<博士論文>
視覚と聴覚の空間知覚における相互作用に関する研究

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概要 本研究では、視覚と聴覚の空間知覚における相互作用の特性とその生起過程を解明することを第一の目的とし、5つの実験を行い、検討を重ねた。以下に本研究の概要を記述する。 (1) 音源定位への光刺激の影響における同期性の効果の空間異方性  従来行われていた、音源定位に及ぼす光刺激によるバイアスの研究は、水平面内に限られたものであり、水平面内にある音源が、水平面内にある光によって受ける影響を調べたものがほと...んどであった。 そのため、音源定位能力が水平面内と異なる正中面内では、光刺激の影響がどのように現われるかが定かでなかった。さらに、定位バイアスにおいて重要な要因とされる光と音の同期性が、正中面内の定位にはどれほどの影響をもたらすかも明らかではなかった。  実験1では、水平方向と垂直方向における音源定位のパフォーマンスが、光刺激の提示タイミングが操作された条件のもとで、測定された。  実験の結果、水平方向においては、光と音が同期した条件のみで、小さなバイアスが観察された。しかしながら、このバイアスは被験者によっては、まったく見られないこともあった。一方、垂直方向でも、光と音が同期した条件のみにバイアスは観察された。ただし、バイアスの大きさは顕著なもので、音源の位置がどこであろうとも、すべての被験者が光の位置と音の位置をほとんど区別することはできなかった。このように、光刺激が音の定位に及ぼす影響は、水平方向よりも垂直方向で特に明らかになることが示された。 (2) 音源定位に及ぼす視覚的注意の効果  これまで、視覚的注意と聴覚の空間解析との関係は全く明らかにはなっておらず、実験2では、定位バイアスと視覚的注意との関係を直接的に調べることが目的であった。  実験では、まず水平方向において、注意要因によるバイアス量と同期要因によるバイアス量が測定された。その結果、注意を払った位置へ音源の定位がシフトする傾向が認められた。ただし、それはすべての音源位置に対して小さな量であった。一方、同期要因の効果は全体的に大きなものであり、音源位置に依存したものとなった。このように質と量ともに要因間で差が現れ、2つのバイアスが全く異なった過程を通して現れている可能性が示唆された。  この可能性を検証するため、次に、垂直方向で同様に注意要因と同期要因によるバイアス量を測定した。垂直方向では、実験1で、融合を生じさせるような大きなバイアスが同期要因により生じることがわかっており、もし、2つの要因による処理過程が同じものであるなら、注意要因によっても水平方向よりも大きなバイアスが得られることが期待された。しかしながら実験の結果は、同期要因ではより大きな効果が得られたものの、注意要因の効果は統計的には 見られないほど小さなものであった。  従って、2つの要因による影響は、別の過程を通って現れることが明らかとなった。  Radeau(1992)により仮定された相互作用の2つのメカニズム(データ駆動型、概念駆動型)の枠組みに従い、注意要因による効果は、概念駆動的処理あるいは判断基準の変化によって現れ、同期要因による効果は、データ駆動型の処理によって現れたと推測された。 (3) 定位バイアスと同期要因との関係  実験3では、これまでの実験で、定位バイアスに大きな効果をもつことが示された同期要因について、さらに詳細に検討した。特に、光刺激の変化自体が重要であるのか、新たな視覚対象が形成されることが大切であるのかを問題とした。  実験の結果、従来の同期条件であった、光刺激と音刺激の出現と消失の各々が同期する条件だけでなく、光刺激が出現するだけの条件や消失するだけの条件すべてにおいて、これまでの条件と同等な定位バイアスが観察された。光刺激が消失的変化のみを行った場合でも、定位バイアスが同様に観察されたことから、同期要因による効果は、新たな視対象が形成されることにより現れると考えるよりも、視野内の対象の変化自体が重要な原因であると考える方が良いことが示唆された。 (4) 三次元空間における運動光刺激が音の運動知覚に及ぼす効果  Mateeff et al. (1985)によって報告された、静止音源からの音を運動光刺激が捕捉する現象(DVC)を三次元空間において調べた。 Mateeff et al.は、この現象を水平方向のみについて調べただけであり、3次元空間内での運動については調べてはいない。垂直方向や奥行き方向に関しては、水平方向よりも空間の解析能力が劣ることが知られており、水平方向とは異なったDVCが現れることが考えられた。  実験4-1の結果から、水平方向に限らず、垂直方向でDVCが生じ、さらに垂直方向でのDVCは水平方向よりもかなり強いものであることがわかった。また、実験4-2では、音源の運動方向に水平、垂直方向に斜め方向も付加し、被験者には運動方向を二次元平面において自由に報告させた。この場合でも、被験者は音の実際の運動方向を知覚することができず、判断の多くは、光の運動方向と同一であった。さらに、実験4-3では、両眼立体視を用いて光刺激を奥行き方向に運動させるのと同時に、音源も奥行き方向に運動させ、奥行き次元でのDVCが生起するか否かを調べた。結果は、実験4-1の垂直方向と同様に、顕著なDVCが生起するものであった。 (5) 視覚仮現運動知覚に及ぼす音刺激の影響  空間知覚における視覚から聴覚への影響は、上述した実験などから明らかであるが、その逆に、聴覚から視覚への影響を調べた研究は非常に少ない。これまでに視覚の仮現運動の知覚に関して、音の影響を論じた研究がいくらか報告されているが、作用を肯定するもの(Maass,1938; Wemer,1928; Staal & Donderi,1983)と、否定するもの(Allen & Kolers,1982;Ohmura,1985)にわかれている。ただし、いずれの研究でも古典的仮現運動が取り扱われ、被験者の客観的判断が難しかったと思われる。また、音刺激に関しても、左右いずれかからの短音が視覚刺激と同期して提示されるといったものであり、その刺激に対しての運動感の有無は問題とされなった。実験5では、より客観的な判断を得るために、光刺激をランダムドット・キネマトグラムとし、音刺激として頭内運動をシュミレートしたものを用いた。  実験の結果を、従来から知られている仮現運動の2つの処理プロセス(ショートレンジ系、ロングレンジ系)のパフォーマンスと照らし合わせて検討した。それにより、仮現運動の知覚には音による影響は見られず、判断基準の変化と思われる影響のみが観察されたことが明らかとなった。また、この結果は、両刺激の提示タイミングを組織的に操作した場合においても同様に見られた。続きを見る
目次 序文 目次 第1章 空間知覚における視覚と聴覚の相互作用に関する先行研究 第2章 空間知覚における視覚と聴覚の相互作用に関する実験的研究 第3章 全体的考察 第4章 まとめ 引用文献 本研究に関係した業績 謝辞

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登録日 2013.07.09
更新日 2018.01.17

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