<学術雑誌論文>
ダイオキシン類の毒性を安全に軽減できる化合物の候補 : 油症治療を目指した検討

作成者
本文言語
出版者
発行日
収録物名
開始ページ
終了ページ
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
関連DOI
関連URI
関連HDL
概要 This review deals with the three candidate compounds which may combat with dioxins' toxicity. Geranylgeranylacetone (GGA), an antiulcer drug, counteracts suppression of body weight gain and lethality ...produced by 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) in C57BL/6J mice. Similarly, curcumin, a food ingredient anticipates the TCDD's toxicity on body weight gain. Both GGA and curcumin had no effect on the induction of hepatic ethoxyresorufin O-deethylase activity by TCDD. These data suggest that both compounds exhibit a protective effect against some forms of dioxin toxicity by a mechanism without involving inhibition of aryl hydrocarbon receptor activation. Further, the mechanism involved in resveratrol action on dioxin's toxicity was also discussed. Prior to the application of these compounds to Yusho patients, the limitation and possibility of these candidate compounds are seemed to be further studied.
1968年に西日本一帯で起った油症は,その原因が主としてポリ塩化ビフェニル(PCB)混入油を摂取したことによることが明らかになった.その後,その中に含まれていたポリ塩化ジベンゾフランを中心としたダイオキシン類が毒性発現の主たる原因と考えられるようになり,2004年には油症患者血液中のダイオキシンレベルを基に,油症患者認定制度の見直しがされるに至っている.ダイオキシン類の作用メカニズムは,その受容体であるとともに,転写調節因子でもあるarylhydrocarbonreceptor(AhR)を介して発現するものが大部分であることが多くの研究から支持されている.油症発症から既に37年が経過しており,客観的な油症の症状は改善されてきてはいるものの,高齢化した油症患者において,今なお血中のダイオキシンレベルは健常人に比べて高く,長期に亘る高レベルのダイオキシン類への曝露が恒常性へ与える影響が懸念される.油症研究班では,これまでに,油症の毒性軽減,症状緩和を期待していくつもの取組みがなされてきた.すなわち,米ぬかファイバーやコレスチラミンが排泄促進効果を期待して,介入研究へと展開された.これらは,効果を期待するには必要摂取量が多いこと,被害者での効果がはっきりしないことが問題であった.また,スクワランにも排泄促進剤としての期待がもたれたが,動物実験で肝臓に蓄積することから,実際に被害者に適用するには至っていない.当研究室では,ダイオキシン類の一つである3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl(PCB126)によるラット肝臓のタンパク質発現変動について検討し,約30種の酵素活性やタンパク質のレベルの変動を見い出し報告して来た.しかし,ダイオキシン類の毒性は多面的であり,毒性発現の決定的メカニズムに迫ることはできていない.同様のアプローチは,マイクロアレイを用いた最近の研究にも詳しい.上記の当教室での研究成績には,PCB126により細胞質のheatshockprotein70(HSP70)のレベルが増加するという事実も含まれていた.HSP70は分子シャペロンとよばれ,タンパク質合成の過程や品質管理で重要な機能を有する.このことから,我々は「HSP70レベルの上昇は,生体側の防御反応であり,ダイオキシンの毒性発現を抑える働きにつながる」との作業仮説を立て,研究を展開し,HSP70誘導作用を示すと報告のあるgeranylgeranylacetone(GGA)およびクルクミンには,ダイオキシン毒性軽減作用があることを明らかにしてきた.本総説では,これらの作用についてまとめるとともに,ダイオキシンの作用を阻害するとされるレスベラトmルの作用の特徴についてもまとめ,その有用性についても考察した.
続きを見る

本文ファイル

pdf fam96_5_p204 pdf 35.2 MB 720  

詳細

PISSN
NCID
レコードID
査読有無
関連PubMed ID
主題
注記
タイプ
登録日 2012.06.04
更新日 2021.07.28

この資料を見た人はこんな資料も見ています