<博士論文>
適応信号処理におけるブロック直交射影アルゴリズムとその性能改善に関する研究

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概要 近年における半導体技術はめざましい発展を続けており、今後も益々その技術革新は続くものと予想される。そのような中、半導体の集積度の向上により、高速で高精度の演算が可能となり、ディジタル信号処理技術は様々な分野で不可欠なものとなっている。今日、ディジタル信号処理の対象となる環境や情報は多種多様であり、信号の統計的性質が変化するような場合、あるいは未知システムの特性が変化するような場合など、固定係数フィ...ルタによる信号処理では期待した結果が得られないということが多い。このような状況下において有効な信号処理が適応信号処理である。適応信号処理では、システムの特性を必要に応じて変化させるために適応フィルタが用いられ、信号の先験的な情報が不十分であっても、入力される情報から未知システムの特性を逐次的に求めることにより、環境に応じたシステムの推定が可能である。この適応フィルタの係数を更新する重要な部分は適応アルゴリズムと呼ばれ、従来より様々な方式が提案されてきた。適応アルゴリズムには主に、対象となる信号に関係なく高速に収束することと、1サンプル当たりの演算量が少ないという性能が要求される。これらは一般的にトレードオフの関係にあり、現在これらの性能をバランスよく満足させる方式としてブロック直交射影アルゴリズムが提案されているが、これを更に効率よく運用する方式が期待される。また、雑音がシステムのパラメータ推定に影響を及ぼす場合においても良好な推定精度が得られることが望まれる。  本論文は、適応信号処理において適応フィルタの係数を更新するための適応アルゴリズムについて研究した結果をまとめたものであり、以下の7章から構成されている。  第1章では、まず本研究を行うに至るまでの背景について述べ、次いで本論文の概要について述べる。  第2章では、適応信号処理における未知システムのパラメータ推定の重要性について述べ、本研究の基礎となるブロック直交射影アルゴリズムに関しての説明を行う。また、適応信号処理の適用例として、適応ノイズキャンセラなどに代表されるキャンセラシステムをとりあげ、適応アルゴリズムの必要性について述べる。  第3章では、ブロック直交射影アルゴリズムの一実現法として、次数更新型UD分解を用いた方式を提案する。ブロック直交射影アルゴリズムはMoore-Penrose型一般逆行列により表されるが、この逆行列を特異値分解により計算する方法では、多くの演算量が必要となりハードウェア構成上困難になると考えられる。提案する方式はMoore-Penrose型一般逆行列が入力状態行列による自己相関行列の逆行列により生成されることに着目し、これを逐次UD分解法により効率よく計算することにより、ブロック直交射影アルゴリズムの演算量の軽減化を図っている。  第4章では、未知系出力信号に観測雑音が重畳する場合においても良好な推定精度が得られる方式を提案する。ブロック直交射影アルゴリズムは比較的収束速度と演算量のバランスがとれた方式として提案されているが未知系出力信号に観測雑音が重畳する場合、推定精度が劣化するということが指摘されている。推定精度の劣化を防ぐために、ステップゲイン、係数ベクトルの平均化などの操作により推定精度の劣化を防ぐ処置がとられるが、適用する方法によっては収束速度の劣化を招いたり、計算に雑音の分散が必要であり、また白色信号入力時の解析に基づいているなどの問題点があげられる。提案法はMoore-Penrose型一般逆行列で表される直交射影アルゴリズムの基本型を対象として、修正方向ベクトルに含まれる観測信号から構成される成分の時間平均を行うことにより、良好な推定精度を実現した方式である。提案法はブロック直交射影アルゴリズムと同等の高速な収束速度を得られる方式であり、雑音の分散や入力信号の有色性を考慮する必要がないという利点を有している。  第5章および第6章では、ブロック直交射影アルゴリズムの一実現法として提案されている勾配法に基づく高速な適応アルゴリズムの改良法を提案する。この方式はよく知られている共役勾配法を用いる方式に対しアルゴリズムの繰り返し演算処理を途中で打ち切った場合においても良好な特性が得られる方式である。従ってこの方式を個々の目的に合わせ改良することは有用であると考えられる。  まず5章では、収束速度の高速性という観点から、勾配法に基づく高速な適応アルゴリズムのデータ運用法をブロック処理ではなくアフィン射影算法と同様の逐次処理とし、この処理により増加した1サンプル当たりの演算量を、勾配ベクトルの算出法を改良することにより軽減する方式を提案する。 適応アルゴリズムには上記のような性能以外に、有色信号入力時において高速な収束特性を有することと共に、観測雑音に対してもロバストであることが要求される。そこで、第6章では、勾配法に基づく高速な適応アルゴリズムを改良し、観測雑音が存在する場合でも良好な精度が得られる方式を提案する。本提案法は勾配法に基づく高速な適応アルゴリズムの修正量に含まれる観測雑音の影響を軽減することにより、観測雑音が存在する場合において従来法よりも良好な推定精度を得ることができる方式である。  最後に第7章では、本研究のまとめを行い、今後の話題を述べる。
Conventional signal processing by using fixed coefficient filters works unsatisfactorily for the cases where statistical properties of input signals or the characteristics of unknown systems vary with time. Adaptive signal processing techniques are resorted to in such time varying environments. Adaptive signal processing is performed by using adaptive filters whose parameters are adjusted by adaptive algorithms. Adaptive algorithms are required to be converge fast and its computational cost is desired to be low. Block orthogonal projection algorithms have been proposed as a method satisfying these two conflicting demands. Improvement of this effective algorithm is currently advanced in many research groups. This thesis presents some results of my researches on efficient adaptive algorithms based on the block orthogonal projection for adaptive signal processing systems. The thesis is composed of seven chapters. In chapter one, background of the present research is reviewed. Chapter two reviews the block orthogonal projection algorithms and surveys some application areas of adaptive algorithms. In chapter three, a novel algorithm based on the UD decomposition is proposed. In chapter four, a method is developed which gives stable solutions for the cases where observation noises are added to output signals of unknown systems. Chapters five and six are addressed to a fast adaptive algorithm based on the gradient method which has been used for block orthogonal projection algorithms. At first in chapter five, a method is introduced where data are processed sequentially similarly to affine projection methods and secondly in chapter six a gradient algorithm is modified to give high precision solutions even under moderat e observation noises. This proposed method reveals estimation resolution higher than that of previous algorithms based on the gradient methods. Finally in chapter seven, the algorithms developed in this research are summarized and some future directions are illustrated for further studies.
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目次 目次 1 序論 2 パラメータ推定問題と直交射影アルゴリズム 3 UD分解法によるブロック直交射影アルゴリズム 4 観測雑音に対しロバスト性を実現する方向ベクトル分割平均化法によるブロック適応アルゴリズム 5 こう配法に基づく高速な適応アルゴリズムにおけるデータ運用法の改良に関する一考察 6 観測雑音にロバストなこう配法に基づく適応アルゴリズム 7 結論 謝辞 参考文献 図目次 表目次

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登録日 2013.07.09
更新日 2018.01.17

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