<博士論文>
都市景観イメージコントロールに関する研究

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論文調査委員
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概要 本研究では、都市における建物と屋外広告物の色彩の実態を把握し、その中でも特に批判されることが多い屋外広告物をとりあげ、その色彩をコントロールすることが景観整備の上で有効であるのか、またその具体的な方法について検討した。なお、従来の景観コントロールの事例は、歴史的景観地区や自然資源等保護地区、ないしは新規整備地区等に偏っていたが、本研究では既存の一般的な市街地を対象として景観誘導の方法を検討した。 ... 1.研究の方法  (1)性格の異なる地区における建物と屋外広告物の色彩の分布調査を行った。福岡市とソウルの商業地区とオフィス地区の合計4地区の色彩の分布実態を確認した。 (2)地区間のイメージの比較や、色彩の調整によるイメージの変動を把握するための調査方法を考案した。色彩の分布調査を特定地区の固有の現象だと捉えずに、できるだけ客観化して同一の条件のもとで比較実験を行えるように、正方形の背景色にポイント色を規則的に配置した色彩パレットによる刺激をつくった。  (3)その調査方法によって、2地区の色彩を現状+各3通りの方法で調整した刺激によるイメージ調査を行った。福岡の商業地区とオフィス地区の調査結果を色彩パレットに当てはめ、現状、彩度を10以下及び6以下にした場合、彩度10以上のもの面積を1/2にした場合のイメージの変動を調査した。  (4)その地区をどのようなイメージにしたいのかによって景観誘導の根拠が異なるはずであるため、天神地区を例にとって、天神地区として認知されている範囲(色彩調査地区との関係の確認)、現在のイメージ(色彩分布調査から推測できるイメージとの関係の確認)、これから望むイメージ(誘導の方針の確認)について確認するための調査を行った。  (5)具体的な現場で、推論した方法が適切であるのかどうか、シミュレーションによって確認するための検証調査を行った。天神地区の具体的な景観8点を対象とした。 2.研究の結果  (1)屋外広告物の面積は建築物の壁面面積に対して約3%を占めていて、福岡とソウルを比較して見るとその違いは少ないが、地区の類型によるイメージの違いが認められた。  (2)地区を特徴づけている要素のひとつは彩度であり、彩度を調整することによって地域の特性を誘導できる。  (3)色彩パレットによって、彩度をコントロールした場合のイメージの変動を調査した結果、彩度をコントロールすると「まとまり感」が出てくる。高彩度の面積を減ずるよりも彩度を落とす方がイメージの変動が大きい。  (4)天神地区で一般の人々のイメージを色彩と言葉で確認する調査を行った結果、色彩パレットによる調査とほぼ一致しており、色彩パレットによるイメージ調査が実態と類似していることが確認できた。  (5)一般の人々のイメージ調査と色彩パレットによる調査結果、「賑わい感」と「まとまり感」は両立できることがわかった。  (6)地元住民等の意見を要約すると、これからの天神には先進的で「まとまり感」のある景観整備が求められている。  (7)天神の街路を例にとり、実態に基づいた誘導例によってシミュレーションをし、イメージ調査を行った結果、色彩パレットによるイメージ調査、色彩と言葉によるイメージ調査、それを実態に適用させた場合のイメージ調査の3つの結果がほぼ一致していた。  (8)高彩度の屋外広告物の彩度を中彩度や低彩度に落とすべきか、面積を減ずるべきかは現場の状況によってイメージの変動が異なる場合があり、求めるイメージに対してその手法を選択する必要があることがわかった。  本研究において得られた屋外広告物の色彩の誘導の方法は、今後の都市景観計画に十分導入され得るものである。また、これまで最もあいまいでいつも重要な課題とされてきた景観誘導の根拠を明確にするものである。しかも本研究は、特定の個性ある景観地区ではなく一般的な市街地を対象にしており、普遍的な方法として活用できるものである。  ただし、本研究の趣旨は画一的な景観整備の方向を示すものではなく、彩度をコントロールすることによっていくつかの異なるイメージが導かれる点を明かにしたものである。本研究は、景観誘導の現場の問題点を理解し、景観の育成のために具体的に何をしたらいいのか、またその根拠について設計的な観点から研究したもので、今後の景観指導上の基礎研究として位置づけられる。続きを見る
目次 目次 序 第1章 これまでの研究と他都市の現状 第2章 屋外広告物と都市景観 第3章 色彩調査による地域の比較調査 第4章 色彩パレットによるイメージ調査 第5章 商業地区/天神のイメージ調査 第6章 都市景観イメージと色彩コントロールの効果 第7章 総括 謝辞 引用文献 参考文献 付録

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所蔵場所
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登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

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