<博士論文>
進化的計算手法を用いた聴覚障害補償に関する研究

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概要 本研究は、Soft Computing技術を聴覚障害補償に応用して従来の問題を解決するとともに、新しい聴覚特性・聴覚障害補償の研究アプローチを提案することを目的としている。さらに最終目標として、本研究で示す方法論が、人間を対象問題とする知識・感性情報処理分野に広く展開されることも目指している。本研究ではこの目的に向けて、(1)人間とコンピュータの対話的操作における操作者の疲労軽減、(2)聴覚障害者...の聴こえに基づく補聴器のパラメータ最適化システムの構築、(3)トップダウン的な解析アプローチによる聴覚障害補償の知見獲得、という3つの手続きを行なった。   知識・感性情報処理研究では、人間から得た多くのデータを総合し、その情報処理や認知のメカニズムをモデル化する、ボトムアップ的なアプローチが主流であった。しかし、複雑で個人差や時間変動を伴う人間のメカニズムを完全にモデル化することは、原理的に不可能である。そこでSoft Computing分野において、人間の情報処理や認知の特性をブラックボックスにしたまま、人間が与える評価情報のみでシステム最適化を行なう、対話型EC(Interactive Evolutionary Computation)が提案された。しかし、対話型ECには繰り返し評価による操作者の疲労という大きな問題がある。これは対話型ECに限らず、人間とコンピュータの対話的操作を必要とする分野に共通の問題である。そこで本研究では、(1)ヒューマンインタフェイス改善によって対話型EC操作者の疲労軽減を試みた。  高齢化社会を迎えた現在、高齢者の社会活動を支援する福祉研究への注目が集まっている。特に聴覚障害補償の分野では、ディジタル補聴器が開発され、入力音声に対して様々な信号処理を行えるようになった。しかし、補聴器使用者が十分満足できる聴こえを実現するのは、現在でも困難である。我々は、聴覚特性を個々に測定・総合することで聴こえを推定する従来のボトムアップ的なアプローチでは、聴覚障害補償における多くの問題を根本的には解決できないと考えた。そこで本研究では、(2)対話型ECを補聴器で用いられる信号処理パラメータ最適化に応用して、聴覚特性の事前測定が不要な自動フィッティングシステム(IECフィッティングシステム)の実現を試みた。  IECフィッティングシステムは、知覚・認知レベル、および感性レベルを総合した最終的な聴覚障害者の聴こえを反映して、聴覚障害補償処理のパラメータを最適化する。したがって、IECフィッティングシステムで設定されたパラメータを解析すれば、聴覚障害者の聴こえに関する新しい知見を獲得できると考えられる。さらに、このようなトップダウン的な解析アプローチは、聴覚特性・聴覚障害補償の研究だけでなく、人間の情報処理や認知のメカニズムを対象問題とする分野に広く展開できるだろう。そこで本研究では、(3)IECフィッティングシステムに基づくトップダウン的な聴覚特性の解析アプローチを提案し、聴覚障害補償の知見を得る具体的な方法論を示すことを試みた。  (1)対話型EC操作者の疲労軽減については、提示インタフェース、および入カインタフェースの改善手法を提案し、シミュレーションと心理実験を通して総合的な有効性検証を行った。提示インタフェース改善では、人間が解候補に与える評価値を予測しその順序で解候補を提示する手法を提案し、インタフェース改善への知見を得た。入カインタフェース改善では、人間が離散的な評価値を入力できる手法を提案し、有意な疲労軽減効果を示した。  (2)IECフィッティングシステムの実現については、新しい聴覚障害補償処理としてラウドネス空間構成法を提案した。そして、インタフェース改善研究で得られた成果に基づきIECフィッティングシステムを実際に構築して、その有効性を検証した。模擬難聴処理を施した健聴者と聴覚障害者に対して、提案システムの操作、および評価実験を行った結果、従来法よりも高い音声明瞭度と大幅な音質向上が見られた。さらに音声だけでなく、従来ほとんど研究がなされていない音楽聴取にも提案システムを応用し、有意な音質の向上効果を示した。   (3)トップダウン的な解析アプローチの提案と聴覚障害補償に関する知見獲得については、ラウドネス関数に関する知見、およびパラメータ設定の対象音依存性に関する知見を得る方法論を示した。まず、提案システムで得られるラウドネス空間からラウドネス関数を抽出する手法を提案し、抽出されたラウドネス関数と従来法によるラウドネス関数の違いに関する知見を得た。次に、音声の場合、音楽の場合、音声と音楽を比較した場合のそれぞれで解析実験を行い、提案システムで得られるパラメータ設定の対象音依存性に関する知見を得た。さらに、ラウドネス空間、もしくはラウドネス関数の形状の差異を、誤差によって定量的に表す方法を検討した。  本研究は、Soft Computing技術を聴覚特性・聴覚障害補償研究に応用した複合研究である。人間とコンピュータの対話的操作における疲労軽減およびSoft Computing技術の聴覚特性・聴覚障害補償研究への本格的な応用は従来ほとんど行われていないため、本研究がSoft Computing技術の応用展開に貢献できると考えられる。また、本研究で提案したlECフィッティングシステムと聴覚特性・聴覚障害補償研究の新しいアプローチは、従来の研究アプローチの根本的な問題を解決するとともに、両アプローチによる多面的な研究展開を可能にするであろう。さらに本研究から得られる成果は、Soft Computing技術、聴覚特性・聴覚障害補償研究にとどまらず、人間を扱う知識・感性情報処理分野に広く応用できると期待される。続きを見る
目次 目次 1 序論 2 対話型ECについて 3 聴覚特性と聴覚障害補償について 4 対話型EC操作者の疲労軽減:解候補の提示インターフェース改善 5 対話型EC操作者の疲労軽減:評価値の入力インターフェース改善 6 使用者の聴こえに基づくフィッッティングのための2つの提案 7 ラウドネス空間構成法を用いたIECフィッティングシステムの構築 8 IECフィッティングシステムの評価:音声聴取におけるシステム操作 9 IECフィッティングシステムの評価:音声聴取における有効性の検証 10 IECフィッティングシステムの評価:音楽聴取におけるシステム照査と有効性の検証 11 トップダウン的な解析アプローチによる聴覚障害補償の知見獲得 12 結論 謝辞 参考文献

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K035 pdf 26.1 MB 156  

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登録日 2013.07.09
更新日 2018.01.17