注記 |
|
Phenacoccus pergandei Cockerellオオワタコナカイガラムシは日本全土に分布し,多種の有用植物を加害する害虫である.北海道,東北地方および長野県などでは古くからリンゴの害虫として知られ,その他の府県でもカキ,ビワ,イチジク,クワなどに被害をもたらしている.福岡地方では次にあげる植物上で認められる.すなわち,エノキCeltissinensisvar. Japoniea,イヌビワFicus erecta,ホオノキMagnolia oboyata,テンダイウヤクBenzoinstrychnifolium,フウLiquidambar formosana,ヒガンザクラPrunus campanulata,サンザシCrataegus cuneata,ビワEriobotrya japoniea,アカメガシワMallotus japonicus,マサキEuonymus Japonica,アワブキMeliosma myriantha,ボダイジュTilla Miqueliana,カキノキDiospyros Kaki,トネリコFraxinus japoniea,ヒロハアオダモFraxinus longicuspis var.latifolia,ガマズミViburnum dilatatumである.このコナカイガラムシは1896年東京で採集された標本に基づいて記載された種で,その後G.J.Rau(1942)によつて欧米産のPhenacoccus aceris(Signoret)のsynonymとされた.しかし筆者は福岡産の標本について高橋良一博士の同定を求めたところ,日本産のものに対してはPh.pergandel Cockerellの名を使用するのが適当であり,今のところPh.aceris(Signoret)とは別種として扱うべきであるとの教示を得たので,本稿ではそれに従つた.なお和名に関しては,オオワタカイガラモドキ,ワタカイガラモドキ,オオワタカイガラムシモドキ,カキノコナムシ等の異名がある.筆者は1954年春以来,主として福岡においてこのコナカイガラムシの天敵に関する研究をおこなつた.また1958年の春には,北海道札幌市および余市町,青森県弘前市,黒石市,藤崎町および尾上町,福島県福島市および飯坂町におもむき調査をおこない,更に1960年4月から1年間,青森県藤崎町の農林省東北農業試験場園芸部に滞在して研究をおこなう機会に恵まれた.本文に入るに先だち,本研究に終始指導助言を与えられ,且つ寄生蜂同定の労をとられた安松京三教授に深甚の謝意を表する.またカイガラムシの同定をされた大阪府立大学高橋良一教授,寄生蜂の同定をされた愛媛大学立川哲三郎助教授,アブラコバエの同定並びに生態に関する文献を教示された農林省農業技術研究所福原楢男技官,テントウムシについて同定と教示を与えられた九州大学農学部神谷寛之氏,植物の同定をされた福岡学芸大学小川保喜氏,熊本営林局吉井宅男技官,岩手大学農学部永野正造氏に心から感謝の意を表する次第である.また次にあげる諸氏は本研究に際して種々便宜を与えられ且つ協力下さつたので,ここに厚く御礼申し上げたい.当時の北海道大学昆虫学教室員各位,農林省北海道農業試験場桑山覚・西尾美明両技官,農林省東北農業試験場園芸部豊島在寛・本間健平・降幡広一各技官,青森県りんご試験場津川力技師,弘前大学文理学部内田一教授,福島県園芸試験場遠藤金弥技師はじめ同害虫研究室員各位,岐阜大学農学部福島正三助教授および九州大学農学部昆虫学教室員各位.
|