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概要 |
本論文は、現在混迷化している中国の住宅供給を適切なシステムに転換するための方策を明らかにするために、建国以降の住宅供給政策の推移と供給状況の関係に焦点をあて、問題点の所在を明らかにしたものである。 1.研究の背景と目的 1949年の建国以降、中国都市部において住宅は、一種の福祉として国による一元的投資と「単位」(=中国における職場の呼称)による建設・分配という体制下で、無償に近い低家賃で都市民に...供給された。これにより国家財政は逼迫し、70年代末に政府は、公有住宅の家賃引上げや新旧公有住宅の払下げ、「商品住宅」の供給などを通しての、国による一元的住宅建設投資体系から「中央・地方・単位・個人」の四者による建設投資体制への方針転換を内容とする住宅制度改革をおこなった。しかし、これらの施策も一定の成果は得たもののいずれも難航、「単位」間の所有住宅の格差と建設する経済力の格差の存在は、現在に至って都市民の住宅格差を一層拡大させている。 本論文は、こうした現代中国の都市住宅問題の解決策を求めるための基礎的研究として、建国から現在に至る約半世紀間に政府が定めてきた改革以前と改革以後とで全く異なる住宅供給政策のそれぞれの策定過程と実施・実現状況を明らかにすることで、建国以降の住宅供給政策に対する総合評価をおこなうことを目的とし、その考察に基づいて、今後の都市住宅供給施策の展開に対する提案を試みたものである。 2.論文の構成と概要 本論文では序章と結章および本編3章の全5章から成る。 第2章では、建国から1978年改革までの政策に着目し、改革以前の政策の三本柱である低家賃供給体系と国による一元的投資の形成過程および「単位」による住宅建設・分配の実態とそれによって自力での住宅取得を考えず「単位」の住宅分配に頼る「等・靠・要」(とう・こう・よう)概念の形成過程を捉えることで、従来ほぼ否定されてきた改革以前の政策に対する再評価をおこなった。ここでの考察では、主に建国初期の政策内容と改革後の新たな政策方針とを比較しながら、建国初期の政策の合理的な部分を評価し、その合理的な部分が失われる過程を考察することで改革に対する政策的提言をおこなった。 第3章では、改革後の政策に着目し、改革の実施状況を捉えた上で政府が定めてきた政策全体の問題点を考察した。それによって、これまでの改革の20年間、政府は公有住宅の取得可能な都市民を偏重する政策を採ってきており、公有住宅が取得不可能な都市民については、経済力のある者だけが重視され、経済力も乏しい都市民は軽視されてきた実態を明らかにした。さらには改革以前の旧体制下はもとより、改革後の住宅供給においても「単位」が変わらず政策上で極めて重要な位置を占め続けたことが、市場経済の下で構築すべき都市民と住宅の直接商品関係を今日まで形成できていない根本的な要因となっていることが分析できた。つまり、「単位」を通じて公有住宅を取得しない限り、都市民は「福祉」政策の受益者から外れざるを得なかったということであり、改革後の政策も全ての都市民の住宅保障政策とはなり得なかったという評価を得ることができた。 第4章では、近年議論の焦点にもなった「商品住宅」の売れ残り問題に着目し、個人の自力による住宅取得の問題点と可能性を考察した。この章は、2、3章における建国以後の住宅政策の総合的検証に基づく現代における住宅問題研究の在り方を示す一例としての性格を持つと同時に、本論文の今後の発展の可能性を示すものとして位置づけられる。 3.結論 中国都市部の住宅供給において、現在なお個人の経済能力に応じた公平な住宅取得体制を形成できていない理由として、①改革による政策転換にもかかわらず住宅の直接消費者である都市民と住宅の間に「単位」が介在し続けたこと、および、②それによって「等・靠・要」という改革実現を困難にする概念が都市民の間に根強く形成されたこと、という二つの要因を明らかにできた。この考察に基づき、中国都市部の住宅供給政策における今後の課題として、(1)より公平な「社会保障型の住宅供給体制」を構築するためには、都市民と「単位」との住宅面での依存関係を断ち、これまでの「単位」ごとの住宅保障体系から社会保障体系へ徐々に転換を図る必要があること。なお住宅供給体制のなかから「単位」がまだ分離されていない現時点では、少なくとも住宅の購入時に「単位」の補助の度合いによって異なる住宅所有権を与える体制を採る必要性があること。(2)今後は都市民に住宅を持たせようとする持家政策に一方的に傾斜せず、公的補助下での安い賃貸住宅および家族形態による期限付き「社宅」的なものの供給の必要性があること、の2点を挙げることができた。続きを見る
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目次 |
目次 第1章 序論 第2章 住宅制度改革以前の住宅供給政策 第3章 住宅制度改革以後の住宅供給政策 第4章 個人による住宅取得の問題点 第5章 結論 引用・参考資料一覧 謝辞
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