mm,左側精巣上体の重さは平均16.26±0.217mgであつた(第5表).7.左側精嚢の最大幅は平均3.18±0.042mm,左側擬固腺は平均2.03±0.032mm,両側精嚢と凝固腺の重さは平均64.3±1.213mgであつた(第6表).
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