<博士論文>
混合整数計画によるパターン認識のモデル化と学習アルゴリズム

作成者
論文調査委員
本文言語
学位授与年度
学位授与大学
学位
学位種別
出版タイプ
アクセス権
JaLC DOI
概要 生体における知覚は感覚入力に基づいて外界の状態を推定する情報処理過程であり、広い意味でパターン認識の問題として捉えられる。認識システムの人出力関係はノイズや遮蔽等の影響により一般に多対?写像となっているので、その逆写像の解は複数あり得る。従って、認識システムはそれらの解の候補の中から最も確からしい解を選択して出力していると考えられる。そこで最適化問題によって定式化を行なった視知覚のモデルがこれまで...に数多く提案されてきた。また、一般に生体のパターン認識はある物体が何であるかというカテゴリー化を行なう離散的な処理とその物体の大きさなどの物理量を推定する連続的な処理という性質が異なる二つの処理過程が密接に関係しあって行われている。しかしこれまでに提案されたモデルのほとんどは連続的な処理か離散的な処理のどちらか一方しか扱っていない。本論文では、これら両方の処理過程を不可分に扱う視知覚の数理モデルを混合整数計画問題によって定式化する。  本論文は、知覚や学習の混合整数計画問題による数理モデル化について研究した結果をまとめたものであり、8章から構成されている。  まず第1章では、本研究の背景と扱っている問題を示し、あわせて論文の概要について述べる。  次に第2章では知覚や学習を混合整数計画問題によってモデル化する際に必要となる数学的基礎を概括し、技術的な問題を論じる。ここでは、生体の情報処理過程をパターン認識システムとして捉え、混合整数計画問題として定式化をおこない、認識システムの学習について議論し、認識や学習の具体的な定式化を最近傍識別を例にとり説明する。また混合整数計画問題の解法として勾配系を用いて解くアナログ解法を提案する。  第3章以降では、この基礎理論を知覚や学習の問題に適用する。第3章と第4章では知覚を扱い、第5章、第6章、第7章では学習を扱う。続く第8章で第3章から第7章までの結果を統合して、マルチモーダルパターンの認識モデルと学習法を提案する。  第3章ではラインプロセスを拡張した結合プロセスを提案し、画像処理への応用を示す。ラインプロセスではしきい値が絶対的な値に固定されるので、グレイレベルのスケール変化によって結果が変わるという欠点がある。結合プロセスはこの欠点を緩和し、エッジを保存して平滑化を行なうことができる。またパラメータを変化させることによってマルチスケール表現が得られる。更にインパルスノイズの除去もできるように拡張し、セグメンテーション等も容易に得られることを計算機実験により示す。  第4章では結合プロセスが生体の視知覚のモデルとして有効であることを示すために、結合プロセスを用いて幾何学的錯視のモデル化を行なう。パターンの知覚体制化には様々な要因があるが、ここではドットパターンを対象として最も基本的であると考えられる近接要因による群化のモデルを提案する。代表的な幾何学的錯視図形に対して計算機実験を行ない、錯視現象のモデルとしての結合プロセスの有効性と限界を示す。  第5章ではクラスタリング関数回帰による最近傍識別器の教師あり学習法を提案する。この方法は教師信号に基づいて定数関数への回帰を学習することによって、最近傍識別器の代表点の最適な配置を決める方法である。この方法を用いると代表点の数を多めに準備しておけば必要な分だけが割り当てられることや木探索識別器の代表点を一括して最適化する学習が行なえることを計算機実験により確認する。  第6章では第5章で提案した方法を線形射影を用いてデータベクトルの次元の圧縮を行なうように拡張し、その有効性を実験により示す。教師なし学習ではデータの復元誤差が最小となるように、教師あり学習では識別誤差が最小となるように最適化問題として定式化する。簡単なデータを用いた計算機実験により本学習法の特性を明確にするとともに、パラメータ化された顔データの分類に適用する。  第7章では教師ありのデータと教師なしのデータが混在する場合の最近傍識別器の学習法を提案する。ここでは、代表点の配置を決定するのに識別誤差と量子化誤差を共に最小化するように最適化問題として定式化する。更に教師ありデータだけで学習するよりも教師なしデータも付け加えて学習する方が識別率の期待値が向上することを、理論的な解析と顔データを用いた計算機実験とによって実証する。  第8章ではロバスト推定とベイズ則に基づく複数の入力からなる異種データの統合すなわちマルチモーダル情報による最近傍識別法を提案し画像処理への応用を示す。この統合方法は多数決をファジイ化したものであることを示し、EMアルゴリズムによる教師なし学習法を導出する。更にこの識別方の基本的な性質を簡単なデータで検証し、視覚と聴覚の統合の例としてマガーク効果を定性的に説明する。  最後に第9章では、本研究のまとめと今後の課題を述べる。続きを見る
目次 目次 第1章 序論 第2章 混合整数計画問題 第3章 結合プロセスによる画像の復元とセグメンテーション 第4章 結合プロセスによるドットパターンの群化モデル 第5章 クラスタリング回帰による最近傍識別器の学習法 第6章 アフィン部分空間への射影による最近傍識別器の学習法 第7章 最近傍識別器の教師あり/なし混合学習 第8章 マルチモーダルパターン識別器の教師なし学習 第9章 結論 謝辞 参考文献 図目次 表目次

本文ファイル

pdf K015 pdf 6.49 MB 2,462  

詳細

レコードID
査読有無
報告番号
授与日(学位/助成/特許)
受理日
部局
所蔵場所
所蔵場所
所在記号
登録日 2013.07.09
更新日 2023.11.21

この資料を見た人はこんな資料も見ています