<博士論文>
電子写真プリンタの定着温度場に関する研究

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概要 電子写真プリンタは、コンピュータなどの情報処理機器の主要な出力端末機器として、その高性能化、省エネルギー化が強く求められている。電子写真プリンタの性能向上のためには、定着部の熱的性能に及ぼす種々の設計パラメータの影響を明確にする必要があるが、定着部の幅は3.5mm程度で、トナーの滞在時間も60ms程度であるため、実験的手法による解明は困難である。そのため、数値シミュレーション手法を用いて信頼性のあ...る温度場推算手法の確立を試みた。  第1章においては、電子写真プリンタを取り巻く現状と高性能化への要求、定着器の熱的性能に関する従来の研究を概観して、性能向上のための課題とその中における本論文の位置づけを明確にしている。  第2章では、トナー定着プロセスを詳細に検討し、定着温度場を二次元温度場として、温度変化を推算する手法の基本的枠組を提案・構築した。すなわち熱伝導方程式を複数の構成要素からなる計算領域で離散化して、ADI法を用いた時間積分に対応する手法を提案し、相変化を伴なうトナーの融解現象やローラの回転に伴なうトナー・記録紙の移動をモデル化して計算可能とした。構築した計算法を用い、トナー定着過程における熱移動の定性的挙動について考察を行った。これにより、定着領域の入口近傍でトナー、記録紙に大きな温度変化が起こること、トナー、記録紙の加熱にはヒートローラに貯えられた熱を最大の供給源とすること、定着領域からの熱の持ち出しは記録紙、トナーの順に多いことなどの基礎的知見を得た。また定着領域内部で存在が想定される空気を、試みに一定の厚さの層として計算に導入した。その結果、定着領域に存在する空気の量は少なくても温度場に及ぼす影響は大きいことを明らかにした。  第3章においては、数値計算法の予測精度向上に資することを目的として、定着部内部における温度分布を赤外線放射温度計を用いて実験的に測定した。定着部内部の温度を直接測定することは極めて困難であるため、間接的に測定する方法を検討し実験的に計測を行った。すなわち定着ニップの幅を一定とし、紙送り速度を変えることにより、トナーが加熱される滞在時間を変えて、定着部出口でトナー粒子層表面温度を計測した。その結果を非定常温度場の相似則に基づいて、測定された温度に対応する定着部内部の位置を求める方法を新しく提案した。提案した計算法を用い計算した結果は、実測した温度よりも高い値となり、これを補正するためには計算領域に適当な伝熱抵抗の付加が必要であることを明らかにした。  第4章においては、第3章で導入の必要性が明らかになった付加抵抗が、記録紙表面の粗さおよび積層したトナー粒子間の隙間に起因した空気であることを、定着部構成要素の微視的観察から確認した。その上で、観察により得た粒子形状寸法と記録紙表面粗さを基に、空気の存在空間をモデル化し、定着部に存在する空気部分での伝熱の様式を検討して、伝熱においては空気の熱伝導が支配的であることを明らかにした。  次いでトナー粒子の積層状態および記録紙表面の幾何学的特性に基づいて、物理的に存在する空気の量を算定する方法を提案した。トナー層については、一定粒径の球状の粒子が六方最密状に配列した状態を基に、記録紙については、表面の粗さ形状に基づいて、存在空気の体積を算出した。この空気量を、均一厚さの等価空気層厚さとして定量化した。  第5章では、記録紙表面粗さおよびトナー積層状態に基づく等価空気層を導入して、定着部構成層をモデル化した。空気層の伝熱抵抗を検討する場合、空気層の厚さと空気層の設定位置の問題がある。モデル化する際、空気層を一つの総等価空気層とした場合、それぞれ空気存在の起因により分割した分割空気層の場合に分けて検討し、5種類のモデルを提案した。これらのモデルに基づいて、計算したトナー層表面温度を実測値と比較し、温度場を精度良く予測できる妥当性の高いモデルの検討を行った。その結果、記録紙の表面粗さに基づく空気層を、ヒートローラ表層とトナー層の境界面の位置に設定し、一方トナー粒子の積層状態に基づく空気層については、トナー粒子層の厚さ中央位置に設定するか、またはトナー層を空気を含む混合層とするモデルの場合、信頼性の高い温度場予測結果が得られることを明らかにした。  第6章においては、以上で提案したトナー定着温度場推算手法を、表面粗さの異なる2種類の記録紙に適用し、温度場推算を行って、実測結果と比較・検討した。これにより、定着部に存在する空気に起因する伝熱抵抗の導入と、計算式での取扱いの妥当性、および本温度場推算手法の有用性を明らかにした。また、本推算手法の応用として、技術的に関心の高いカラー印刷に関して、数値計算を行ってトナー定着温度場の変化を明らかにし、考察を行った。その結果、カラートナー粒子の多層化により、等価空気層厚さが厚くなり伝熱抵抗が大きくなること、一方トナー粒子の小径化は伝熱抵抗の減少を促し、小粒径化はカラー化に対し有効であることなどを、定量的指標を伴って明確化した。  第7章は本論文の総括であり、上記各章の結論をまとめている。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 定着プロセス温度場の数値解析 第3章 定着ニップ部での温度変化の測定 第4章 定着部に存在する空気量の算定と伝熱様式の検討 第5章 定着部温度場に与える空気層の空気量と存在位置の影響 第6章 温度場数値予測の応用 第7章 総括 謝辞 参考文献

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登録日 2013.07.09
更新日 2019.06.12