<博士論文>
運動後の血中乳酸の消失に及ぼす高濃度酸素呼吸の影響に関する研究

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概要 本論文の目的は、第一に運動後の回復処方として、高濃度酸素ガス呼吸の有効性を血中乳酸の消失に着目して検証すること、第二に血中乳酸の消失に対してさらに効果的な回復処方として、高濃度酸素ガス呼吸とクーリングダウンを組み合わせることを提案し、その有効性を検証することであった。以下に各章の要約を述べ、最後に本論文で得られた、高濃度酸素ガス呼吸による回復処方、高濃度酸素呼吸とクーリングダウンの組み合わせによる...回復処方に関する知見をまとめ、さらに今後の課題を付け加えた。  第I章では、本研究の背景について言及し、健康的な生活を維持していくための一つの要因として運動後の回復に着目し、運動後の回復の評価として血中乳酸を用いることの意義について説明した。さらに、従来行われている回復処方について説明し、また、高濃度酸素呼吸による回復処方で統一した結果の得られていない原因について、血中乳酸の消失に及ぼす要因から運動能力と運動時の運動強度が関与していると推察した。また、高濃度酸素ガス呼吸とクーリングダウンの組み合わせの回復処方において、血中乳酸の消失をより促進する可能性について述べた。  第II章では、第?章で推察した運動後の高濃度酸素呼吸の血中乳酸消失への影響に関与する要因について検証するために、日頃の運動量及び持久的運動能力の指標である無酸素性作業閾値(AT)の違いによって、被験者のグループ分けを行い実験検討した。運動能力の高いグループ(AT≒60%VO2max)と低いグループ(AT≒50%VO2max)の、二つの運動能力グループにおいて、乳酸消失に及ぼす酸素呼吸の有効性を実証した。また、運動能力の高いグループでは60%O2濃度以上の呼吸条件で、運動能力の低いグループでは30%O2呼吸時で血中乳酸の有意な低下が見られたという結果から、その有効性には運動能力が関与している可能性を示した。しかし、運動終了時の乳酸値レベルが両運動能力グループで異なるという問題点を残した。  第?章では、第I章で推察した運動後の高濃度酸素呼吸の血中乳酸消失への影響に関与する要因について検証するために、第II章で考慮した運動能力に加えて運動的の運動強度を考慮して実験検討した。また、この運動強度は、第?章において血中乳酸消失に関与していると考えられた血流量や、第II章において考慮する必要があると考えられた運動終了時の乳酸値レベルとも関連しており、この事も含めて検討した。その結果、運動能力の高いグループにおいては、第II章同様、60%O2濃度以上の呼吸条件において血中乳酸の有意な低下が見られたが、運動能力の低いグループにおいては、血中乳酸の低下に有効な酸素濃度は認められなかった。この事から、運動後の高濃度酸素呼吸が血中乳酸濃度に及ぼす効果には、運動能力が関与していると考えられた。また、第II章の結果と第?章の結果をまとめて分析することにより、運動能力の高いグループでは、約70%?80%VO2maxに相当する運動時の運動強度では、その強度に関わらず60%O2濃度以上の呼吸条件において血中乳酸の消失に有効であった。一方、運動能力の低いグループでは、約60%?70%VO2maxの範囲の運動強度では、運動時の運動強度によって酸素呼吸の効果が異なり、約65%VO2max以上の強度において、30%O2、40%O2の呼吸が血中乳酸の消失に有効であり、約65%VO2max以下の強度では、酸素呼吸の効果は見られなかった。この事から、運動後の高濃度酸素ガス呼吸は、血中乳酸の消失に対して有効な回復処方であることが実証できた。また、その効果には運動能力と運動時の運動強度が関与することを実証した。  第?章では、血中乳酸の消失をさらに促進するような回復処方として、クーリングダウンと高濃度酸素呼吸という二つの回復処方の組み合わせによる効果について、運動能力の違いも考慮して実験検討した。その結果、運動能力や酸素濃度の違いに関係なく、安静回復時よりも運動回復時において血中乳酸の有意な低下が見られた。この事から回復処方としてのクーリングダウンの有効性を再確認できた。また、安静回復状態における酸素呼吸の効果に関しては、運動能力の高いグループで60%O2の呼吸条件で、運動能力の低いグループでは40%O2の呼吸条件で有意な血中乳酸の低下が確認でき、この事は第II章及び第?章の結果を支持するものであった。また、安静状態でこの最も血中乳酸の低下が見られた酸素濃度よりも、運動回復状態でのAir 呼吸時の方がより血中乳酸が低下しており、この事から高濃度酸素呼吸のみを行うよりクーリングダウンのみを行う方が、運動後の回復処方として有効であることが確認できた。運動回復状態における酸素呼吸の効果に関しては、運動能力の高いグループでは認められず、運動能力の低いグループでは安静回復時同様40%O2の呼吸条件で有意な血中乳酸の低下が確認できた。この事から、高濃度酸素呼吸とクーリングダウンの組み合わせの回復処方では、両運動能カグループ間で血中乳酸の消失に及ぼす効果が異なることが明らかとなった。  以上の結果から、血中乳酸消失に最も効果的な回復処方は、ATが約60%VO2maxである比較的運動能力の高い人ではクーリングダウンのみの処方であり、ATが約50%VO2maxである比較的運動能力の低い人では40%の酸素呼吸とクーリングダウンの組み合わせの処方であった。このように、運動能力の違いによって、最も効果的な回復処方が異なり、これにはやはり、回復時の血流量や乳酸脱水素酵素などが関与していると予測された。  最後に今後の可能性としては、高齢者を含む循環機能がさらに低下した人や、循環機能がさらに発達しているスポーツ選手において、高濃度酸素呼吸処方もしくは高濃度酸素呼吸とクーリングダウン処方との組み合わせ処方について検討する必要があると考えられる。また、回復時の運動強度と呼吸酸素濃度の組み合わせによっては、血中乳酸がさらに低下する可能性も考えられ、この事についても検討する必要があると考えられる。続きを見る
目次 目次 第1章 緒言 第2章 運動後の高濃度酸素ガス呼吸が血中乳酸の消失に及ぼす影響 第3章 運動後の高濃度酸素ガス呼吸が血中乳酸の消失に及ぼす影響―運動能力及び運動強度を考慮して― 第4章 血中乳酸の消失をより促進する回復処方の検証 第5章 総括 謝辞 引用文献

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登録日 2013.07.09
更新日 2018.01.17